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ライター 林 公代 Kimiyo Hayashiライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

「さばの缶づめ、宇宙へいく」がついにドラマ化!実現までの舞台裏と期待

2019年9月11日、宇宙サバ缶のISSへの打ち上げを見守ろうと種子島を訪れた若狭高校チーム。

DSPACEでたびたび紹介してきた、福井県の高校生による宇宙日本食サバ缶。300人以上の生徒が約14年間、小坂康之教諭とともにバトンをつなぎ、世界初となる高校生初の宇宙日本食「サバ醤油味付け缶詰」を実現。2020年11月に野口聡一宇宙飛行士がISSから食リポした経緯は拙著「さばの缶づめ、宇宙へいく」(小坂康之氏と共著)で詳しく書かせて頂いた。

その実話がついにドラマになる! フジテレビの月9(月曜21時~)「サバ缶、宇宙へ行く」で。ドラマは拙著を原案としたオリジナルストーリーで主演は北村匠海さん(宇宙好きと聞く)。そして神木隆之介さんの出演も決まった!JAXA宇宙日本食担当だという。 4月13日からの放送が楽しみでたまらない。

2022年の書籍出版後、宇宙サバ缶の開発ストーリーはNHK「新プロジェクトX~挑戦者たち~」や、「奇跡体験!アンビリバボー」など様々なテレビ番組で取り上げられてきた。実は映画化やテレビドラマ化のお話も、これまで多数頂いていた。打ち合わせの段階まで進むものもあったが、企画書の段階でお断りさせて頂くものもあった。

小坂先生や私が譲れなかった点は、ただ1つ。「卒業生が胸を張って、自分の子供と一緒に見られる映像でなければならない」。「宇宙食、作れるんちゃう?」という言葉が生徒から飛び出したことが宇宙を目指したきっかけだったが、それ以前の校内は、時に授業が成立しにくい様子だった。だが学校から外に出て地域の課題解決に取り組むうちに、生徒は生き生きと自ら学びはじめ、「宇宙食」という目標を見出し実現に向けてバトンをつないでいった。

ところが、映像化の企画書には、わかりやすく校内が荒れた様子が描かれていた。感動ストーリーをどう描くかが目的となり、残念ながら代々にわたって宇宙サバ缶が受け継がれていったことや、生徒たちの成長を丁寧に描いているとは言い難かったのだ。

フジテレビ系4月期月9ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』初回放送日 4月13日(月)21時~21時54分

「なぜ宇宙サバ缶をドラマに?」「なぜ北村匠海さんを主役に?」

2018年11月に宇宙日本食に認証された後も、宇宙飛行士に宇宙に持っていってもらうために改良を続ける宇宙サバ缶チーム。右端が小坂康之先生。写真は2018年12月末の取材時。

ではなぜ、今回ドラマ化が実現したのか。まずはフジテレビの石井浩二プロデューサーに、宇宙サバ缶を月9で取り上げようと思った理由を改めて聞いたところ、熱いコメントを頂いた。

「この実話には、『夢を見つけて頑張ること』『まずはチャレンジすること』『それぞれの思いを皆で支え合うこと』など、今の世の中の状況だからこそ、作り手として視聴者に伝えたいことが詰まっています。しかも、それが地方(福井県)発であり、東京にいなくても夢や想いは実現出来るということが、全国の人に伝わって欲しいと思ったからです(私自身も地方出身者なので)。

重要なのは、長い期間をかけて先輩から後輩へと思いを繋いで実現させたという壮大さと感動がある点で、話数の多い連続ドラマに相応しいと思えました。

月曜9時枠は“恋愛モノ”と言うイメージが強いですが、9時台のドラマだからこそ、多くの皆さん(特に中学生・高校生と、その親)に見て頂き易いと思われますし、週頭の放送だからこそ、このドラマで“明日への活力”を貰って欲しいという思いもあります」。

一方、小坂先生はなぜ、フジテレビのドラマ化をOKしたのか。

「ドラマなら、生徒から生徒へ(宇宙サバ缶開発が)代々引き継がれていく様子を描くことができる。それと代々の卒業生から『せっかく誇れる思い出なんだからやってみたら』と促されたこと」が理由だそう。小坂先生は今回のドラマのためにテレビ局と一緒に新たに取材を行い、台本も検討を重ねた。今まで話せなかった卒業生と話すことができて、新たな発見があった。フィクションを加えることで、伝えたいことが視聴者に伝わりやすくなるのではないかという期待もあるという。

ドラマの注目点の一つは、主役の北村匠海さんら豪華俳優陣の起用だ。北村さんが演じる教師のモデルは、10年以上にわたりサバ缶の実現に伴走してきた小坂康之先生(現在は小浜市教育長)だ。小坂先生は生徒をぐいぐい引っ張るというよりは、生徒を見守り(小坂先生は『見取り』と呼ぶ)、生徒が一歩踏み出した瞬間を見逃さずに後押しする。「宇宙食、作れるんちゃう?」の言葉を聞き逃さなかったように。台本を拝見させて頂いたが、小坂先生の見取りの姿勢を大事にしつつ、北村さんの声が聞こえてきそうなキャラになっている。

北村匠海さんを起用した理由をフジテレビの石井プロデューサーに聞いた。どちらからオファーしたんですか?

「北村匠海さんが“教師役”を熱望しているという話が耳に入っていたこともあり、運命的な“相思相愛”といった感じです。そして、北村さんも『この物語は生徒が主役』と言われている。先生が強引に生徒を引っ張ろうとするのではなく、生徒の言動を見取り、自分自身で考えて行動するまで待つ。あくまで生徒が前に出て、教師は後ろで支えるという役柄に、その優しさと信念の強さを表現できる北村匠海さんはハマり役だと思えたからです」。

種子島で自分たちが開発した宇宙サバ缶が搭載されたロケットと対峙する高校生と、後ろから見守る小坂先生。

「見取り」という言葉を石井プロデューサーが使うあたり、実話の肝をきちんと把握して頂いていることが伝わってきた。小坂先生は北村さんがイケメン過ぎて似てないというが、「優しさと信念の強さ」は共通しているように感じる。

ドラマへの期待

小坂先生からドラマに期待すること、ドラマを見る方に感じてほしいことについてもメッセージを頂いた。

「子供たちの『わぁ』『すごい』『面白い』というワンダーの気持ちが、先生や地域の方々との対話の中でさらに大きく膨らんでいく様子をぜひ感じて頂きたいです。どんな状況でも、人は『良い方向に行きたい』と思っています。その子供たちの声に耳を傾けて始まった物語がサバ缶の開発です」。

若狭高校海洋科学科第14代宇宙サバ缶チームの皆さん。(提供:若狭高校)

「様々な人との対話を重ねながら、ゆっくり年月をかけて子供たちの心を大切にしてきた試みです。教育はとてもクリエイティブでワクワクするものだと感じて頂ければ幸いです」

ドラマは実話をベースにしながら、視聴者に伝わりやすいようにオリジナルなストーリーが展開される。実は1月末に宇宙サバ缶の実話をもとにした演劇が上演され、フィクションの力を感じた。こうして様々な手法で、宇宙サバ缶の物語が多くの方に広がっていくことが嬉しい。興味を持って事実を知りたいと思った方は原案となった本(「さばの缶づめ、宇宙へ行く」)もぜひ読んでみて頂ければ嬉しいです。

「さばの缶づめ、宇宙へいく」(小坂康之、林公代 イースト・プレス 定価1500円+税)
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