ビジネスコラム
杉本昌隆氏ベストよりベターを選ぶ。それも棋士としての矜持(きょうじ)
2025年4月公開【全4回】
今回は、50歳を過ぎて昇級を果たすなど、あくなき向上心で将棋に取り組む棋士・杉本昌隆八段のご登場です。杉本棋士の名を将棋ファン以外にも広く知らしめたのが、稀代の天才棋士・藤井聡太七冠の師であること。自身を高め続ける心の持ち方と、人材の育成に向けた信念などについて、お話を伺いました。

要旨
2016年、将棋界に彗星の如く現れた藤井聡太七冠(当時四段)。その活躍は「藤井フィーバー」と称され、日本中を将棋に振り向かせました。そんな将棋界のニューヒーローとともに、一躍脚光を浴びた棋士がいます。藤井七冠の育ての親、杉本昌隆棋士です。30代前半という異例の若さで弟子を取り、棋士×師匠の二刀流で活躍する杉本棋士。数多くの弟子を育ててきた経験から、藤井少年が発した一言を聞いただけで「あの羽生九段にも劣らない才能の持ち主だ」と直感したといいます。棋士ならではの先を読むためのコツや、自身の研鑽と後進の育成の両立、さらには、将棋界でも当たり前のように活用されているAIとの上手な付き合い方などについて、杉本棋士の視点でお届けします。
杉本昌隆(すぎもと・まさたか)
1968年、愛知県名古屋市出身。8歳のころ父との遊びの中で将棋と出会い、数多くの駒の立体的な動きに魅了され本格的にのめり込む。1980年、奨励会へ入会。1990年、棋士としてデビュー。本格派振り飛車党で、とくに相振り飛車については棋界きっての研究家として知られている。2019年3月、第77期順位戦C級1組で9勝1敗の好成績でB級2組へ復帰昇級。50歳の棋⼠のB級2組への昇級は史上4位の年長記録。杉本昌隆将棋研究室を主宰し後進の育成にも力を注ぐ。門下に藤井聡太七冠(2025年2月現在)、室田伊緒女流三段らがいる。トーナメントプロであると同時に執筆活動、テレビ出演、講演等も積極的に行う。