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- ガラスペンとシーリングスタンプで味わう、贅沢なアナログ時間
ボールペンやスマホで、思いついたらすぐに記録することができる時代だからこそ、
あえてひと手間かけて文字を書くレトロな文房具に心を惹かれる人が増えています。
なかでも注目を集めるのが、ガラスペンとシーリングスタンプです。
その魅力について、カリグラファーでありYouTuberとしても活躍する「書き文字のプロ」、
ひがしはまねさんにお話を伺いました。
その名前や形状から、どこか中世ヨーロッパを思わせるガラスペンですが、実は「日本発」の筆記用具です。1902年に風鈴職人の佐々木定次郎さんが開発したとされ、その滑らかな書き味で、一時は一般的な筆記具として使われるほどでした。ボールペンなどの登場によって使われる場面は少なくなりましたが、熱心な愛好家の存在は絶えることなく現在に至ります。ガラスペンの魅力はなんといっても芸術的なまでに美しいその形状。少し重さがありますが、それもまた高級感を醸し出します。ガラスペンはペン先にインクを付けて書く、いわゆる「つけペン」のため、ペン単体では使えません。先端に刻まれた溝が毛細管現象でインクを吸い上げるので、思った以上に多くの文字を書けることも魅力のうちです。

初めてガラスペンを購入するにあたっては、「見た目の好み」で選んでOKです。試し書きのできる販売店もありますので、まずは使ってその書き心地を確かめてください。ペン先とインクの相性によっても書き味は変わります。「インク沼」という言葉もあるくらい奥深い世界のため、どんなインクを選べば良いか決めかねるかもしれません。その場合、ガラスペンとインクがセットになった商品を購入してもいいと思います。数千円のものからあるので、気軽にはじめることができます。なお、インクは紙に滲むことがあるので、試し書きをしながら紙を選ぶと良いでしょう。

実際にガラスペンを使ってみましょう。ペン先の1センチ程度をインクに浸せばしっかりと吸い上げてくれます。深く浸すとペンと瓶がぶつかって割れる危険性もあるので要注意です。ペンは斜めにしっかりと握り、紙の上を滑らせるように書きます。書く上でガラスペンの魅力は、線が太くも細くもならない単一の「モノライン」であること。普段使いの鉛筆やボールペンより若干スピードを上げて書くと、同じ太さの線がスラスラ書ける楽しさを実感できるでしょう。線の太さが変わらず、ゆっくりだと濃く、速いと薄く書けるのもガラスペン独自の書き味です。慣れると緩急の使い分けもできて、書くことがもっと面白くなります。使い終わった後は水でゆすいで拭くだけ。万年筆のようにインクが詰まったりしないのでメンテナンスはとても楽です。

シーリングスタンプは、熱で溶かした蝋(シーリングワックス)に紋章などをかたどった金属製のスタンプを押して封をするアイテムのこと。重要書類が入った封筒が未開封であることを示すために中世ヨーロッパで生まれたものですが、現在では手紙やラッピングの装飾として人気を呼んでいます。日本では「封蝋(ふうろう)」という名前でも知られており、100円ショップから高級文具店まで、いろんなお店で取り扱われています。ワックスとスタンプがセットで販売されていることもありますが、それぞれを単体でも入手可能。組み合わせの妙を楽しむこともできます。特にスタンプについては、自分のイニシャルをあしらったものをオーダーメイドする方も珍しくありません。

シーリングスタンプを使うには、固形のシーリングワックスを溶かすための熱源と専用のスプーンが必要です。熱源は、キャンドルの炉で本格的な雰囲気を味わうのも手ですが、より安全に使える専用のホットプレートなども販売されています。道具が揃ったら、スプーンの中のワックスを温め、液状になったら下に垂らします。一気に垂らすとワックスが広がってしまうので、なるべく少量ずつ垂らしましょう。何度か試すうちに、ちょうどよく広がるワックスの状態がわかるようになります。スタンプは、垂らしたワックスが固まる前に押します。押した後、10~30秒ほどは固まるのを待ちます。その後、ゆっくりスタンプを外せばシーリングスタンプの完成です。直接紙にワックスを垂らすのが伝統的なやり方ですが、一度垂らすと剥がすことができず、やり直しがききません。そのため、シリコンマットの上でスタンプしたワックスを剥がして、好きな場所に両面テープを使って貼ってもいいでしょう。慣れるまではこの方法がおすすめです。


一連の作業に慣れてきたら、ぜひワックスの調色も楽しんでください。組み合わせ次第でさまざまな色が作れます。複数色のワックスを爪楊枝でゆっくり混ぜて、マーブル調にするといったアレンジもおすすめです。単色のワックスだけでなく、複数色セットで売られているワックスもあります。ぜひお気に入りのカラーを見つけてください。シーリングスタンプは、手紙の封だけでなくグリーティングカードのデコレーションなどにも使えます。「自分オリジナル」のシーリングスタンプなら、送る側にも、受けとった側にも特別な喜びがあるはずです。

ガラスペンもシーリングスタンプも、決して便利なものではありません。しかし手間がかかるからこそ、ゆったりとした時間を楽しめます。ガラスペンを手に取った時の「これからどんな文字が書けるだろう」という高揚感や、シーリングスタンプをはがす時の「ちゃんとできたかな」というワクワク感は代わるもののない魅力。道具をうまく使うためにはしっかりと向き合う必要があります。すると、使うたびに新しい使い方を発見できます。飽きがこない理由はそこにあります。気に入った道具をそろえていくのも楽しみ方のひとつです。100円ショップで手に入る手軽なものから、工房を訪れて特注でオーダーするスペシャルな一品まで、とても奥の深い世界が待っています。自分用としてはもちろん、贈り物としても楽しんでいただけます。まずは気軽に手に取ってみてほしいですね。

2026.03.02

ひがしはまねさん
日本で数少ないプロのカリグラファーとして1998年ごろから活動。2019年からYouTuber「はまね先生」名義で手書きの楽しさを発信中。著書に『筆ペンで綴るはじめてのモダンカリグラフィー』(グラフィック社)など。
YouTube:@hamane-sensei















