IEEEフェロー
高橋 徹
アンテナ分野
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IEEEフェロー
アンテナ分野
IEEEフェローのご紹介
高橋 徹氏は、衛星通信およびレーダーシステム向けフェーズドアレイアンテナの発展、品質向上のために、キャリブレーション技術と直交偏波共用化技術に関する革新的な技術の開発を主導してきました。これら技術の独自性と三菱電機製品を通じた社会への貢献が評価され、2026年、IEEEフェローに認定されました。
キャリブレーション技術においては、アレーを構成するすべてのアンテナ素子を高精度に同期させることで、フェーズドアレー全体を単一アンテナとして動作させる手法を確立しました。キャリブレーション時間の大幅な短縮と精度向上を実現するとともに、誤差要因を理論的に解析することで、フェーズドアレーアンテナの性能向上に大きく貢献しました。
一方、直交偏波共用化技術に関しては、アンテナ素子の給電点を中心軸からオフセットさせることで、交差偏波(所望の偏波と直交する偏波成分)を低減できることを新たに発見しました。さらに、その最適なオフセット条件を理論的に導出することにも成功しています。この「給電点摂動(Feed Point Perturbation)」と呼ぶ独自のアプローチは、構造がシンプルでありながら極めて高い効果を発揮する設計手法です。
開発したキャリブレーション技術は、三菱電機におけるフェーズドアレーアンテナの発展に寄与し、とりわけビームフォーミングの性能向上に大きく貢献してきました。
また、直交偏波共用化技術は、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」および先進レーダ衛星「だいち4号」で実用化され、搭載された合成開口レーダ(SAR)におけるフルポラリメトリ観測の実現に貢献しています。
これらの技術は、衛星通信容量の拡大や、より多様で高度なレーダー観測を可能にするものであり、安全・安心な社会の実現に貢献する技術基盤となっています。
高橋氏は「『IEEEフェロー』という称号は、私個人にとっての栄誉であるだけでなく、これまで共に仕事をしてきたすべての仲間にとっての栄誉であると考えています。私が開発してきた技術は、鎌倉製作所および電子通信システム製作所に所属する多くのエンジニアの皆さんと協働する中で生み出されました。また、これらの技術が実用化に至ったのは、現場で尽力されたエンジニアの多大な努力があってこそです。
その意味で、この成果は決して私一人のものではなく、共に技術を磨き上げ、製品として世に送り出してきた仲間全員の功績であると考えています。この場を借りて、心より感謝の意を表したいと思います」と話します。
さらに「今後は、アンテナ、電波伝搬、レーダー、無線通信などを含む電波システム分野における専門性を、他分野のさまざまな技術を取り込みながら、継続的に拡張していきたいと考えています。また、Chief Expertとして、若手研究者の育成にも積極的に取り組み、できる限り多くの次世代を担うトップレベルの研究者を育てていくことを目標としています。自身の研究活動と人材育成の双方を通じて、三菱電機の研究開発力のさらなる高度化に貢献していきたいと考えています。」と今後の目標について語りました。
早稲田大学の大学院生であった当時、私は電磁界理論に強い関心を持ち、この分野に関連する研究開発に携わりたいと考えていました。
その中で、三菱電機が電磁界理論の応用分野であるアンテナ技術において高い評価と実績を持ち、当該分野をリードするトップクラスの企業であることを知りました。こうした背景から、自らの専門性を生かし、最先端の研究開発に取り組める環境であると考え、三菱電機への入社を決意しました。
三菱電機には、世界をリードする研究者が数多く在籍しているだけでなく、多様な分野にわたる高い技術力が蓄積されています。こうしたトップレベルの研究者と共に研究開発に取り組むことは、私自身の研究開発力の向上に大きく寄与してきました。
また、三菱電機には事業部門にも優れた技術力を持つエンジニアが数多く在籍しています。そうしたエンジニアとの議論を重ねることで、研究成果の完成度や実用性が高まり、研究開発の質を一段と高めることができました。
このような充実した技術基盤と人材に支えられた環境の中で研究開発を進めてこられたことを、非常に幸運であったと感じています。
常に創意工夫を心掛け、高い目標を掲げ続けること、そして学び続ける姿勢を忘れないことが重要です。それらを実践していけば、近い将来、必ず良い成果につながるはずです。
私にとって「研究」とは、新しい常識を生み出すための第一歩です。
情報技術総合研究所
未来社会創造領域 Chief Expert
高橋 徹
1994年、三菱電機株式会社入社。
レーダーや無線通信システム向けフェーズドアレーアンテナの研究開発に従事。2004~2007年には鎌倉製作所で衛星用アンテナの開発、2018~2021年には情報技術総合研究所で高周波回路や半導体パッケージング技術の研究開発を担当。近年はレーダーや無線データリンク、衛星測位システムなどの電波システムにも注力。現在、IEICE通信ソサイエティ会長、IEEE AP-S Tokyo Chapter Chair