三菱IH20周年記念 スペシャルコンテンツ 20年の家庭調理の環境変化と三菱IHの進化

この数十年間、日本の「食」は大きく変わりました。食卓の光景、家庭料理の作り方に調理器具。今回は、日本のIHクッキングヒーターの先駆者である三菱電機ホーム機器の樋口裕晃営業部長と、100年に渡り「家庭の味」の心と業を伝える伝承者である辻ウェルネスクッキングの佐川進校長に、ここ20年で変化した家庭での調理環境と三菱IHの進化について語り合っていただきました。

早くから辻家でも使われていたIH

三菱電機の「IHクッキングヒーター」が20周年を迎えました。その安全性などからもお子さんや高齢者のかたに関わる現場でも多く使われていると聞きます。本日は家庭料理を向上させるIHと家庭料理を次代につなぐ「食育」についてお話を伺います。

樋口 裕晃
たとえば三菱電機の場合で申し上げると、1974年に国内初となる電磁誘導加熱調理器「CS-130A」を発売。その後、1998年にビルトイン型のCS-A32Bで本格的に「IHクッキングヒーター」に取り組むようになりました。ただまだコンロと言えばガスが当たり前で、「IHクッキングヒーターって何?」というような時代でした。
佐川 進
当時はそうでしたね。でも聞いた話ですと、辻ウェルネスクッキングの現・相談役の辻岩治宅には、1998年には三菱電機のIHクッキングヒーターが導入されていたようなんです。
樋口 裕晃
そんなに早くからですか。
佐川 進
その頃、自宅のキッチンを改装することになり、業者さんがおすすめしてくださったとか。それからは、辻ウェルネスクッキングでも各校で三菱電機さんのIHクッキングヒーターを採用させていただいています。ちなみに相談役の自宅のIHクッキングヒーターは導入以来、一度の故障もなく19年間使わせて頂き、昨年秋、再度キッチンを全面改装。今回も最新型の「びっくリングIH」に交換したと聞いています。
樋口 裕晃
どういった点を気に入っていただいていたのでしょうか。
佐川 進
従来のガスコンロ同様、ダイヤルで火力を調整できるのは実にいいですね。長くガスをお使いだった方も違和感なく移行していただける。直感的に操作できるので、幅広い世代の方に安心して使っていただきやすい。
樋口 裕晃
「すべての方に使いやすく」というのは家庭用IHクッキングヒーターの開発のテーマであり、開発の絶対条件です。1号機から搭載し続けている「火力ダイヤル操作」はガスに慣れた方にも同じ感覚で操作できますし、ダイヤル自体を「ポン」と押し込めば、即加熱を止めることもできる。使いやすさと安全性の両面からご好評をいただいています。
佐川 進
子どもからお年寄りまで安心して使えるというのは、「食育」という観点からもとても重要です。「味を伝える」には、まず親と子どもがともにキッチンに立って調理をする必要があります。なかには、おばあちゃんが小さなお子さんと一緒にキッチンに立つケースもあるかもしれない。そういうときには炎が出ないという特徴は本当に安心できますよね。
樋口 裕晃
開発にあたっては「安心・安全性」を第一に、「操作性」や「快適さ」も大切にしています。「快適さ」で言えば「輻射熱が少ない」というIH調理器そのものが持つ特性もそのひとつ。夏場にガスの火を全開にして炒め物をすると暑くなりますが、IH全開にしても鍋だけを発熱させる。余計な熱気が周囲に広がりません。
佐川 進
そうしたIHクッキングヒーターの快適さは調理を身近にしていきますよね。吹きこぼれの掃除も簡単だし、ふだんのお手入れも拭くだけでいい。お手入れが楽だと、調理する人とキッチンの距離が近づきますよね。

mini column 「食育」とは「人」を「良」くするよう「育」むこと

樋口
2005年に「食育基本法」が制定されて13年が経ちます。佐川先生は、「食育」とはどういうものだとお考えになっていますか?
佐川
「食」という字は「人」に「良」と書きますよね。つまり「食育」とは、人の心や体を良くするよう「育」むこと。愛情を込めて作られたおいしいものをいただくと、心がほっとおだやかになったり、満たされたような気持ちになりますよね。「人」の体と心に「良」い体験を積むことが「食育」の根本にはあるのです。

三菱IHの進化の歩み

調理器具は「調理のコミュニケーション」を支えるアイテムですが、昨今のIHクッキングヒーターはどのように進化しているのですか?

樋口 裕晃
「調理」の要となる加熱エンジンであるIHコイル開発は1998年の第1号機発売以来、休むことなく続いています。2001年にはダブルリングコイルを開発、2007年にはトリプルリングコイルを搭載し、IH調理器が苦手だった「煮込み」料理をおいしく、手間なくできるようになりました。
佐川 進
確かに昔のIHクッキングヒーターは、粘度の高いシチューや糖度の高いジャガイモなどを煮込んだまま目を離すと、焦げついてしまうということもありました。
樋口 裕晃
2011年に大口径多分割コイル「びっくリングコイル」を開発したのが大きな転機となりました。最新の型ではコイルの発熱部を分割し、鍋の内部で数パターンの対流を起こすようプログラミングされています。これによって加熱ムラが抑えられ、煮込み料理もIHクッキングヒーターとは思えないほど焦げつきにくくなりました。
佐川 進
煮込み料理は、家庭の食卓には欠かせません。カレーや肉じゃがのような日常的な煮込み料理のほか、国内には各地方、各地域に伝統的な煮物料理があります。山形や宮城の「芋煮」、富山の「ぶり大根」、愛知の「どて煮」、兵庫の「牛すじ煮」、福岡の「がめ煮」など数え上げたらきりがありません。土地土地にある多様な素材を煮込むことで、たくさんの栄養を体に取り込むことができます。
樋口 裕晃
実は「びっくリングコイル」の開発にあたっては、伝統的な煮込み料理のような大鍋調理のお役に立てれば……という思いもありました。
佐川 進
煮込み料理は一度にたくさんこしらえるものが多いですよね。例えば、郷土料理で言えば、兵庫などの瀬戸内海沿岸でよく作る「いかなごのくぎ煮」。毎年2月下旬から3月頃にかけての漁期に集中して、一度にkg単位のいかなごを大鍋で炊きます。
樋口 裕晃
いかなごは炊くときに混ぜると身崩れして、非常に難しい料理だと聞いています。IHクッキングヒーターでも昔のものだと大鍋のサイズになるとうまく加熱できなかったりもします。しかも火がちょっと強いと焦がしてしまうし、火が弱いと熱が回らない。
佐川 進
こうした火加減の難しい料理にも「びっくリングIH」は上手に対応してくれます。火加減の調整はもちろん、鍋のなかでうまく対流を起こしてくれるような設計がうれしいですね。上手くできると料理の喜びもひとしおで、その成功体験は次への意欲につながっていく。
樋口 裕晃
「上手にできる」ことは、食の継承――食文化の伝承にもつながっていくというわけですね。大げさかもしれませんが(笑)。
佐川 進
ちっとも大げさではありません。例えばカレーやシチューといった日常的な煮込み料理でも、焦げつかせると、家族全員がちょっぴりしょんぼりしちゃいますよね。お子さん自身が作ったならなおさらです。でも、上手に作れると、料理の喜びが感じられる。つまるところ、食文化とはそうした小さな日常の積み重ねの先にあるものなのです。

三菱IHが「家族との料理」を後押しする

樋口 裕晃
家庭料理というのは、作る場面も含めて、家族間コミュニケーションの中心になるものです。おいしいものを作ろう、食べさせよう、伝えようというとき、調理する意欲を後押しする。IHクッキングヒーターにはそんな位置づけの調理家電であってほしいですね。
佐川 進
本来、作ることと食べることは地続きのはずなんです。そうした「食の基本」に小さな頃から触れる。料理は人間が社会生活を営む上での基本的な姿勢を培ってくれるものなんです。
樋口 裕晃
素材をそろえて、下ごしらえをして、調理をして、盛りつける。その間にあるさまざまな作業の段取りをすることは、子どもにとっての社会性にもつながっていきますよね。
佐川 進
大切なのは、まず家族が一緒にキッチンに立つこと。できることから始めてもらえばいいんです。ひとつひとつの作業を楽しみ、階段を上るように「その家の料理」を家族によりそったものにしていく。食卓の上だけでなく、調理を通してのコミュニケーションが、家庭の食卓をより豊かにしていくのだと思います。

「家庭料理の食文化」はさまざまな形で変わってきています。生活様式の変化とも無縁ではありません。例えば、集合住宅に住む世帯が増え、煙の出るサンマのような魚も焼きづらくなりました。

樋口 裕晃
そこはひとつ言わせてください(笑)。三菱電機では集合住宅でも気兼ねなく焼き魚を調理できるよう、2004年にはIHクッキングヒーター内の魚焼きグリルに「脱煙機能」を持たせました。実際、魚を焼かれたマンション住まいの方からもご好評をいただいています。
佐川 進
一般家庭の嗜好の幅が広がり、家庭の調理器具にも多様な機能が求められるようになりましたよね。魚焼きグリルを使ったアイデア料理のようなレシピも増えてきています。
樋口 裕晃
そうですね。当社ではグリルに、オーブン機能を持たせるようになりました。2005年にはグリルでピザやケーキが焼けるオーブン機能を搭載。2008年には専用鍋「グリルディッシュバリエ」を使っての「パンづくり」という新提案もさせていただいています。最新の「びっクリアオーブン」では熱風循環加熱式――いわゆるコンベクション機能を採用し、人気のノンフライ調理もできるようになりました。
佐川 進
そうした機能の追加に加えて、グリルを引き出したときにドアが下がる三菱電機さんの「レール式プルダウンドア」は食材の出し入れが本当にラクにできる。熱くなったドアにうっかり手が触れてしまうような場面も見かけません。
樋口 裕晃
高さ90mmの庫内でローストビーフやパウンドケーキなど高さのあるメニューを無理なく調理できる楽しさも追求しました。焼き芋だって焼けますし、使い方によってはこれさえあればオーブンいらずというご家庭もあるかもしれません。
佐川 進
グリル料理のすそ野が広がりましたよね。レール式プルダウンドアやサンマが5匹入るという庫内の広さなど本来の機能を充実させながら、機能を拡張されている。20年間積み上げたトータルでの完成度の高さが感じられます。
樋口 裕晃
お客様からの声に耳を傾け続け、商品に反映し続けた20年とも言えるかもしれません。結局のところ家庭のキッチンの主役はその家に住まう「家族」ですから。
佐川 進
今後も「家庭の食」、「食育」を後押しするようなIHクッキングヒーターを期待しております。
樋口 裕晃
お客様の食生活をさらに豊かにするような製品の開発につとめてまいります。本日はありがとうございました。
佐川 進
こちらこそありがとうございました。

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