各事業所で、生きもの調査から
始まる自然との共生を推進
構内にある水路周辺の環境を保全
パワーデバイス製作所（福岡）では、1944年の開設当初から、もともとあった小川（旧松本川）を製作所内に降った雨水などを流す水路として活用しています。2015～2016年に実施した生きもの調査では、この水路周辺に豊かな生態系が存在していることがわかりました。以来、水路周辺の環境保全に取り組むとともに、昆虫類や野鳥が利用しやすい草地づくりを進めています。
また、こうした保全活動の効果を検証するため、2024～2025年にも再度調査を実施し、豊かな生態系が保たれていることを確認しています。
事業所所在地
〒819-0192 福岡県福岡市西区今宿東一丁目1番1号
主な取扱製品
パワーモジュール、大電力パワーデバイス、半導体センサー、トランジスターアレイ、HVIC
主な取組みテーマ
- ■事業所内を流れる水路（旧 松本川）の環境を保全 [A-2-（2）] [B-4-（4）]
- ■植栽の一部を見直し、在来種を導入 [B-4-（5）]
- ■草刈りの頻度を調整し、高さの異なる3種類の草地を管理 [B-4-（3）] [B-5-（1）]
- ■社員やその家族が参加した子ども向け生きもの観察会や生きものみっけを開催 [C-7-（1）]
[ ] 内は取組みテーマの分類を示します。詳細については以下を参照ください。
取組みの特徴
- ■護岸などがほとんど行われていない水路環境の保全に取り組む
- ■植栽の一部を地域在来種に植え替え、在来種の昆虫が利用しやすい環境をつくるなど、
土地本来の環境との調和を意識
本編
資料編
パワーデバイス製作所（福岡）の活動の方向性
以下は三菱電機グループの各事業所による生物多様性保全活動の方向性を示した一覧表です。
パワーデバイス製作所（福岡）の活動がどの方向性に当てはまるのかを、色で示しています。
豊かな環境が残る水路の保全と外来種の抑制に向けた取組みを検討
| 活動の方向性 |
|---|
|
|
|
|
||
|
|
|
|
||
|
||
|
|
|
|
||
|
|
|
|
||
|
||
|
||
|
||
|
|
|
|
||
|
||
|
|
|
|
||
|
|
|
|
※1開発圧：棲みかの破壊。事業拠点を新たに建設することや、天然資源の採取などのために開発が行われること（サプライチェーンでの開発を含めて）、などが該当。操業による水の使用が周辺地域や水源、ひいては生きものの生息環境に影響を与える場合などもこれに含まれると考えられる。
※2外来種圧：その地域にもともと存在しない生きものが、外構や建物の脇の緑地、生垣などをつくる際に地域の外から樹木や草木を導入することがある。何気なく行われる生きものの移動が、地域固有の種の生息を脅かしたり、遺伝的な汚染の原因となることがある。
※3外来生物法の「特定外来生物の飼育、栽培、保管又は運搬」に関する規定に則り活動を実施。
生きもの調査結果
パワーデバイス製作所（福岡）は、外部の調査会社の協力のもと、2015年～2016年に計8回※1にわたって生きもの調査を実施しました。
また、2024年～2025年にも調査を計4回※2実施しました。調査結果は以下の通りです。
※1このほかに、敷地内の水路とつながる河川をさかのぼり、そのルートと環境を確認する「河川補足調査」を1回実施
※2このほかに、主に哺乳類の生息種の把握を目的とした自動撮影カメラによる調査を8カ月間実施
パワーデバイス製作所（福岡）2015年度 生きものリスト（PDF：140KB）
考察と行動
7種の重要種と3種の特定外来生物が生息
2024～2025年の生きもの調査において、専門家からは以下のような報告と、今後の活動へのアドバイスをいただきました。
報告の主なポイント
■水路付近に希少な動植物が数多く生息。
当製作所内の水路では、マツバランやクロツバメシジミ、ニホンウナギなど、他の地域で個体数が減ったり絶滅したりした動植物が数多く確認された。製作所の構内は一般の方が出入りしないことに加え、これまでの活動で水路付近の環境が維持されてきたと考えられる。
■特定外来生物も複数種が生息。
同水路では特定外来生物も確認された。オオカワヂシャが多数繁茂しているほか、ウシガエルも生息しており、在来種への影響が懸念される。また、自動撮影カメラでアライグマも撮影された。前述のように在来種への影響が考えられるほか、棲みつくことによる施設への影響も懸念される。
■屋上緑地や伐採木体積地も重要種の生息地として機能。
屋上緑地でニラバランが確認された。海岸に近く日当たりも良い、また開発や踏圧などの影響も受けにくいことから、生育適地として機能していると考えられる。また、敷地内南道部の伐採木体積地ではキュウシュウナミコギセルも生息。枝葉が重なった場所は、陸産貝類だけでなく、昆虫類や爬虫類といった多くの生物の生育環境として機能している。
主なアドバイス内容
■桜の健康状態を維持。
水路付近で確認されたマツバランは、桜の木の大枝に着生している。桜が枯死し、伐採が必要になった場合はマツバランの生育環境も失われるため、桜の健康状態を適切に維持していくことが必要。樹木医による樹勢診断と治療を行うことも有効。
■草刈りなどで水路周辺の環境維持を。
水路付近で確認された重要種は、他の地域で生育環境が失われ、個体数が減っているもの。構内の自然護岸の部分を中心に、草刈りなどによって適切に維持管理することが望まれる。一方で、必要な採餌環境の維持も必要なため、人の手を入れすぎず残すことも重要。
■特定外来生物は、適切な時期に駆除などの対策を。
オオカワヂシャは種子が散布される前の時期に伐根除去することが望ましい。ウシガエルは個体を捕獲するほか、産卵時期に卵を捕獲していくことも対策として有効。アライグマの捕獲対策は難しいため、人の出入りが少ない場所を定期的に点検し、棲みついていないかを注視することが望まれる。
アドバイスに基づく活動
社内検討を経て、以下の活動を実施しています。
実施施策
■水路はできる限り自然に近い状態を維持。
水路の自然護岸部分は、人の手を加えすぎず、土地本来の植生に近づけるような緑地管理を継続。従来からの豊かな動植物が生きやすい環境を維持している。
■エリアごとに草丈を分けて草地を管理。
水辺を訪れる昆虫類や野鳥がどの程度の草丈を好むかは種類によって異なることから、水路沿いの草地を「低茎草地」「中茎草地」「高茎草地」に分け、草刈りの頻度や刈り込み具合を変えることで草丈に差が出るよう管理している。
■特定外来生物の生息状況を継続的に注視。
緑地工事や植栽工事の際、福岡県の定める侵略的外来種が移植されることがないよう配慮。もし発見した場合は速やかに除去することをルール化している。新たに確認された特定外来生物についても、重点的に観察を継続。