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読む宇宙旅行

2011年9月 vol.02

2012年5月21日金環日食
「日本史上もっとも多くの人が見られる奇跡的日食」

金環日食。2010年1月15日、ミャンマー、バガンにて。塩田和生さん撮影。世界各地で日食を撮影している塩田さん。「金環になる直前に太陽の円弧がスーっと伸びてきてあっという間にリングがつながっていく様子には、ある種のスリルを感じます。」

金環日食。2010年1月15日、ミャンマー、バガンにて。塩田和生さん撮影。世界各地で日食を撮影している塩田さん。「金環になる直前に太陽の円弧がスーっと伸びてきてあっという間にリングがつながっていく様子には、ある種のスリルを感じます。」

 2012年5月21日(月)朝7時頃、日本の多くの地域で「金環日食」が見られる。月が太陽を隠すのが日食で太陽、月、地球の位置関係によって見え方が異なる。「金環日食」は月が太陽を隠し切れず、太陽がリング状に見える現象だ。日本で前回起こったのは1987年9月23日(沖縄本島など)だから25年ぶり。そして次回は2030年6月1日に北海道で見られるまで18年間起こらない。貴重な機会だ。さらに今回は、大阪や名古屋、東京など大都市を含む広い範囲で見られるという。ただし!何気なく太陽を見あげては危険。太陽の光で目の障害が起こる恐れがある。そこで安全に楽しむコツを「2012年金環日食日本委員会」副委員長の大西浩次さん(国立長野高専教授)に伺った。

 まず、金環日食のみどころは?「今回のすごいところは、九州から神戸・大阪、名古屋、関東の大部分という日本でも人口の多い地域で見られることです。実は国勢調査のデータを使って調べたところ、金環食帯(金環日食が見られる地帯)にある市町村人口は約8千万人、日本の人口の7割弱です。これほど多くの人がいながらにして見られる日食は、日本でほぼ千年ぶりです。日本で史上最も多くの人が見られる日食と言っていい。」

 ところで金環日食ならではの見どころはどんなところなのか。皆既とどう違うのだろう。「よく誤解されるのは皆既日食と同じように空が暗くなってリングが見えると思われることです。でも金環日食ではもっとも太陽が欠けたときでも空は暗くならない。実際は光の量は数十分の一から百分の一に落ちるのですが、人間の目が調整してしまうからです。ただし、皆既日食では皆既帯に入っていない人と入っている人の見え方に大きな差がありますが、金環日食ではあまり差がなく、リングに少し切れ目があるぐらい。その意味で日本にいる約1億人が、平等に宇宙を通して楽しめる」というわけだ。

日食が起こる地域と時間(提供:国立天文台)

日食が起こる地域と時間(提供:国立天文台)

 多くの人が楽しめるだけに大西さんらが危惧しているのは、安全性だ。決して太陽を直接見てはいけないし、日食グラスなど太陽観察用のめがねを持っていても「使い方を誤ると大変なことになる」という。「2009年の皆既日食では、グラスを持っていても目を傷めた人がいました。太陽の方向をまず肉眼で確認した後に、グラスを目にあてるという使い方をしていたからです。太陽光の中で最も危険なのは『ブルーライト』(400nm〜500nmの青色光)で、網膜の細胞に光化学変化を起こして傷つけます。ちらっとでも肉眼で太陽を見る時間が積算で1秒以上になると、目に障害が起こる可能性が高くなる。」たった1秒で!と思うとあなどれない。大西さんによると、日食グラスの正しい使い方は「まず自分の影を探す。そして影の反対方向に身体を向けて、目にグラスを当ててから太陽を見て下さい」とのこと。

 さらに、太陽を見ないで金環日食を楽しむ方法もある。たとえば段ボールなどの厚紙に穴をあけて太陽の光を当てる。すると穴を通って影の中に映った光が、欠けた太陽の形になっている(ピンホールカメラの原理)。手軽なのは手鏡を使って壁などに移す方法(10m離れた壁に10pほどの大きさで見える)。また、道具が必要ないオススメが「木漏れ日」の観察だ。街路樹などを見かけたら地面に注目。葉の間を通る光が三日月やリングの格好で見られて風景と共に楽しめる。

リング状の木漏れ日(塩田和生さん撮影)。木漏れ日を観察するのもオススメだ。

リング状の木漏れ日(塩田和生さん撮影)。木漏れ日を観察するのもオススメだ。

 大西さんが個人的に楽しみにしているのは「ベリービーズ」という現象。月の縁のでこぼこを通す光が数珠状にビーズのように連なって見える現象で、金環食帯ギリギリあたりで見られる可能性があるという。しかも仲間と少し離れて観測すると、月の山のでこぼこや月の影が秒速1kmで動くにつれて日食が移動するのを実感できると期待する。

 「2012年金環日食日本委員会」は天文の広報普及を目指した「日本天文協議会」のワーキンググループの一つとして2011年4月に発足。大西さんら約10名のスタッフはボランティアだ。安全に日食を楽しんでもらい、イベント情報を共有するための情報センターとしての役割を果たそうと既に第1回のシンポジウムを5月に開催している。2回目は10月29日(土)、東京・お台場の日本科学未来館で開催する。「みんなで楽しむために」をテーマに教育プログラム事例やイベント企画の発表、日食観察時の目の障害発生防止の情報提供など、盛りだくさんの内容。「何かイベントをやってみたいけど何をどうしたらいいかわからない、という人にこそ是非、気軽に参加して仲間を増やしてほしい」と大西さんは呼びかける。

 この金環日食、日本列島では九州熊本あたりから北上し、最後は福島県の南相馬にぬけていく。たとえば金環日食を見ながらツイッターなどで次々と呼びかけて、福島の方々にエールを送るような仕掛けができたらいいなと大西さんは案を温める。「みんなで一つの太陽を安全に見上げて、宇宙に生かされていることや自然や人々とのつながりを体感してほしい。さらに『絆』を感じるきっかけになれば」。天文現象としてだけでなく、社会的なイベントに広げたいと考えている。あなたも、金環日食を体感してみませんか?

記事協力:2012年金環日食日本委員会 大川拓也さん