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これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』 これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』

生物多様性 生物多様性

生きものたちの豊かな個性と多様性、そしてそのつながりのことを言います。地球上の生きものは約40億年という長い歴史の中で、さまざまな環境に適応して進化し、分化・絶滅を繰り返し、現在3,000万種の多様な生物が生きています。これらの生命はそれぞれに個性があり、全て直接的に、間接的に関わり合って生きています。

私たちの暮らしは、食料や水、酸素など、生態系からの恵み(生態系サービス)によって支えられています。たとえば、果物や野菜をいただくためには、ミツバチや昆虫によって受粉して実がならないと食べられません。ミツバチは花の蜜や花粉を食べます。そのミツバチはカマキリ、蜘蛛(クモ)、カエルなどに食べられ、それらは鳥や動物に食べられます。人間ももちろん、はちみつや野菜、動物をいただきます。こういった食べたり食べられたりする生物のつながりを「食物連鎖(しょくもつれんさ)」と言い、すべての生物が壮大な生命の環の中にあります。

つまり、ひとつの生物種が消えるということは、その生物とつながる多くの生きものの命も危くなるということを意味します。つまり、生物の多様性を保全することは、わたしたち自身を守ることでもあるのです。

イラスト:食物連鎖

「人間だけでは生きていけない」という当たり前だけれど忘れがちな事実 「人間だけでは生きていけない」という当たり前だけれど忘れがちな事実

酸素や水の供給、食べ物から木材、医薬品、エネルギーまで、人間は自然の恵みがあるからこそ生きていける存在です。スーパーマーケットで売られている食品もすべて自然の産物です。森がなければ二酸化炭素を吸収できず、酸素も作り出せず、木材の利用もできません。このように私たちの命と暮らしの基盤となっている生物多様性ですが、残念なことに恩恵を受けている人間の活動によって損なわれつつあるのも事実です。

恐竜の大量絶滅があった白亜紀末など、これまでも自然現象や隕石などの外的な影響で起こった絶滅はありましたが、人間の活動によるものはありません。そして危惧すべきはその絶滅の速度が非常に速いということです。白亜紀など過去に起こった絶滅が年に0.001種程度だったものが、1975年以降、年に40,000種*1とかつてない速さで上昇し続けています。

陸地の75%が人間活動によって開発され、約100万種の動植物が絶滅の危機にあるとの報告を、2019年に世界中の専門家が参加する生物多様性に関する組織*2が出しています。近年の温暖化や気候変動も加わってその速度は増し、地球は6度目の大量絶滅期を迎え、人類を含む全ての種が危機にさらされていると警告を発する研究グループ*3もいます。

*1: 国立環境研究所調べ

*2: 「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)

*3: 英リーズ大学のアレキサンダー・ダンヒル教授ら

グラフ:種の絶滅速度

生物多様性を脅かす4つの原因って?-シロクマの場合 生物多様性を脅かす4つの原因って?-シロクマの場合

前項で見たように、生物多様性がここ100年で急激に失われています。その主な原因は
(1)地球温暖化(気候変動)
(2)自然環境の破壊と汚染
(3)資源の過剰な利用
(4)外来生物
と言われています。

地球温暖化の影響について北極圏に住むシロクマで見てみましょう。シロクマは、主な食糧源としているアザラシを氷の上から狙います。それが温暖化の影響で北極の氷は40年前と比べて3分の2と*1なり、氷が溶けだす時期も早まっています。氷が少なくなったことで氷から氷へ泳ぐ距離も長くなり、体力も消耗します。十分な栄養がとれないシロクマは子供を産む数も減少し、たとえ産んだとしても母熊の母乳が足りず育たないという事態も起きています。また、悲しいことですが、最近では飢餓のため死んでしまうシロクマも増えています。

現在地球上に生存するシロクマはわずか26,000頭。今のペースで温暖化が進むと、夏の海氷面積は21世紀中頃までに消失し、個体数が今の3分の1になる*2と予測する科学者もいます。シロクマが絶滅する危機がまさに目の前に迫っているのです。

また、(4)の「外来生物」は、もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって持ち込まれた生物種のことを指します。たとえば子供たちも良く知っているアメリカザリガニは、1920年代に食用として試験的に持ち込まれて以来、数を増やし、水草や稲の苗を食べたり、希少な水生昆虫なども食べてしまい、大きな被害をもたらしています。身近な生物でも元々あった生態系に大きな影響を与える外来生物は自然に放したりしないよう注意が必要なのです。

*1: ナショナルジオグラフィック 衛星写真より

*2: 英国王立協会専門誌バイオロジー・レターズ

写真:シロクマ

溶けだした氷にやっとたどり着いたシロクマの親子

マウンテンゴリラの生存に私たちが使う携帯電話が関わっている? マウンテンゴリラの生存に私たちが使う携帯電話が関わっている?

私たちが便利に使っている携帯電話も実は生物多様性に影響していることをご存知でしょうか。携帯電話やパソコンに使われている希少な金属「レアメタル」は、世界のさまざまな場所で採集されて製造に使われます。

その中のひとつ、「タンタル*1」が採れる場所の一つが、アフリカのコンゴ、ルワンダの熱帯雨林にあります。絶滅危惧種のマウンテンゴリラが暮らすこの森で、彼らが間もなく絶滅する恐れがあるとする報告書を国連が2010年に発表しました。

ここでは希少な金属「タンタル」を巡ってゲリラ組織などが森を切り倒して採掘を行ない、度重なる紛争が起き、ゴリラの生息地の森が破壊されると同時にゴリラが密猟される事件も発生、マウンテンゴリラは絶滅の危険性が最も高い種類に分類されました。

しかし、近年の密猟対策や獣医師の活動などにより保護が進み、2018年には1,000頭を超えるまでに回復しました。

遠い世界だと思っていたゴリラの生存と私たちの暮らしはつながっています。パソコンや携帯電話などいらなくなった機種も廃棄せず、しっかりリサイクルすることがマウンテンゴリラの命を守ることにつながるのです。

*1: レアメタルの一種。携帯電話やノートパソコンの小型コンデンサーの材料として使われるほか、ゲーム機用の需要も高まり、高値で取引されている。