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ライター 林 公代 Kimiyo Hayashiライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

福井発宇宙行—ISTS福井レポート① 活躍の舞台は、月!

今、福井が宇宙で盛り上がっている!2020年には自治体初の福井県民衛星が打ち上げられる予定。さらに今年から来年打ち上げ予定のガンダム衛星やルワンダの超小型衛星など、東京大学が開発する多数の超小型衛星には、福井の技術が生かされている。福井県の技術力について東京大学の中須賀真一教授は「経験豊富で学生が学ぶ点が多い」と高評価(詳しくは次回)。福井出身の私としては本当にうれしい。

宇宙×福井を推進する福井県で6月半ば、宇宙関連で国内最大の国際会議、第32回ISTS(宇宙技術および科学の国際シンポジウム)が開催された。国内外から1000人を超える宇宙関係者が集結!ISTS福井を取材して得た注目情報を2回に分けてレポートします。

将来は宇宙飛行士に。戦争を繰り返してはならない
—NASA派遣中学生発表

6月15日、ISTS関連イベントとして開かれた「宇宙フェスinふくい」で感心したのはNASAに派遣された中学生の報告会。2019年3月に約1週間でNASAケネディ宇宙センター(KSC)見学、宇宙関連企業でのワークショップ、NASA職員や宇宙飛行士との懇談会、ワシントンD.C.ではJAXAワシントンオフィス訪問や航空宇宙博物館見学など非常に中身の濃い派遣交流団だったようだ。KSCでは今注目のスペースXの発射台見学、KSCと航空宇宙博物館別館でスペースシャトル・アトランティス号とディスカバリー号と2つも本物を間近で見ている!なんて羨ましいのだろう。。。

NASA派遣事業参加中学生の成果発表会で。角井健悟さんの発表。(提供:福井県)

約50人の応募から厳しい選考を経て選ばれた参加者10人の発表は素晴らしかった。たとえば角井健悟さんは以前から宇宙飛行士になりたいという夢を持っていた。NASA元宇宙飛行士ウィンストン・スコットさんにアドバイスを求めたところ、答えは「エデュケイション」。宇宙飛行士になってからも勉強の連続だと聞いた角井さんは帰国後毎日、宇宙新聞を作って家のトイレに貼っているという。

また人口の約3割がNASA関連施設の職員であり、「宇宙都市USA」の標語をもつKSC近郊のタイタスビル市への表敬訪問について西川涼子さんは「今まさに宇宙産業に力を入れる福井県が参考にできる点が多くあるのでは」と語り、航空宇宙博物館でスペースシャトルの実機と共に広島に原爆被害をもたらしたB29爆撃機(エノラゲイ)を見た鈴木花奏さんは、「戦争を忘れてはいけないし、2度としてはいけない」等々。日本ではなかなかできない貴重な経験をしたことで、将来の目標がよりはっきりした学生さんも多かったようだ。感性豊かな彼ら彼女たちが今回の派遣から得た夢や目標を、大人たちは全力で支援し育まなければならないと強く感じた。

では、彼ら彼女らの夢は今後、具体的にどこで花開くのか。直近の目標は、月だ。

今、月探査が熱い!

今年7月はアポロ月着陸からちょうど50周年。そして人類は再び月を目指そうとしている。6月16日には将来の月面探査等について、JAXAの専門家3人によるトークショーが開催された。 JAXA国際宇宙探査センター長の佐々木宏氏によれば「2019年から5年間で十数機の月探査機が打ち上げられる予定。今、月探査が熱い」とのこと。アメリカが5機、日本は2機、中国が3機打ち上げる計画だ。

注目は2021年度に打ち上げ予定の、日本の小型月着陸実証機SLIM。おそらく世界初の着陸方式を実現予定であり、とても興味深い。

身長2.4m、肩幅2.7m、厚み1.7m、体重210g(着陸時)身長より肩幅の方が大きい!
パネル一番下の着陸方式に注目!

過去に月に着陸したアポロ宇宙船などの着陸機は「降りやすいところに」降りていた。その結果、着陸精度(狙った場所に降りる精度)は数km〜十数kmだった。一方、SLIMは着陸精度100m。「あそこにあるクレーターの隣のあの岩石が面白い」という科学者の要望に応えて、狙った場所に降りることが可能になる。

100mの着陸精度と聞くと、そんなに難しくないのでは?という印象を持たれるかもしれない。先日、小惑星リュウグウに着陸した小惑星探査機は数m四方のところに着陸しているのだから。小惑星は小さいためその重力は微小重力に近く、ゆっくり降りることが可能だが、月の重力は地球の約6分の1と圧倒的に大きいために、着陸は非常に難しいのだという。着陸場所を決めたら20分で一気にブレーキをかけて降りて行き、ずれても引き返せない。「例えれば時速100〜200kmで走っている車が、急ブレーキをかけて駐車場の狙った場所にぴたっと停めるのに近い技術が必須」とSLIMのプロジェクトマネージャーを務めるJAXA坂井真一郎氏は言う。

また、月にカーナビはない。自分の位置や目的地をどう知るかと言えば、車の自動運転を先取りしたようなシステムを使うという。カメラで月面のクレーターを撮影しながら、搭載している地図情報と画像照合し、自分の位置を知る。着陸時は地上から遠隔操作をする時間的余裕がないため、自分自身で判断しておりる。

着陸方式は非常にユニークな「2段階着陸方式」をとる。着陸予定地は月の赤道の南側にある「神酒の海」(みきのうみ)。月内部のマントルから出た石があるとみられ科学者の興味関心が高い場所だが、問題は着陸予定地が約15度の斜面であること。そこでSLIMは着陸前にあえて機体を傾けて5本足のうち後方の1本の主脚で接地。その後、姿勢を前に倒し残りの補助脚を接地させて腹ばいになる。これなら斜面でも安全に着陸できる。

日本とインドが国際協力で計画中の月極域探査ミッションを説明するJAXA佐々木宏氏。

現在、国際協力で月周辺に周回ステーションを作り、2024年には有人月着陸を実施することが米政府により発表されている。日本も国際月探査に参加する方向だ。その頃焦点となるのは「月に水があるかどうか」。水があれば、分解して燃料に使ったり宇宙飛行士の生活に使ったり活動の幅が広がる。月の水は極域の永久日影領域にあると見られるが、その領域で着陸できるエリアは100m程度しかない。ピンポイント着陸が必須になるのだ。

チョコレートのような燃料?

発掘した「お宝」展示品も紹介しよう。ISTS組織委員長であるJAXA森田泰弘教授から「今、新しい固体ロケット燃料を北海道の企業とJAXAが共同研究しているから是非見て!」と伺いさっそく見学。北海道の植松電機と研究開発しているのは、いわば、チョコレートのような燃料LTPだ。

北海道赤平市にある植松電機の宮越愛斗さんの説明によると、「今までの固体燃料ロケットは熱をかけて燃料を固めると元に戻せませんでした。固めた後の検査で燃料内にひびが見つかると異常燃焼して爆発する恐れがあるので、使えなかった。一方新しい燃料は燃結剤に熱可塑性樹脂を使っています。一回燃料を成型した後でひびわれがみつかったら、また溶かして温めて成型し直すことができるんです。チョコレートみたいなイメージですね」とのこと。

さらに、従来は大きな固体燃料を一回で作るために大規模な設備が必要だったが、LTPは小さい設備で製造できるためコストダウンが見込めるそう。2019年3月には2号機の飛翔実験を実施、高度1000m程度まで到達し、音速に近い速度を達成。パラシュートで回収に成功した。森田先生は初号機の打ち上げ実験に立ち会い涙が出るほど感動したそう。「打ち上げの感動はロケットの大小に関係ないんだと実感しました」と語る。

チョコレートのような燃料を搭載し飛行試験に成功した実機LTP-X-02と植松電機の宮越さん。

「今後5年間で高度50kmまで上げようと思っていますが、先生方からは100kmに上げなさいよと圧をじわじわ受けています」(宮越さん)北の大地の挑戦に注目だ。

JAXAの月・惑星探査ローバー「健気(けなげ)」を見学する若狭高校の皆さん。宇宙日本食に認証されたサバ缶の開発メンバーでジュニアISTSで発表を行った。

古川飛行士からのメッセージ

そして、古川聡宇宙飛行士の講演会は雨の中、県民ホールが約500人の参加者で満員になる盛況ぶり。古川飛行士から宇宙飛行士訓練や宇宙飛行、宇宙での研究開発の説明後、質疑応答では質問の手が上がる上がる!その一部を紹介。

Q:種子島から宇宙に飛び立ちたいですが、そういう日は近いですか?

古川飛行士:種子島から日本の宇宙船で飛び立つのは我々の夢です。(まだ日本から有人宇宙船が打ちあがった実績はないですし)そのような計画はありませんが、将来そうなるといいですね。是非種子島から行ってね。

Q:宇宙食の中で好きだったものは?

古川飛行士:サバの味噌煮が美味しかったです。海外の宇宙飛行士にプレゼントすると喜んでいました。福井県の若狭高校の生徒さんが作ったサバの缶詰が宇宙日本食に認証されましたね。(参照:宇宙日本食サバ缶、開発の現場を取材!—高校生と熱血教師の12年)1年半の保存期間をクリアするのは大変だったと思います。野口飛行士や星出飛行士たちもきっと楽しみに食べて、宇宙飛行士の活力になると思います。

Q:宇宙から帰って何日歩けないの?

古川飛行士:ゆっくりならその日のうちに歩けるし1週間から10日で車の運転もできるようになります。でも、ちょっと飛びあがれば天井に届く気がするし、崖からジャンプしても浮いていられるような気がするのでとても危険です(笑)

Q:宇宙飛行士の訓練で辛くてやめようと思ったことは?

古川飛行士:やめようとは思わなかったけれど、ロシアで冬に行われたサバイバル訓練では斧やナイフで木を切ってテントを作り、体感温度がマイナス30度になる寒さの中で48時間過ごして、鍛えられました。

最後に古川飛行士からメッセージ。
① 周りのことに興味をもつこと
② 興味を持ったものの中から、夢をもつこと
③ 夢に向かって一歩踏み出すこと

宇宙から見て感動したのは地球の美しさ。「一つの生き物のように見えて人間もその一部と感じました」

次回は夢に向かって踏み出す福井×人工衛星について詳しくレポートします。

県民衛星の開発メンバーの皆さん。東大とがっつり組んだ開発経緯や今後については次回じっくりと。
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