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読む宇宙旅行

2010年7月 vol.02

地球には「未知の美」が無数にある−野口飛行士語る

野口飛行士が滞在中、もっとも心惹かれた地球の美しい風景の一つ、南米パタゴニア。(提供:NASA)

野口飛行士が滞在中、もっとも心惹かれた地球の美しい風景の一つ、南米パタゴニア。(提供:NASA)

 私たちは、宇宙飛行士が言う「地球は美しい」という言葉に慣れすぎてしまったのかもしれない。だが野口聡一飛行士の話をじっくり聞けば聞くほど、地球の美しさを、本当には知らなかったことに気づかされる。宇宙から見て初めて気づく「息を呑むような美しさ」。それはどのようなものだったのか。

 野口飛行士に言わせれば、宇宙飛行士が地球を見るにはいくつかの段階があるという。「僕がISS滞在中にスペースシャトルでやってきた飛行士達の反応を見て気づいたんです。ISSに到着したとたん、飛行士達は船外活動やロボットアームの操作とか仕事に没頭するから、『地球見えるよ』と言っても『あ、丸いね』と、とりあえず見たという反応(笑)。ようやく余裕が出ると『ピラミッド見えるの?』、日本だと『富士山見たい』など、有名な場所を見る。その次に見るのが自分の出身地とか知り合いがいる場所なんです。」

 でも長くても約2週間のスペースシャトルの宇宙飛行では、出身地を見る前に帰ってしまうことが多いという。思うように自分が見たい場所を見つけられない。たとえばNASA飛行士が出身地を見ようとアメリカ大陸上空をシャトルが通過するときに窓に見に行くが、地形を把握する前に、通り過ぎてしまう。「秒速8キロで飛んでますからね」

 野口飛行士はISSに滞在中、窓から何気なく地球を眺めていて、名もない場所、有名でない場所にも「はっと目をひくような美しさ」が無数にあることに気づいた。「例えば珊瑚礁の海と聞けばバハマやモルジブが有名です。でもアフリカの東海岸には綺麗な珊瑚礁がいっぱいある。ヒマラヤのエベレストは有名だが、テンシャン(天山)山脈やアルタイ山脈は人間が入ったことのない100%ナチュラルスノウが広がっている。アフガニスタンは戦禍の街で血なまぐさい印象があるが、そのすぐ奥がテンシャン山脈。こんなに美しいところで戦争をやっているのかと驚かされる」という。

 野口飛行士が特に熱中して撮影したのは、南米のパタゴニアだ。海岸線の美しさ、水の色の変化やバリエーションに夢中になって、何日撮り続けても飽きない。その魅力を伝えたいとツィッターに写真をアップし始めた。 そしてツィッターが自分の感動を伝えるのに最適のメディアだと気づいたのだ。「これまでは撮影した写真をNASAに送ると地球観測の専門家が選んでNASAのウェブに掲載していました。でもそれは専門家の見方。僕が伝えたいのは、色の鮮やかさや氷河のダイナミックさ、地形の荒々しさ。視点が違うんです。」撮影した何百枚もの写真から自分の驚きが伝わる「この1点」を選び、アップした。

 その写真に世界中の人たちが反応してくれたのも驚きだった。宇宙に行く前は、地球の写真や写真集なんていっぱいあるのに今更という想いが自分自身にもあったのだ。「でも世界には宇宙機関がなかったり属していない国の方が多い。NASAが地球の写真を公開していることも知らないし、まさか自分のパソコンに届くと思っていない。宇宙関係者が思っているよりも、宇宙や地球の写真に対して敷居が高かったようだ」とフォロワーの反応に後押しされていった。

 そして地球を見続けることで、野口さんは地球や宇宙に対する「美の見方」が変わったという。