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これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』 これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』

ESG ESG

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもので、現在、これらの3つの要素を考慮している企業への投資「ESG投資」が国内外で急拡大していることから注目が集まっています。

これまで投資家が企業を評価する上で主に重視してきたのは企業の業績などの財務情報でしたが、企業の安定的かつ長期的な成長には、「環境」や「社会」に関する問題への取り組み、組織などの統治を意味する「ガバナンス」が影響しているという考えが広まり、非財務の要素であるESGを“企業を見極める物差し”に加えていこうという方向に変わってきています。

たとえば、ある企業が短期的に利益を上げたとしてもそれが環境に負荷を与えたり、児童労働などを強いるものであれば、将来的なリスクを抱えていると判断されます。これに対し、環境、社会、企業統治に重きを置いて経営されている企業は社会的意義があり、長期的な安定と成長が見込めるととらえられます。ESG投資は欧州、米国で先行して拡大してきましたが、日本でもここ数年で300%以上の伸びを示しています。

*この記事は2021年1月の情報を元に掲載しています。

ESGそれぞれの具体的な要素はどんなこと? ESGそれぞれの具体的な要素はどんなこと?

財務状況だけでは見えにくい将来の企業価値を見通す上で、ESGに対するスタンスや取り組みが重要視されていますが、具体的にこの3つに含まれる課題には以下のようなものが考えられます。

Environment「環境」

気候変動対策に取り組めているか、資源や廃棄物管理をしっかりやっているか、脱プラスチックを推進しているか、
生物多様性に寄与しているかなど環境への取り組みが問われます。特に気候変動対策ではCO2を多量に排出する石炭火力などの化石燃料を利用する事業からは資金を引き揚げる動き(ダイベストメント)が加速しています。

日本でも集中豪雨や台風の大型化、熱中症の拡大など気候危機が顕在化し、日本政府は2020年10月「気候非常事態宣言」を出しました。これらの気候変動への対応の一環として政府は2020年、「2050年までに温室ガス実質ゼロ」という目標を掲げたこともあり、 企業がCO2削減や再生可能エネルギーの利用推進などの対策を実行しているかが、今後これまで以上に問われることになります。

Social「社会」

事業を通じた地域社会への貢献や、社会課題についての対応をしているかが企業や組織にも問われています。また、ダイバーシティ(多様性)を推進しているか、児童労働をさせていないかなどの労働環境もここに含まれます。たとえば少子高齢化が深刻な地方を活性化したり、高齢者の移動手段や医療機会を提供するなど、さまざまな社会課題に対して企業がどのように取り組んでいるか、働き方改革を推進しているかは「S」の観点です。また、最近では新型コロナウイルス感染症への対策なども含まれます。

Governance「ガバナンス」

粉飾決算がないか、ハラスメントがないかなど、法律や企業倫理を守ること(コンプライアンス)に関わることがテーマとなります。業績悪化につながる不祥事を回避し、リスク管理をするための情報公開をしっかり行い、企業統治が適切に行われているかを判断します。「G」は企業経営の基礎的な課題です。

ESGの関係性を表したイラスト

ESGが注目される理由とは? ESGが注目される理由とは?

ESG投資が大幅に拡大し、企業経営でもESGが注目される背景にはどのようなことがあるのでしょうか。

1.企業価値の向上につながる

企業経営においても「サステナビリティ」(持続可能性)という概念が普及し、 社会や環境を意識した経営戦略は、将来的な企業利益や企業価値向上につながると企業が考え始めています。 また、ESGを重視した企業経営は、より多くの投資を呼び込むことが増え、それがさらに企業価値を高めるという好循環を生んでいます。

2.地球のためになる

現在世界で起きているリスクについて、世界経済フォーラムの「グローバルリスク」(下記リスト参照)が発表した内容によると、ここ数年、異常気象や自然災害、生物多様性の損失など環境に関する項目が多くを占めています。 ESGを念頭においた企業経営や投資は、気候変動など現在最も大きなリスクとなる環境問題を解決することを後押しします。 再生可能エネルギーの活用や
サーキュラーエコノミー の推進もその解決策のひとつとして導入が加速しています。

3.SDGsと相関関係にある

ESG投資を行う前提になるのが、2015年に国連で採択された SDGs です。SDGsは、国連が提唱する17個の持続可能な開発目標で、2030年までに達成することを目指す世界的な動きです。この17のゴールは環境、社会の問題を包括しており、 ESG はSDGsの達成に向けて資金を動かす仕組み とも言えます。

グローバルリスク(2019年と2020年)

20歳以上の日本人はみんなESG投資をしているって本当? 20歳以上の日本人はみんなESG投資をしているって本当?

ESG投資は2006年、当時の国際連合事務総長であったコフィー・アナン氏が「責任投資原則(PRI)」(下記リスト参照)の中で、投資判断をする際の観点としてESGの要素を重視するように提唱したことが拡大するきっかけになったと言われています。当時、数十社ほどの機関投資家からスタートしたものが、最近では約2,000社の機関投資家がPRIへ署名しています。今では個人投資家を含めて、持続可能な社会を実現するためにESGを意識して投資することが求められています。

日本では2015年に「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が署名しました。ここは約169兆円の運用資産を持つ世界最大級の投資運用機関であり、日本の公的年金の一部の管理・運用をしている厚生労働省の独立行政法人です。 GPIFは国連の示したESG投資への指針のもと、運用資金の全体をESG投資に充てると言っています ので、日本にいる20歳以上のほとんどの人は間接的にESG投資を行っているとも言えます。
このGPIFの方向転換は多くの企業にも影響を与え、ESGを意識した経営の重要性が明確化しました。

国際責任投資原則