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ライター 林 公代 Kimiyo Hayashiライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

大西卓哉飛行士、6月に宇宙へGO! 3つの注目点

このところ、毎年日本人宇宙飛行士が宇宙で活躍している。それが当たり前になってきたってことは、宇宙時代になってきた証じゃないだろうか。日本で11人目の宇宙飛行士、大西卓哉さんが2016年6月頃、国際宇宙ステーション(ISS)に向けて飛び立つ。

大西さんがこれまでの宇宙飛行士と異なるのは、民間の旅客機パイロット(全日空)出身だということ。(実はこの原稿を書く前日、海外出張からの帰りの飛行機が偶然、大西さんが副操縦士を務めたことのあるB767。しかも全日空機だった!大西さんもかつてこの路線を操縦していたのかな?と思うと感じるところ大でした)。世界の宇宙飛行士には軍のパイロット出身者は多くても、民間機パイロット出身者はほとんど前例がないそう。「民間機パイロットはパイロット同士はもちろん、客室乗務員や整備士など大きなチームの一員として仕事をする点が宇宙飛行士と共通しています。また訓練の評価項目であるリーダーシップやフォロワシップ、状況判断などもパイロット時代と同じ。求められる能力が共通していると感じました」(大西さん)。そんなパイロットへの強いこだわりから、ミッションロゴは三角形の翼をかたどったデザインになっている。シンプルに月や火星を目指すデザイン、かっこいい!

国際宇宙ステーション(ISS)第48次/49次滞在ミッションのJAXAロゴを持つ大西卓哉宇宙飛行士。三角形の翼がモチーフ。ISSから月、さらに火星を見据える。

注目1. 日本の強みとは?
—ISSのキーシステムを運ぶ「こうのとり6号機」

さて、1月末の記者会見では大西さんのミッションテーマも公開された。「信頼を、さらに強く。日本にしかできないことがある」と資料に書かれ、その下に船外活動服姿の大西飛行士の写真が。「日本にしかできないことってなんですか?」と聞くと、大西さんの回答は「『こうのとり6号機』です」。日本の貨物船「こうのとり」は確かに各国の貨物船が軒並み失敗する中、確実に大量の物資をISSに運んでいる。だが6号機は特別なミッションがあるようだ。「ISSのバッテリーが老朽化して、交換しなければいけない時期にきています。そこで日本のメーカーが作った日本製リチウムイオンバッテリーに交換します。バッテリーを運べるのは日本の『こうのとり』だけです」

バッテリーはISS延長に必須であるキーシステム。その輸送はNASAから依頼されたものであり、JAXAは6個ものバッテリーを大量に輸送する。これは非常に重要なミッションで要注目だ。「こうのとり」やそれを打ち上げるH-IIBロケットシステムが大きな信頼を得ている証だとJAXA関係者は語る。

大西飛行士がISSに滞在中の6月から10月下旬の間に「こうのとり6号機」が打ち上げられるかどうかは未定だが、期待が膨らむのは、バッテリーのISSへの移設作業に必ず船外活動を行うこと。大西飛行士は「もし自分がいる間に『こうのとり6号機』が打ち上げられたら、ロボットアームでキャプチャしたいし、船外活動も任せてもらえたら嬉しい」と意気込みを話してくれた。ぜひ実現してほしいものです!

船外活動訓練中の大西飛行士とHTV(こうのとり)フライトディレクタで6号機のバッテリーを輸送する曝露パレット主開発担当の内山崇さん。大西飛行士と内山さんは大学時代、同じ研究室に所属。宇宙飛行士選抜のファイナリスト(最終候補者)仲間でもある。(提供:JAXA)

注目2. 新しい実験を次々と。マウス宇宙飛行士到着か

宇宙実験については、新しい実験装置で行う新しい宇宙実験が2016年に次々と始まる予定だ。

注目は、マウスを使った小動物飼育実験。めざすのは「健康長寿社会への貢献」だ。宇宙では宇宙飛行士の骨や筋肉が衰え、寝たきりの高齢者と似たような症状が急激に進む(骨量は地上の骨粗しょう症の約10倍もの速さで減少)。マウスを使って原因となる遺伝子を推定し、どんな薬が治療や予防に効果があるか突き止めようとする実験だ。主役のマウスは今のところ、もっとも早いケースで5月に米国のドラゴンで生きたまま打ち上げる予定。ISSでは宇宙飛行士が水や餌を与えたり排せつ物の掃除をしたりなどの世話をし、約30日後に生きたまま帰還させる。

大西飛行士が楽しみにしているのは材料実験。たとえば2015年に打ち上げられた静電浮遊炉は世界で唯一の装置。3000度もの高い温度で金属から酸化物、セラミックスなどの絶縁体など幅広い材料を浮かせたまま溶かして熱物性データをとる。民間からも使用したいという需要があり、実証データを提供する予定だ。

JAXA筑波宇宙センターで訓練中の大西飛行士。左隣は同じチームのNASAキャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士(提供:JAXA)

注目3. 地上チームの女房役

宇宙飛行士だけでは宇宙活動を行うことはできない。ミッションの成功に欠かせないのが地上のサポートチームの存在だ。筑波宇宙センターにはきぼう運用管制チーム約60名、実験運用チーム約60名が働いているが、彼らをとりまとめるフライトディレクタは、宇宙飛行士の女房役。宇宙飛行士の状態を見守り、先を読んで仕事のしやすい環境を作り、疲れているなと感じたら仕事量やスケジュールを調整する。

大西飛行士の女房役は二人。前半が中野優理香さん、後半が市村周一さんだ。中野さんは26歳。現在、認定されている16名のうち最年少のフライトディレクタだ。大西さんのいい点を聞くと「とてもアグレッシブな点。訓練で納得できなかったり、もう少し勉強したいと思ったりすると積極的に訓練官に聞いて吸収していく。日本に帰ってくるたびにレベルアップしています。また地上管制官のことをとても気にかけて、個人的な話まで覚えていてくれる」とはじける笑顔で答えてくれた。

一方、後半のフライトディレクタを務める市村周一さんは、大西さんと宇宙飛行士選抜試験の受験仲間だったそう。50名まで絞られた2次試験で同じグループで戦い、気心の知れた仲でもある。彼らフレッシュなフライトディレクタの采配ぶりにも注目したい。

大西飛行士はグーグル+で情報発信をしている。宇宙ネタはもちろん、散髪や食べ物の話題など人間味あふれた内容がけっこうおもしろいので、チェックしてみてくださいね。

右端が前半のフライトディレクターの中野優理香さん、左端が後半の市村周一さん。
2015年12月、バックアップクルーとしてバイコヌール宇宙基地でソユーズロケット(後ろ)の打ち上げを見て、宇宙に行く強い決意を感じたという。(提供:JAXA)