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半導体・デバイスについて

半導体・デバイスを解説!

生成AIブームの裏側に「光」あり!?

誰でもわかる「光デバイス」

生成AIブームで通信量の増大などから注目を集めている、データセンター。そのデータセンターのパフォーマンスを左右する「光デバイス」のこと、知っていますか?この記事では、光デバイスの基本から、あのハイパースケーラーから引く手あまたの三菱電機の光デバイス「EML」の仕組みまでご紹介します。
教えてくれるのは、三菱電機に入社してから20年以上、光デバイスに携わってきた西田さんです。

Profile

西田 武弘NISHIDA, Takehiro

高周波光デバイス製作所
光デバイス部長

略歴

  • 2002年三菱電機入社
  • 2013年三菱電機 高周波光デバイス製作所 ウエハ製造部(技術課長)
  • 2016年三菱電機 高周波光デバイス製作所 光デバイス部(設計課長)
  • 2021年三菱電機 半導体デバイス・事業本部 技術グループ(グループリーダー)
  • 2024年三菱電機 高周波光デバイス製作所 光デバイス部(次長、2025年から現職)

光デバイスと生成AIの関係

西田さん、こんにちは。まずは「光デバイス」ってそもそも何ですか?

その前に「半導体」のことからお話ししましょう。半導体には、いろいろな種類があります。例えばパワー半導体メモリセンサーCPUに今、話題のGPUなど。
これらはみんな半導体の仲間なのです。その中に「光半導体/光素子」と呼ばれるものがあります。光半導体にもいろいろありますが、一番有名なのはLEDでしょうか。

家の照明などに使われている、あのLEDですか?

そのとおり。光半導体とは、電気を光に変えたり、その反対に光を電気に変えたりする働きをもつ半導体のことなんです。LEDは電気を光に変える半導体。その反対に、光を電気に変える半導体には、太陽光パネルや、デジタルカメラなどに使われるイメージセンサーなどがあります。

光半導体って意外に身近なところで使われているのですね。

そうなのです。そして、光半導体を組み込んだデバイス(装置)のことを「光デバイス」と呼んでいます。私が働いている三菱電機の高周波光デバイス製作所では、いろいろな種類の光デバイスを製造しているのですよ。

LD
Laser Diode
DFB
Distribution feedback
APD
Avalanche Photo Diode
EML
Electro-absorption modulation Laser
FTTH
Fiber To The Home

でも、どうして光デバイスが生成AIやデータセンターと関係があるのですか?

生成AIを働かせるにはとても高性能なサーバーやデータストレージが必要で、それらが格納されているのがデータセンターです。例えば私が生成AIに「柴犬が出てくるアニメを作って」とリクエストを出します。そのリクエストは、「光ファイバー通信」によってデータセンターに伝えられ、生成AIが超高速で様々なデータを参照し、導き出した答えを再び光ファイバー通信で私の元に送ります。このデータセンターまでの情報伝達に加えて、超高速で複数のGPUと接続して演算し、答えを導き出すことに貢献しているのが、「光デバイス」なんです。

光ファイバー通信 基本の「き」

先ほど「光ファイバー通信を担うのが光デバイス」とおっしゃっていましたが、もう少し詳しく教えてください。

もちろんです!じっくりお話ししますね。前提として、デジタルの世界では、すべての情報が「0」と「1」の組み合わせで表現されています。この「0」と「1」という2つの数字を使えば、どんな計算でもできますし、いろんな情報を正確に伝えることができます。まずはこの仕組みを頭の片隅に置いておいていただければと思います。

「0」と「1」で表現されているのですね。

光ファイバー通信でも、この仕組みを利用しています。光ファイバー通信において、光を伝える道の役割を担っているのが「光ファイバー」なのです。その両端には、電気を光に変える「発光素子(レーザーダイオード/LD)」と、光を電気に変える「受光素子(フォトダイオード/PD)」が取り付けられています。この発光素子と受光素子が、情報を送受信するために重要な役割を果たしている「光デバイス」です。

2つの光デバイスと光ファイバーがそろって初めて光ファイバー通信が成り立つのですね。

情報が「0」または「1」の電気信号として送られてくると、発光素子が「0」を消灯、「1」を点灯という光信号に置き換えます。つまり、「0・1」が光の「オフ・オン」に変わります。光ファイバーを通じて伝わった「オフ・オン」という情報を再び「0・1」に戻すのが受光素子の仕事です。

つまり、「0・1」の信号を、光のチカチカに変えて情報をやりとりしているということですか?

そのとおり、意外にシンプルな仕組みなのです。でも、この仕組みを効率よく実現させようとすると、なかなか難しい技術が必要です。

光ファイバー通信はなぜすごい?

光ファイバー通信のほかに電気通信もありますが、その違いを教えてください。

いいところに注目しましたね。たしかに、光ファイバー通信が普及する前は、データのやり取りには主に電気による通信が行われてきました。でも、今はみなさんの家庭や学校、オフィスなどの建物までは光ファイバー通信、室内ではWiFiやLANケーブルを使うのが一般的です。LANケーブルは電気配線ですから、電気通信は今でも使われています。光ファイバー通信のメリットを一度まとめてみましょう。

光ファイバー通信のメリットとは何ですか?

電気に比べて、光のほうが1秒間に伝えられる情報量が多いのです。電気の周波数は数ギガヘルツ(GHz・1ギガヘルツ=1000メガヘルツ)程度ですが、光の周波数(理論値)は、その10万倍にあたる数百テラヘルツ(THz)。この数値が大きいほど、1秒間に多くのデータを伝えることができます。

光は秒速30万キロというのは有名で、1秒間に地球7周半の速さでデータを届けることができるのですが、実は光も電気も同じ電磁波ですので、物理的な信号の速度という意味ではほとんど変わりません。

※ 真空中の速さ。

何となく「光ファイバー通信は大容量」というイメージがありましたが、このことだったのですね。

はい、そのとおりです。次に消費電力が低いことがあります。電気配線の場合、距離が長くなればなるほど電気の流れに抵抗が生じ、熱が発生してしまいます。この熱は通信には不要。つまりエネルギーがムダに使われているのです。それに比べて光ファイバー通信の場合、光を使って情報を送るため、ファイバーの中でほとんど熱を出しませんので、電気通信から光通信に置き換えることで省エネにもなります。

光ファイバー通信は大容量の上に、省エネにもつながるのですね!

おっしゃるとおりです。そして3つ目は安定性です。電気通信は、距離が長くなるほど信号が劣化してしまうので、実用的には数km~数十kmが限界ですが、光ファイバー通信の場合、信号の劣化が非常に小さいので100km程度まで実用が可能です。

光ファイバー通信は長距離にも強いと初めて知りました。

生成AIを支える光デバイス

なぜ、生成AIとやり取りするのに光ファイバー通信が使われるのですか?

とてもいい質問です。従来は皆さんのインターネットと同じように、データセンターまでが光ファイバー通信、内部は電気通信(LANケーブル)といった形でしたが、電気信号は大容量(高周波)になればなるほど、短い距離で信号の劣化が発生してしまうという性質があるのです。このため、近年の高速・大容量化に追従するためには、これまで電気で補えていた比較的短い距離の通信についても光ファイバー通信に置き換える必要が出てきました。

高速化、大容量化に電気通信では対応しきれないのですね。

はい。今では数十メートルの距離においても光ファイバー通信への置き換えが始まっています。こうして計算を行うGPU間の接続を超高速に行うことで、さまざまな並列演算を高速に行い、最善となる答えを導き出しているのです。

なるほど、他にデータセンターで光ファイバー通信に置き換えるメリットはありますか?

光ファイバー通信のメリットでも説明しましたが、低消費電力化も大きなメリットです。「データセンターを1つ建てると発電所も1つ必要」と言われるほど多くの電力を消費しますので、光ファイバー通信化による低消費電力化は今後も重要な課題と言えます。
これらのデータセンターで使われる光デバイスが「EML」であり、ここからは、データセンター向け光デバイスで世界トップシェアとなっている三菱電機が誇る光デバイス「EML」についてお話しをさせてください。

※ データセンター向けEMLにおいて(23年度実績、当社調べ)

光デバイス「EML」の仕組み

データセンターには大量のサーバーが格納されていて、それぞれのサーバーは光ファイバーでつながれ、情報のやりとりをしています。光ファイバーの付け根には、「光トランシーバー」という部品があり、先ほどお話しした発光素子や受光素子という光デバイスは、この中に組み込まれています。

光素子や発光素子という光デバイスは、とても小さいのですね。

そうなのです。光デバイスにもいろいろなタイプがありますが、今回お話したいのは、三菱電機が1993年に開発を始め、1999年に発売した「EML(電界吸収型変調器付きレーザー)」についてです。大きさは1ミリ以下。このデバイスが画期的なのは、この中で2つの機能を両立させている点です。

1ミリ以下の中に2つの機能!?どういうことですか?

EMLは2つのパーツに分かれています。後方にあるのが「DFBレーザー」になります。これは一般的な発光素子で、入ってきた電気信号を光信号に変える働きをしています。そして前方にあるのが「光変調器部」です。ここは光のオン・オフに関わる部分になります。

この2つを組み合わせることで、どんなメリットがあるのですか?

DFBレーザーの場合、光をオン・オフするためには、いちいち電源を入れたり切ったりしなければなりません。それだとオン・オフに時間がかかりますし、スイッチを入れてから点灯するまでにもわずかに時間がかかりますので、せっかくの光ファイバー通信のスピードが落ちてしまうのです。

なるほど。電気スタンドを想像すると、イメージしやすいですね。

そこで私たち三菱電機は、光変調器部を組み合わせることにしました。光変調器部はシャッターのようなもので、光の前に差し込んだり外したりすることで、電源をオン・オフしたのと同じような効果を得られます。しかも、電源をオン・オフするより時間のムダがありません。

それを1ミリ以下の中で実現しているわけですよね。大変そう…。

よいところに気づいてくれました。図の断面図を見てもらえるとわかりますが、DFBレーザーと光変調器部は構造が全く違います。しかも、きっちり一直線につなげて、光をまっすぐ発信するには非常に高い技術が求められました。それでも実現できたのは、三菱電機が長年培ってきた経験と技術力があったからなのです。私たちの大きな強みと言ってもいいかもしれませんね。

簡単にはできないのですね。生成AIブームで通信量が増え、データセンターも増え続ければ、ますますEMLが大人気になるのでは?

データセンターの数は、2018年には400施設でしたが、2030年には2,000から3,000施設に増えるといわれています。それに従ってデータセンター向け光デバイス市場も大幅に伸びる見込みですから、大人気になるかもしれませんね(笑)。もちろん、三菱電機は光デバイスの生産能力を増強して、需要に備えていきます。

生成AIの活用によって今後データセンターがさらに高性能化され、ますます便利な社会になっていくと聞きますが、光デバイスはどうなるのでしょうか?

鋭い質問ですね。データセンター内で使用されているGPUなどの今話題の「AI半導体」の処理速度が速くなり、処理するデータ容量も増えてきます。「AI半導体」だけでなく、データを伝達する「光デバイス」も「AI半導体」にあわせて進化しなければなりません。データセンター業界トップ企業との緊密な関係性を築きながら、開発を進められるのも三菱電機の強みです。

基本から製品のことまで、よくわかりました。生成AIの裏側で活躍する「光デバイス」の重要性と、その仕事のやりがいを感じることができました。今日はありがとうございました。

光デバイスには今日お話しした光ファイバー通信の他にもたくさんの可能性があります。これからの社会を支える製品なので、本当にやりがいのある仕事ですよ。こちらこそ、ありがとうございました。

用語集

光デバイス

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