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読む宇宙旅行

2010年12月 vol.01

宇宙満載の2010年を振り返って−JAXA阪本先生に聞く

JAXA宇宙科学研究所教授、宇宙科学広報・普及主幹の阪本成一さん。中学3年でTV番組「コスモス」を見て宇宙に興味を持つ。大学時代は漕艇部に所属しエイトで日本一になった「体育会系天文学者」。国立天文台助教授を経て2007年4月から現職。別名「酒もっと」先生。

JAXA宇宙科学研究所教授、宇宙科学広報・普及主幹の阪本成一さん。中学3年でTV番組「コスモス」を見て宇宙に興味を持つ。大学時代は漕艇部に所属しエイトで日本一になった「体育会系天文学者」。国立天文台助教授を経て2007年4月から現職。別名「酒もっと」先生。

 2010年もあと数日。今年は、野口聡一宇宙飛行士の宇宙ステーション(ISS)滞在に始まり、山崎直子飛行士がISSを訪問し、史上初の「日本人2人宇宙滞在」が実現した。そして、小惑星探査機「はやぶさ」も奇跡の帰還。9月には準天頂衛星初号機「みちびき」が打ち上げられた。宇宙の話題が尽きない一年だったと言えるだろう。そんな中、宇宙の広報マンとして全国を奔走し100件以上の講演をこなしたのがJAXA宇宙科学研究所の阪本成一さんだ。今年を振り返って頂きつつ、ご専門の「電波で見る宇宙」の話しも伺った。

 ―今年は、どんな年でしたか?

 阪本:日本にとっては「太陽系大航海元年」でしたよね。「はやぶさ」が小惑星イトカワからサンプルを持ち帰ったし、宇宙ヨット・イカロスが宇宙で世界で初めて帆を広げて宇宙を航行した。金星探査機「あかつき」は金星周回軌道に入ることができませんでしたが、6年後の軌道再投入に向けて現在調査中です。また、印象的なこととしてはツィッターの活用がありましたよね。野口飛行士の地球の写真に始まって「みちびき」や「イカロス君」、「あかつき」などもそれぞれの個性を出してツィッターでお互いに会話したりしたのも、新しい形でしたよね。

 ―宇宙開発の分野ではどうですか?

2010年4月、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟内の野口飛行士と山崎飛行士。(提供:NASA)

2010年4月、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟内の野口飛行士と山崎飛行士。(提供:NASA)

 阪本:野口飛行士はロシアのソユーズ宇宙船で宇宙と往復しましたよね。ロシア的な宇宙開発とアメリカ的な宇宙開発の違いが際だっていて、面白かったです。ロシアはうまくいっているモノは決していじらない。一方、アメリカはスペースシャトルが引退して今後、民間主導の宇宙開発になる。大きく舵を切ろうとしている。民間の力を使うのはいいアイデアだと思うけど、何かあったときにどうリスクをとっていくのかが心配ではある。一方、民間の宇宙旅行のテスト飛行が始まって現実味を帯びてきましたね。

 −天文分野でも発見が相次いで系外惑星の数は500個を超えました。先生が携わっていたアルマ望遠鏡(南米チリに建設中の電波望遠鏡群)もテスト画像が公開されましたね。

 阪本:はい。アルマは日米欧の協力で66台の望遠鏡群が標高5000mのチリ・アンデス高地に2012年に揃う予定です。今年までに8台が設置されて既に世界最高性能を達成しています。テスト画像が出ましたが、今後どんどん性能がよくなって綺麗な画像が出てきますよ。

 ―電波望遠鏡の画像は正直、地味ですが(笑)、面白さってどういうところですか?

 阪本:はは。でも目に見えないものを「暗視」できるからこそ面白い。すばるなどの光学望遠鏡ではすでにできた星の光をとらえますが、電波望遠境で観測するのは光を出さない「冷たいモノ」です。たとえば星になる前の「ガスの塊」や太陽系のような惑星系ができる前の「原始惑星系円盤」を観測する。その円盤に地球型惑星の材料になるような固体成分がどのくらいあるか、ガス成分がどのくらいあるかで、木星型のガス惑星ができるか、地球型の惑星ができるかなど、惑星系の将来をある程度推測できるのです。

12月8日に公開されたアルマ望遠鏡のテスト画像。がか座ベータ星の円盤。左は赤外線天文衛星ハーシェルの画像(Olofsson他)、右はALMAの画像で細部まで詳細だ。(提供: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))

12月8日に公開されたアルマ望遠鏡のテスト画像。がか座ベータ星の円盤。左は赤外線天文衛星ハーシェルの画像(Olofsson他)、右はALMAの画像で細部まで詳細だ。(提供: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))

 ―成長しつつある惑星系を観測できるということですか?

 阪本:原始木星のような惑星ができたとして、その惑星自体は見えないかもしれませんが、回りのガスを吸い寄せて円盤に空洞ができる。その空洞は見える可能性があります。

 ―へ〜面白そうですね。ところで阪本先生はなぜ天文台からJAXAの広報に?

 阪本:僕は大学4年生の実習で世界最小の60pの電波望遠鏡の立ち上げに参加し、電波天文学の面白さに惹かれて国立天文台の野辺山宇宙電波観測所などで研究を続けていました。アルマ計画では広報、チリのサイト調査や地元対策、国際調整などを担当しました。アルマは大規模な国際計画でしたが、一つのプロジェクトです。一方JAXAに来れば宇宙全体を手がけられるし、自分の経験をいかして貢献できると思いました。「外で食い扶持を稼げるヤツはどんどん出て行け」というのが僕の持論。アルマ計画が予算を獲得して軌道にのった2006年秋に宇宙科学研究所の公募を見て応募しました。科学者は研究室に籠もりがちで社会との接点があまりないのは問題。もっと外に出て行って、研究内容や意義を納税者や子ども達に伝えることが大事だと思っています。

 ―なるほど。さて2011年はガガーリンが宇宙に出てから半世紀ですね。

 阪本:1月には種子島から宇宙ステーション補給機「こうのとり」2号機が打ち上げられ、5月には古川聡飛行士が宇宙長期滞在を行います。国際宇宙ステーションの利用も本格的になるので実験の中身を伝えていく必要がありますね。太陽活動も活発になり始めているので、太陽観測衛星「ひので」の観測も期待できそうですよ。