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ライター 林 公代 Kimiyo Hayashiライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

画像でふり返る2019宇宙ベスト10~イベント満載の2020へ

令和元年も宇宙の話題満載の1年でした。連日のように会見がある慌ただしさ。その最中、恥ずかしながら転倒、骨折(しかも右肩泣)。長い原稿を書けないため、今年の宇宙の話題から「画像でふり返るベスト10」を選んでみました!

☆10位 中国の無人探査機「嫦娥4号」、月の裏側に史上初着陸成功!

月の裏側を走行する「玉兎2号」。(提供:CNSA)

2019年は衝撃的なニュースで幕をあけた。1月3日、中国の無人探査機「嫦娥4号」が世界で初めて月の裏側の着陸に成功したのだ。月の裏側は地球からは見えず直接通信ができないため、着陸は困難だった。中国は通信衛星を介して着陸に成功。さらに月面ローバー「玉兎2号」を探査機からおろし、走行させた。

中国による月探査の進展に脅威を感じた米国は、有人月探査計画を前倒し。月周辺に無人基地ゲートウェイを建設し、2024年には米国人女性飛行士らを着陸させると発表した。米国が中心となって進める月探査計画に、日本も参加を表明した。

☆9位 前澤友作氏 月旅行を発表

10月9日、150人以上が詰めかけた日本外国特派員協会での記者会見。

月と言えば、注目を集めたのはこの発表だった。ZOZO創業者で実業家の前澤友作氏が「5年後に月旅行をする」と発表したのだ。地球を代表するアーティスト最大8人を連れて。なぜ月に行くのかを問われた前澤氏は「自分のメッセージを世界中に発信する大きなチャンスと捉えた」と回答。そのメッセージとは『世界は平和なほうがいいじゃん』。前澤氏が月旅行に使う宇宙船はスペースX社のスターシップ。宇宙船の開発状況、前澤氏の動きに今後も要注目だ。

☆8位 アポロ月着陸50周年

アポロ11号で月面着陸後、実験作業を行うオルドリン飛行士(提供:NASA)

今年は宇宙〇周年が多い年でもあった。夏に盛り上がったのはアポロ着陸50周年だ。1969年7月に人類初の月着陸を達成したアポロ11号から1972年のアポロ17号まで。12人の米国人宇宙飛行士が月面を歩いた事実は、現在の宇宙開発の進展の遅さと比べると驚異的に思えるほど。再び私たちは月に戻り、月に暮らすことができるのか。国家プロジェクトだけでなく、世界中の民間企業も月を狙うのが近年の特徴。月居住や月以遠の探査の鍵を握るのは、月に眠るとされる「水」だ。

☆7位 すばる望遠鏡20周年

日本が世界に誇る光学望遠鏡すばるが1999年1月のファーストライトから20周年を迎えた。遠くの銀河の観測では最遠記録を次々と塗り替え、系外惑星や惑星の元となるガス雲(原始惑星系円盤)観測等で活躍。現在は世界に類をみない「広い視野」をもつ観測装置でダークマターの三次元マップ作り等で威力を発揮中。宇宙の加速膨張の謎を解明しようとしている。アメリカのパロマ―望遠鏡は70歳。新しい装置も搭載予定であり、まだまだ現役での活躍に期待。

すばる望遠鏡。大望遠鏡のてっぺん(高さ約22m)に全長3mの巨大なデジカメを搭載。搭載作業を取材したことがあるが、±1.5cmの誤差しか許されない中、命綱をつけたテクニシャンらが慎重に取りつける技術力に驚いた。世界一の性能は人によるところも大きい。(提供:Dr. Hideaki Fujiwara - Subaru Telescope, NAOJ)

☆6位「きぼう」「こうのとり」10周年

「こうのとり」初号機と「きぼう」日本実験棟(上)。2009年9月撮影。(提供:NASA)

世界15か国が参加、建設し2000年から人がくらす「宇宙の家」である国際宇宙ステーション(ISS)に、日本の部屋「きぼう」が完成して今年で10年。そしてISSに物資を届ける補給船「こうのとり」が飛んで10年。それまで有人宇宙船を開発したことのない日本がISS最大の有人施設を作り、大きな事故なく10年間維持・運用している。また「『こうのとり』さえ来なければ安全なのに」とNASAから屈辱的な言葉をかけられた補給船が、米ロの補給船失敗が相次ぐ中、連続成功を重ねる。今ではISSの命綱となるバッテリや大型装置を運び、「こうのとり」なしにISSの存続は不可能だ。「きぼう」や「こうのとり」で培われた技術をぜひ、将来の月探査や日本の有人宇宙船開発につなげてほしい。

☆5位 米民間宇宙船クルードラゴン 無人飛行に成功!

2019年3月8日22時45分(日本時間)、大西洋に着水したクルードラゴン。(提供:SpaceX CC BY-NC 2.0

2011年にスペースシャトルが引退して8年。アメリカから有人宇宙船が飛び立つ日を世界が注目している。3月2日、スペースX社の有人宇宙船クルードラゴンが宇宙服を着たダミー人形などを載せて打ち上げられた。発射翌日にはISSへのドッキングに成功、3月8日にISSを離れ大西洋に着水した。2019年中に有人宇宙飛行を実施予定だったが、開発スケジュールは遅れている。ISSへの足はボーイング社の有人宇宙船スターライナーも担っているが、12月下旬に実施された無人飛行はエンジン噴射のタイミングが遅れ、ISSへのドッキングはできなかった。アメリカの民間有人宇宙船には野口聡一JAXA飛行士が搭乗予定。安全を最優先に開発が進められることを願う。

☆4位 重力波望遠鏡KAGRA完成!まもなく観測スタート

岐阜県神岡の地下200mにある重力波望遠鏡KAGRA。3kmのアーム(真空パイプ)を2本もち、レーザー光を約1000往復させる。(提供:東京大学宇宙線研究所)

現在、世界では3つの重力波望遠鏡がある。米国に2台、欧州(イタリア)に1台。ブラックホール合体や中性子星合体観測という画期的成果をあげている。この重力波望遠鏡ネットワークに、いよいよ日本のKAGRAが加わる。KAGRAが参加することによって、重力波の発生源を初期の数十分の1まで狭めて特定することができる。KAGRAの特徴は地下にあること、レーザー光を反射する鏡を冷やすこと。ブラックホール同士や中性子星同士が合体した時に生じる、時空のわずかな歪みを検出する。わずかな歪みとは「太陽-地球間の距離(約1億5000万km)が水素原子1個分伸び縮みする程度」!自分の熱も雑音になるため、KAGRAにはマイナス253℃に冷やした世界最大(直径22cm)のサファイア鏡が使われている。まもなく観測をスタートする予定だ。

☆3位 民間ロケットMOMO3号機、宇宙に到達!

2019年5月4日5時45分に打ち上がったMOMO3号機。全長9.9m、外径約50cm、重量1.1トン。(提供:インターステラーテクノロジズ)

今年は民間宇宙ベンチャーの躍進が目立った年でもあった。その筆頭は令和になってまもない5月4日(土)、北海道大樹町から打ち上げられたMOMO3号機が高度113.4kmに到達。日本初の民間宇宙ロケットが誕生したこと。成功後のインタビューでインターステラーテクノロジズの稲川貴大社長は「ロケットは成功率で語られる。1回うまくいったからといってその後100%うまくいくわけではない」と気を引き締めた。4号機は打ち上げ64秒後に自動停止、高度100kmに至らなかったが5号機が12月29日に打ち上げ予定だ。成功し、同社本丸である超小型衛星打ち上げロケットZERO開発の追い風になりますように。

☆2位 はやぶさ2 小惑星リュウグウで2回の試料採取に成功!

7月11日、第二回のタッチダウン成功後のはやぶさ2チーム。

そして大活躍したのが小惑星探査機はやぶさ2だ。凸凹だらけで「牙をむく」リュウグウから半径約3mの着陸地を見つけ出し2月に第一回目の着陸、試料採取に成功。4月には人工クレーターを作成し、7月にはリュウグウ内部からの噴出物がある場所への着陸、試料採取に成功したのはほぼ確実。小惑星の地下物質採取は世界初となる。あとは帰還を待つばかりだ。

プロジェクトマネージャーの津田雄一氏は探査の醍醐味をこう語る。「誰も行ったことのない場所に行き、誰もやったことがないことをやる。我々の叡智が増え、遠い将来の人類に貢献できることが幸せ。楽しくてしょうがない」。痺れますねぇ。

☆1位 100年越しの夢、ブラックホールの撮影に成功!

M87中心にある、人類が初めて目にしたブラックホール。南米にあるアルマ望遠鏡など地球上の8つの望遠鏡で地球サイズの電波望遠鏡を実現し観測に成功した(提供:EHT Collaboration)

2019年宇宙の画像ベスト1はやはりこれ。人類が初めて目にしたブラックホール。アインシュタインの一般相対性理論に基づき、その存在が予言されてから100年以上たってようやくこの日が訪れた。

ブラックホールを直接観測する国際プロジェクトEHT(Event Horizon Telescope)日本代表である、国立天文台の本間希樹教授は「天文学者が100年かけて解こうとしてきたジグソーパズルの最後の1ピースが埋まった」と語る。

ただし、宿題も残されている。それは「ジェット」。ブラックホールは何でも吸い込む、「究極ののん兵衛」と本間教授は呼ぶが、物質を吸い込むだけでなく、ジェットとして吐き出されていることが観測されている。ところが今回はジェットが観測できなかった。最大の宿題だ。

また、EHTでは私たちの住む天の川銀河中心のブラックホール、いて座Aスターも観測している。その解析も現在進行中とのこと。将来的にはM87とともに動画にして、物質が吸い込まれる様子や、ジェットとしてどう出ていくかが描き出されるかもしれない。

結局、長くなってしまった(笑)。2020年も宇宙を楽しみましょう。よいお年を!

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