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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.118

系外の地球型惑星に大気の証拠

系外惑星の研究の進捗はめざましいものがある。前回、このコーナーでご紹介したように、7つもの地球型惑星をもつトラピスト1惑星系についての発見に続いて、また新しい発見が発表された。似たような地球型と思われる系外惑星に大気が存在する証拠が得られたというのである。

今回の惑星系は、トラピスト1とほとんど同じような距離、39光年にあるグリーゼ1132である。この恒星は南天のほ座にあり、トラピスト1と同じく温度の低い、小さな恒星である。その質量は太陽の18%ほどで、表面温度も太陽よりもずっと低い。この恒星の周りに惑星が見つかったのは2015年のことだ。発見された惑星は、直径が地球の1.2倍ほど、質量は1.6倍ほどと見積もられており、まず岩石惑星であることが確実であろう。いわゆるスーパーアースと呼ばれる部類である。ただ、公転周期は1.6日ほど、恒星からわずか140万キロメートルとと極めて近い場所を巡っているので、いくら星そのものが低温だと言っても、その表面は熱く、平均でも摂氏260度はあるとされている。いってみれば、第二の地球と言うよりも第二の金星といった方が近いかもしれない。トラピスト1でも紹介したように、こうした惑星は自転周期と公転周期が一致しているはずなので、もし大気があれば、恒星を向いている半球は暑すぎるものの、夜側半球は昼側から熱が運ばれて、ほどほど暖かくなっていると考えられる。

グリーゼ1132を周回する大気を持つスーパーアースの想像図。(提供: MaxPLanck Institute for Astronomy)

ところで、系外惑星の大気を捉えるのはあまりにも難しい。喩えれば、東京からパリのエッフェル塔頂上にある直径約1センチメートルほどの大きさの電球をおくと、ちょうど地球から観測するグリーゼ1132の大きさとなる。そのまわりを公転する惑星は直径0.5ミリメートル、ほとんど芥子粒のような大きさである。その芥子粒の上に大気があるかどうかを確かめるのは、至難であることはわかってもらえるだろう。木星型のような大型の惑星では、ガスが存在する兆候はすでに得られているのだが、特に小さな地球型の惑星に大気が存在するのかどうか、これまであまり明確ではなかった。

今回は、いろいろな波長で観測することで、惑星の大きさがどのように見えるかを調べた。惑星が恒星の手前を横切っているときには、その惑星が恒星の光をブロックする。ブロックする光や赤外線の量は、太陽系の水星のように大気がほとんどなく、むき出しの岩石なら、どの波長で観測しても同じである。ところが、大気があると、可視光に対しては透明なのだが、赤外線に対しては不透明になって、星の光をより多くブロックすることがある。実際、地球の大気もそうなっている。こうして、この惑星には大気、それも地球に似て水蒸気を含む可能性が強い大気が存在することが示されたのである。明確に地球型のような岩石惑星に大気が存在する証拠が示されたのは初めてである。今後、この惑星のように第二の金星だけでなく、第二の地球にも大気が存在する証拠が示される日は極めて近いと期待される。それにしても凄い時代である。