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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.127

ブルームーンがレッドムーンに:
1月31日の皆既月食を眺めよう

今年、2018年は天文宇宙にとっては、かなり期待できるイベントの多い年である。なんといっても新年早々、1月2日には月が地球に近づいた状況での満月、いわゆるスーパームーンとなった。正月休みの最中で、特に太平洋側の地域では、きれいな満月を眺めることができた。この次の満月が1月31日となる。一ヶ月の間に満月が二度あることは珍しい。もともと月に準拠して作られていた暦を使っていた時代には、月齢が日付の基準になっていたため、こういうことはあり得なかった。そのため、二度目の満月は、かつてはあり得ないことだった。英語ではブルームーンと呼ぶことがある。よほどの条件が重ならないと月が青く見えることはないので、英語としては滅多に起こらない現象、あるいは奇跡的なという意味でも用いられる。

いずれにしろ、1月31日の満月はブルームーンである。しかし、この日の満月は、さらにドラマティックに色を変える。皆既月食が起こるため、ブルームーンがレッドムーンに変化するのである。今回の皆既月食は、日本では極めて観察条件が良い。全国で部分食の開始から終了まで、連続して観察できる。さらには、皆既月食となるのが夜半前であるため、観察しやすい時間帯であることも、お勧めできる理由となっている。月が部分月食として欠けはじめるのは、20時48分。東から上った満月はすでに30度を超えており、見やすい場所まで上っているはずだ。次第に欠けていく様子を眺めるには最高の条件である。そして約一時間後、21時51分には、満月の光はすべて地球の影にかくされ、皆既月食のレッドムーンとなる。この皆既の状態が1時間17分も続くのも、今回の特徴のひとつである。前回日本で見られた皆既月食は、2015年4月4日だったが、このときは皆既の継続時間はわずか12分間だった。それに比べると圧倒的に長く楽しめる。(ちなみに次回日本で見ることができる皆既月食は7月28日に起こるが、東日本では皆既になる前に月が沈むという、あまりよくない条件である。次に日本全国で部分食の始めから終わりまでを見ることができるのは、2022年11月8日となる。)皆既食のレッドムーンは23時8分に終了となり、月に光が戻り始める。部分食は真夜中を過ぎた2月1日0時12分に終了し、元の丸い満月に戻るのである。

1月31日に起こる皆既月食の夜空での様子。(提供:国立天文台)

実は、皆既月食中、月はすっぽりと地球の影に入り込むために、本来なら真っ暗になってしまうはずである。ところが、満月はほのかに赤く輝くことが多い。これは地球に大気があるせいである。地球の大気を太陽光が通過するとき、大気の縁がレンズのような役割をして、太陽光を屈折させる。屈折した太陽光は、影の内側に入り込むように、経路が曲げられると同時に、波長の短い青い光が空気の分子によって散乱され、赤い光のみが残る。朝日や夕日が赤く見えるのも、赤い光だけが残りやすいためである。こうして、屈折して経路が曲げられた赤い光が、地球の影の中に入り込んだ月に届くので、皆既食中の月が赤銅色に見える、つまりレッドムーンとなる理由である。

ただ、皆既月食中の月の赤さは毎回、同じではない。地球の大気中に塵が少ないときには、大気を通り抜ける光量は多くなるので、オレンジ色のような明るい色の月となる。ところが、大規模な火山が爆発したりすると、大気中に火山灰が漂い、本来なら通り抜けられる赤い光さえも散乱してしまうので、月が灰色に見えたり、あるいは本当に真っ暗となって、月の存在すらわからなくなるときがある。

今回の皆既月食は、大規模な火山噴火は起きていないので、比較的明るい赤色になるのではないか、と予想されている。ぜひ皆さんも観察してみて欲しい。ちなみに皆既月食ごとに色が異なることは、古くから知られており、フランスの天文学者ダンジョンは20世紀初頭に独自に色の違いを「ダンジョンの尺度(スケール)」という目安を用いて、調べている。今回の皆既月食の色がどうなるか、皆さんも観察して、このスケールでどの色に当たるか、調べてみて欲しい。国立天文台では、今回も「皆既月食を観察しよう」というキャンペーンを展開するので、ぜひ参加してみよう。