Factory Automation

FA業界コラム ~識者の視点~

安全投資で生産性の向上を ― 新しい安全の考え方 ―
神余浩夫氏

2022年4月公開【全3回】

第2回 安全制御機器のラインアップ

 前回、機械安全規格に適合した機械を設計・構築するためには、同じく安全規格に適合した安全制御機器を使う必要があることを説明いたしました。当社は、安全規格に適合した制御機器をご提供しておりますので、今回はそれら安全制御機器の説明をいたします。

 まず、安全シーケンサについて説明いたします。2006年のMELSEC-QSシリーズが当社初めての機能安全規格に適合した安全シーケンサです。機能安全とは、プログラム制御により、非常停止や安全動作制御を行う技術であり、高度で複雑な安全制御、例えば自動車の衝突回避自動ブレーキ、鉄道の自動運転装置や協働ロボットなどで実用化されています。安全シーケンサは、お客様が用意した安全制御プログラムを実行できる安全制御機器です。また、同シーケンサは、安全リモートI/Oを介して安全ネットワークシステムを構築するためにCC-Link Safetyをサポートします。

 安全シーケンサの導入は、安全への意識の高いお客様から導入が進みました。これまでの複雑な安全回路や外部装置を用いた安全対策が、安全プログラムや安全ネットワークに置き換わるのですから、省配線でコンパクトな安全システムとなり、工期や改造費用も抑制できることがわかりました。それ以上に効果があったのが「安全の改善」です。それまで、保全作業等を行う場合、制御盤の主電源を切ることが常識でした。しかし、安全シーケンサを使うと個々の機械、動力の遮断を安全シーケンサのプログラムが管理します。従って、すべての動力を遮断する必要はなく、人が作業している、人が近づいた動力だけを遮断すればよいので、「止めない安全」が実現できます。安全プログラムにより安全を細かく制御することで、「生産性と安全性の両立」が可能です。

 こうして、安全シーケンサは「より安全に」だけでなく、「安全性と生産性の両立」を実現したい多くのお客様に支持されるようになりました。最初のMELSEC-QS以後、最新のiQ-Rシリーズでは安全はあたりまえの機能としてシーケンサシリーズに安全製品がラインアップされています。

(図:安全制御システム構成例)(図:安全制御システム構成例)

 サーボMELSERVOでも、安全製品が用意されています。例えば、ドライブの安全規格が定めるドライブの電源を遮断して安全停止(STO)を、従来の非適合のサーボモーターで実現しようとすると、アンプごとモーター電源を遮断する二重化回路が必要でした。しかし、安全規格適合品だと、外部に余分な回路は必要なく、アンプは通電したままモーター動力だけを遮断するので、再起動が迅速に行えます。そのほか、可変速ドライブ規格が規定する安全機能として、指定した安全速度を超えない安全制限速度(SLS)や指定した空間から出ない安全制限位置(SLP)などをサポートしています。例えば、人が近づくとロボットアームの速度を制限し、さらに接近すると安全停止するなどの安全対策が可能となります。

 そのほか、CNCやロボットも安全規格に適合し、規格が定める安全機能と性能を備えています。

 古典的な機械の安全対策は、リスクアセスメント後に安全対策を外部に後付していましたが、それだとコストもサイズも嵩みます。当社の安全制御機器を使用することで、お客様が安全規格適合性について煩わされる手間を大きく削減することができます。加えて、最初から制御プログラムやサーボ・インバータ駆動などの本質的な動作の安全性を考えることで、安全性と生産性の両立を達成することができます。

 私もお客様から「安全性が重要なのはわかるが、コストを転嫁できない」とのご相談をよくいただきました。基本設計段階から安全性を考えることで、コスト上昇はかなり抑えられる。安全制御機器を駆使した「きめ細かい安全制御」により、止めない「安全性と生産性の両立」を実現できる、がその回答となります。本コラムの表題は、このことを意味しています。

(図:三菱電機の安全関連製品)

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