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これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』 これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』

カーボンニュートラル カーボンニュートラル

カーボンは「炭素」、ニュートラルは「中立」。カーボンニュートラルは二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出を減らしつつ、森林などによる吸収量を増やすことにより、温室効果ガスの排出量が全体として実質ゼロになることになることを意味しています。

炭素は化石燃料の利用や、生物の呼吸、有機物の燃焼、腐敗などによってCO2の形で大気中に放出されていますが、一方で植物は光合成によってCO2を吸収し、海もCO2を吸収しています。これらの排出量と吸収量が等しく、元のバランスが変わらないようにすることが「カーボンニュートラル」です。

排出と吸収のバランスがとれていることは、地球の持続可能性(サステナビリティ)につながりますが、産業革命後、人間が化石燃料を使うことによって固定されていた炭素が大量に大気に放出されたため、吸収量より排出量が上回り、大気の炭素濃度が上昇し、これが地球温暖化を引き起こす原因になっています。

特に1950年以降CO2排出量は急速に増加し、温度上昇に伴い、自然災害や海面上昇、生物の絶滅など危機的な事象を引き起こしています。そのため国際社会は協力して、産業革命前と比較して、地球の平均気温の上昇を2.0℃以下、できれば1.5℃未満に抑える努力をする「パリ協定」を締結しました。この実現のために国連は、2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを各国に求めています。

*この記事は2021年9月の情報を元に掲載しています。

平均気温の推移グラフ

CO2の排出量は1950年以降、急激に増加。環境省
COOL CHOICEより
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/

2050年カーボンニュートラルを目指す日本は何をするの? 2050年カーボンニュートラルを目指す日本は何をするの?

カーボンニュートラルへの国際的な要請に応えるため、2020年10月に日本は菅義偉内閣総理大臣が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。

世界で2050年カーボンニュートラルにコミットしている国は120を超え、世界全体のCO2排出量に占める割合は4割弱を占めます。

2050年カーボンニュートラルに向けては、温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取組が特に重要とされています。そのためCO2を大量に排出する石炭火力発電所の削減や再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入することなどが求められています。

そのため政府は、地域の豊富な再生可能エネルギーを活用し、それにより地域内で経済を循環させ、地域の課題を合わせて解決する「地域脱炭素」計画や、さまざまな脱炭素を進める技術を開発する2兆円規模の「脱炭素基金」(グリーンイノベーション基金)など、カーボンニュートラルへの道筋を経済成長へと結びつける政策を次々と打ち出しています。

2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けては、2030年までの期間が非常に重要であり、今の社会のインフラや仕組み、そして私たちのライフスタイルまでを早期に2050年ゼロ目標と合致するものにしていくことが求められています。

住宅・商業・ビジネスエリア

自然エリア

地域脱炭素のイメージ 「国・地方脱炭素実現会議」地域脱炭素ロードマップ(案)より
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/dai3/siryou1-2.pdf

カーボンニュートラル実現に向けて先頭を走る欧州の計画とは?​ カーボンニュートラル実現に向けて先頭を走る欧州の計画とは?​

欧州は、日本と同様に2050年カーボンニュートラルを目指していますが、エネルギー効率化や再生可能エネルギーの導入、電気自動車への移行などによってCO2排出が2020年にはすでに目標を上回る23%の削減を達成するなど、着実に成果を出しています。

目標を達成するための道しるべとなっているのが、欧州委員会が2019年12月に公表した「欧州グリーンディール」です。これは2050年までにカーボンニュートラルを達成するためのロードマップで、クリーンで循環型の経済へ移行するとともに、生物多様性を回復させ、地球上の貴重な資源を有効に活用する計画です。

このロードマップでは2030年までに温室効果ガスの排出量を最低でもマイナス55%にするという中期目標を設定し、そのため輸送、エネルギー、農業、建築などのさまざまな分野での施策を提案しています。

中でも建築物は、消費エネルギーの4割を占めているとして、断熱や再生可能エネルギーの活用、高効率の製品や機器(LED照明など)、エネルギー消費を抑制する建物・機器管理システムを普及させようとしています。

エネルギーについてはエネルギー効率を向上させ、再生可能エネルギーをさらに拡大させることを目指します。特に注力する技術は、洋上風力発電、電気自動車、グリーン水素(再生可能エネルギーを利用して水を電気分解する方法で製造する水素)をあげています。

EU(欧州連合)は2021年7月にこれをさらに進化させた「欧州グリーンディール」の包括案を発表しました。それによると、ガソリンやディーゼルなどの内燃機関エンジン車の新車販売を2035年に事実上禁止するほか、域外から輸入する炭素含有量の多い製品などに対する国境炭素税を導入するなど、より具体的で厳しい脱炭素政策へシフトしています。

カーボンニュートラルに向けて先頭を行く欧州は、実効性のある計画を立て、確実にカーボンニュートラルへ向かう道筋を歩んでいます。

デンマーク首都コペンハーゲン沿岸の洋上風力発電。

デンマーク首都コペンハーゲン沿岸の洋上風力発電。
コペンハーゲンは世界に先駆けて2025年カーボンニュートラル都市となることを目指している。

カーボンニュートラルを脅かす永久凍土からの炭素放出 カーボンニュートラルを脅かす永久凍土からの炭素放出

シベリアからアラスカ、極地カナダへと広範囲に分布する永久凍土は大気中のほぼ2倍の炭素(CO2)が含まれる、いわば炭素の貯蔵庫のような場所。これまで永久凍土では、非常に長い間、凍った土の中で有機物が閉じ込められ地上に放出されない状態が続いていました。

しかし、このところの地球温暖化の影響で永久凍土が溶け、閉じ込められてきた有機物が分解されてメタンやCO2が大気中に大量に放出されつつあります。2020年夏に38℃という北極圏で過去最高となる気温が記録されるなど、シベリアは、他の地域の2倍の速度で温暖化が進んでいるのです。

このような急速な温暖化により、永久凍土が溶けて巨大なクレーターが出現したり(下記写真参照)、森林火災も頻繁に起こるようになってきています。また永久凍土が融解することで土壌が不安定になって石油タンクが崩壊したり、道路などのインフラが使えなくなり村そのものを移転しなければならないなど人々の生活にも大きな影響を与えています。

何より、CO2に加えて非常に大きな温室効果のあるメタンが流出することで、科学者らは地球温暖化をさらに加速させる負のループに陥ることを杞憂しています。

シベリアのツンドラ地帯ではここ数年、温度上昇によって巨大なクレーターがいくつも出現している。

シベリアのツンドラ地帯ではここ数年、温度上昇によって巨大なクレーターがいくつも出現している。