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星空の散歩道

2010年2月12日 vol.51

冬空の多角形を楽しむ

参考:冬のダイアモンド 撮影者:栗田直幸 撮影日時:2002年12月28日 撮影地:山梨県大泉村

参考:冬のダイアモンド
撮影者:栗田直幸/撮影日時:2002年12月28日/撮影地:山梨県大泉村

 冬の夜空には一等星がたくさん輝いている。とりわけ目立つのが南の空のオリオン座で、リゲルとベテルギウスという二つの一等星があるし、その東にあるおおいぬ座のシリウスは全天一の明るさを誇る一等星である。前回、紹介した冬の大三角はベテルギウス、シリウスと、こいぬ座のプロキオンを結んだものだが、少し見方を変えると、さらに巨大な図形が描ける。ベテルギウスを中心に、その西に輝くおうし座のアルデバランからリゲル、シリウス、プロキオン、そしてふたご座のポルックスと順に結び、最後に、この時期の宵の頃なら、ほぼ頭の真上にあるぎょしゃ座の一等星カペラとを結ぶと、巨大な六角形ができあがる。しばしば、これを冬の大六角形、あるいは冬のダイヤモンドなどと呼ぶことがある。見上げると、南のシリウスから、北のカペラまでほぼ夜空の半分も占めようか、というほど大きな造形である。

 ただ、いささか歪んだ、いびつな形であること、またふたご座の一等星ポルックスと並んで輝くカストルが1.6等とほとんどポルックスと同じような明るさであることなど、六角形を結んでいくときに、迷うこともしばしばである。(ただ、形状的にはこのポルックスとカストルとの両方を結んでしまう場合もある。)さらには、この巨大な六角形が、黄道を含んでいることから、明るい惑星が乱すことが多い。季節毎のランドマークで、夏や冬の大三角、秋の四辺形は黄道を跨いでいないので、明るい惑星が形を乱すことはない。黄道を跨ぐのは春の大曲線だけだが、これはなにしろ曲線なので面積を持たないために、惑星が横切っても、余り気にならない。冬のダイヤモンドは、かなりの確率で惑星を含んでしまうのである。実際、今年は火星がかに座で輝いているため、ダイヤモンドに入り込んでいるわけではないが、プロキオンとポルックスを結ぼうとするときに、どうしても目を奪われてしまうのである。その意味で、冬のダイヤモンドが結べれば、冬の星座探しはかなりやりやすくなるだろう。夜空が美しい場所で月明かりがない時には、このダイヤモンドを貫いて流れる淡い冬の天の川を眺めることができるにちがいない。

参考:2月15日午後8時の天頂付近の空の様子。(東京)ステラナビゲーターVer.8/アストロアーツで作成しました。

参考:2月15日午後8時の天頂付近の空の様子。(東京)ステラナビゲーターVer.8/アストロアーツで作成しました。

 ところで、このダイヤの六角形を結べたら、最も北側のカペラに注目して見てほしい。実は、このカペラを頂点に、ダイヤモンド内にある2等星と3等星とをうまく結んでいくと、五角形を結べるはずである。これが、ぎょしゃ座の五角形である。ギリシア神話では、この御者は、アテネの王で、複数の馬を用いた戦争用の馬車を発明したとされている。もともと足の不自由だった王様らしいが、この戦車で大いに戦果を上げたとも伝えられている。五角形は、よく目立つので、日本でも「五角星」あるいは「五つ星」とも呼ばれていた。

 さらに、カペラのそばに注目してみたい。そこには、三つの三等星から成る、小さな二等辺三角形が見つかる。古い星座絵などを見ると、この三角形は御者の手に抱かれた子ヤギのしっぽあたりに相当する。もともとぎょしゃ座は、ギリシアに伝わる以前のバビロニアで生まれたといわれており、その頃には牧人座とされていたための名残だろう。いずれにしろ、小さな二等辺三角形は、均整のとれた形状で、よく目立つ。正三角形に近い冬の大三角とは対称的な形状である。

冬の夜空に輝く六角形、五角形、そして大小ふたつの三角形。透徹な冬の空で、皆さんも、それぞれに多角形の星の並びを辿ってみてほしい。