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- 新たな自分に出会える、新しい手帳術
デジタルツールを使ってスケジュール管理を行うことが増える一方で、
紙の手帳の新たな使い方が注目されてきていることをご存知でしょうか。
小学生の頃から長年手帳を使い続けているという文房具ライターのやまぐちまきこさんに、
最新の手帳術についてお話を伺いました。
コロナ禍によってリモートワークが定着し、仕事のスケジュールは社内ツールやGoogleカレンダーなどのデジタルツールで管理されることが多くなりました。手帳は仕事のスケジュール管理という役割から離れつつあります。生活のさまざまな出来事を記録するライフログとして、あるいは自分の思いや感情を書き留めておく記録として、より自由度の高い使われ方をするようになりました。例えば睡眠時間や筋トレメニュー、食事内容など、日々の情報を記録したうえで、「今後どうしたいか」と自分の目標を加えるような使い方が主流になってきています。
2020年くらいから、アメリカ人のデジタル製品デザイナー、ライダー・キャロル(Ryder Carroll)氏が考案した「バレットジャーナル」という書き方が浸透してきたことも手帳術の変化に一役を買っています。この書き方は「・」(中点、バレット)など、文頭に記号を置いて箇条書きで記録するもの。年月日の予定や日々のタスクを記すだけでなく、その進捗や関連して生まれるアイデアや感情などを、文頭の記号を使い分けながら書き記す手法で、あらゆることを手帳一冊で可視化でき、振り返りも簡単に行える特徴があります。

手帳術の変化により、近年「手帳によるモチベーション管理」に注目が集まっています。資格取得やリスキリング、将来の夢などについて中長期的な計画を立て、タスクを箇条書きし、達成できたか否かを感想や反省を含めて記述する。「未来」に重点を置き、スタディプランナーやライフプランナーのように手帳を使う方が増えているのです。そのため、用途別に手帳を使い分けるのも昨今のトレンドといえます。私自身も、仕事用、プライベート用、推し活用など、常時5冊以上の手帳を使い分けています。仕事のスケジュール管理という従来の役割から離れ、よりプライベートなスケジュール&タスク管理を担いつつ、モチベーションの維持・向上に使えるツールへと変化してきたというのが、手帳の現在地と言えるでしょう。

1月や4月はじまりの手帳が主流ではありますが、昨今では9月や10月、11月はじまりの手帳も発売されており、始めたいと思ったときに始められる状況があります。表紙のデザインや紙の種類も驚くほど多様化しています。好きな色やキャラクターを好みに合わせて選んだり、使用する文房具に相性の良い紙質のものを選んだりと、自分にぴったりの手帳を見つける楽しさを感じられるはずです。スペースが細かく区切られている紙面のものから、ページを埋めやすいようTO DO、天気、気分、映画や読書などの1行記録を記述できるよう項目分けされているものまで、まさに多種多様。ライブの日程や座席、グッズの購入履歴、CDの発売日などが記入しやすい「推し活手帳」まで登場しています。目的がはっきりしている人も、事前に用途を決めず使いながら手帳の使い方を見つけていきたい人も、適切なフォーマットを選べば気兼ねなく手帳のある生活をスタートできます。

さまざまなツールを取り入れることで、手帳のある生活は何倍も楽しいものになります。まずは何と言っても筆記用具。ボールペン、シャープペン、万年筆。どれをとっても好みの書き心地を選べるラインナップがありますし、それぞれの筆記用具に最適な紙との組み合わせで手帳を選ぶ楽しさもあります。手帳と一緒に筆記用具を新調すれば、モチベーションはよりいっそう高まります。手帳経験が浅くて自分なりの書き方がうまくつかめていないという方には「消せるボールペン」が一押しです。

ページを自由にデザインすることで「自分らしさ」を出せるのも手帳の魅力です。イラストやアイコンを楽に描けるテンプレートがたくさん発売されていますので、絵心に自信がない方には気軽に手にして、文字を書くだけでない手帳の楽しさを体験してください。シールや写真で手帳の紙面をデコレーションするのもオススメです。ハンコや付箋は、ページをカラフルに彩るだけでなく、言葉で記すのが億劫なときでもスペースを埋められて便利です。

手帳は楽しんで日々記録したいものです。だからこそ、続けることがハードルにならないよう、あえてストイックになり過ぎなくても構わないと思っています。予定やタスクだけでなく、日記的に記す一言も箇条書きで構いませんし、書かない日があっても気にしない。私自身、数か月間をおいてから再び書き始めた手帳もあるくらいです。日付がプレッシャーにならないよう、最近では日付を自由に記入できるタイプの手帳も増えています。
手帳のテーマに関することや、普段の生活で感じたこと、人から言われて妙に印象に残った一言……、どんな内容であれ、書き残すことで後から振り返ることができ、数年後の自分の糧にできるのが、手帳の醍醐味です。文字の線に表れる感情の起伏やページの片隅に付いた汚れなど、文字以外のことも「当時の自分」を鮮明に思い出す材料にできるでしょう。このあたりもアナログならではの魅力です。自分自身のためにつけるものですから、キャリアやお金、パートナーとの関係といった、人には話しづらい悩みを書くのにも向いています。書き記すことで一時的に感情を手放せると楽にもなりますし、言語化することによって自分の感情をより深く細かく把握でき、問題解決のヒントを得られるかもしれません。

手帳に夢や目標を書き記せば、それは人生における「指針」となります。私も10代の頃からから「雑誌に出たい」など、人生における夢や目標を100個以上手帳に書き連ね、定期的に行動を振り返ってきた結果、気付けば80以上を達成していました。ダイエットに取り組んでいる今は、タンパク質の摂取量や体重の増減をファクトベースで記録することを心がけ、半年弱で7キロ痩せることができました。
1年分のデジタルデータを読み返すのは案外大変ですが、紙の手帳なら年間の歩みをもっと手軽に見直すことができます。「自分自身」がありのままに書き記された手帳からは、次なるモチベーションが得られ、その先には必ずや新たな自分に出会えるはずです。この機会に、手帳をあなたの人生のパートナーにしてみませんか?
2025.12.01

やまぐち まきこさん
文具ライター。年間300万PVを超える人気サイト「フムフムハック」の編集長。雑誌やWEBで文具ライターとしても活躍しており「NIKKEI STYLE」で文具記事を連載中。これまでに使った手帳は100冊を超えるというツワモノ。







