大盛況「星や宇宙を仕事に!」—アフリカ宙旅を実現した主催女性に聞く、夢の叶え方
6月13日(土)、東京都内のある会議室は、「星や宇宙を仕事に!」をテーマに集った約50名の参加者の熱気に包まれていた。星空保護区である福井県大野市の小学校の先生をしながら「ほしぞら学校を作りたい」という女性、既に宇宙業界で働きながら、さらに自分のやりたいことを実現したいと模索する人、宇宙日本食「静岡みかんゼリー」を実現しようと小学生の頃から取り組んできた高校生など。
「星や宇宙」を合言葉に、多種多様な動機をもった人たちが関西や四国など遠方からも駆け付けた。「好き」だけで終わらせたくない。どうやったら自分の目標に近づけるのか、ヒントをつかみたい、星好きな仲間と繋がりたいという「本気度」が感じられた。
このイベントは2年前にも取材して記事にしている(欄外リンク参照)。今回、私はスペシャルゲストとして参加させて頂いたのだが、驚いたのは、ユニークな切り口で星や宇宙を仕事にしたい人たちが確実に増え、その切り口がバラエティ豊かなことだ。星空を「記憶」に結び付ける人、星空体験を「生きる力」に結び付ける人、星をモチーフにしたハンドメイド作品の販売やワークショップを目標にしている人、独自の構図で星景写真を撮影し、機材メーカーともタイアップしている人など。まだ「これから」の人もいるけれど、みんな自分の個性や独自性を客観的にとらえ、楽しみつつ前に進んでいる様子が眩しかった。
そもそもこのイベントの目的は、星や宇宙を仕事にしようと一歩踏み出す人をサポートし、横のつながりを作り、天文関連メーカーとの出会いの場を作ること。イベント後、主催者の一人・イワシロアヤカさんは「前回は、知り合いの関係者を中心に盛り上がったが、今回は一人で初めて参加する人、初ブース出展の方が多かった。初めてなのにぐいぐい積極的で盛り上がりがすごいなと」期待以上の手ごたえを感じている。
イワシロさん自身の経歴も面白い。旅や星が好きだったイワシロさんは望遠鏡メーカーのビクセンで約5年間働いたあと、世界一周旅をするために退社(ビクセン入社の際も新卒は募集していなかったものの、メールを書いて面接にこぎつけ入社。入社後は星を楽しむ宙ガール®の走りとして様々な企画を展開した)。現在は高知で二人の娘さんを育てつつ、星空体験プロデューサーとして「星空の力を生きる力に」「『世界はオモシロい!』に気づけるチカラを」を掲げ、ユニークな星空体験イベントを企画運営したり、FMラジオで宙旅について語るレギュラーコーナーを持っていたりと活躍中だ。
その経験から実際に星を仕事にする上で大切な点について、イワシロさんはこう語る。「(星空案内人などの資格をとって)星を見せられる人はいっぱいいる。だけど、星空をエンタメにするには、企画力とか運営する力などが必要で、社会人経験がすごく役に立っている」。(原稿最後、成澤広幸さんとの対談YouTube動画で詳しく話されてます)
つまり「企画書を持ち込んで『こういう星のイベントをやりませんか』」という企画力がまず求められる。企画で大事なのは「なぜここで星を見なければならないのか、なぜそれを主催者がやらないといけないのか」を明確にすること。具体例で説明して下さった。
「数年前、高知県立牧野植物園で夜間開園する『よるまきの』っていうイベントがあったんです。その時に星を見てもらおうと企画書を持ちこみました。植物学者の牧野富太郎さんは『人間はもともと自然の一員なのですから、自然にとけこんでこそ、はじめて生きているよろこびを感ずる』と言われてます。植物学と天文学は一見関連がないように見えて、どちらも生命に想いを寄せるきっかけをもたらす。だからこそ植物園で星を見ることに意義があると展開しました」。さらに植物園の立地の良さから、なにが見えるかを具体的に説明すると「めちゃくちゃいいですね、楽しそう!」と担当者が快諾、実現した。
もちろん、いきなり企画書を持って飛び込んだわけではない。イワシロさんはまず高知県の起業応援プログラムに参加。高知県立の牧野植物園でイベントをやりたいと言ったところ、起業プログラム担当者が同行してくれた。最初は同植物園の「桜の宵」という夜桜のライトアップ時に月を見るイベントを「ただでいいのでやらせてください」と提案し実績を作った。繋がりと実績を作った上で企画力があったことが、仕事に結びついた実例だ。
1か月間のアフリカ宙旅。ナミブ砂漠で「違う星にきちゃった」体験
さて、イワシロさんのXのプロフィールには「星と宇宙を通じて世界を拡大する」「バックパッカー母ちゃん、世界30か国旅人」と記されている。イワシロさんは大学時代からバックパッカー旅を始めた。そして2025年春には「星空」をテーマにアフリカ一人旅を敢行。2人の娘さんを夫に託して。その旅話がめちゃくちゃ面白くて、憧れる。
そもそも、イワシロさんは27歳で世界一周をすると決めていた。大学時代で出会った世界一周中のバックパッカーに27歳が多かったこと、憧れのミュージシャンらが27歳で急逝していたことが理由だ。そして、本当に27歳の時に世界一周へ旅立った。ところが、アジアから始まった旅は数か月後、アフリカに入る手前で体調不良のために一時中断せざるを得なかった。その旅をいつか再開したいと思いつつ、結婚・出産・仕事に追われる日々。だが、長女が小学校に入れば、海外へ長旅に出かけるのはますます難しくなる。そこで2025年2月~3月、家族の理解と協力を得てアフリカ宙旅に出発したのだ。
エチオピアからナミビア、南アフリカ共和国、ビクトリアの滝(ザンビア、ジンバブエ国境)、エジプトを回った約1か月の旅の中から、最高に写真がかっこよかったナミビアのナミブ砂漠と、ビクトリアフォールズのムーンボウ(夜の虹)を紹介したい。
まずはナミビアのナミブ砂漠。イワシロさんがここを訪れようと思った理由の一つは、「世界三大星空」の一つだから。具体的には、国際ダークスカイ協会が認定する星空保護区の中で最高ランクのゴールドティアに選ばれているのが、ナミブ砂漠、テカポ湖(ニュージーランド)、アイベラ半島(アイルランド)だった。テカポ湖は年をとっても行けそうだし、ともかくアフリカに行きたかった。
そこで、(明かりの少ない)新月期にナミブ砂漠を訪れるプランを組んだ。ナミブ砂漠と一口に言っても広大だ。ナミビアの首都ウィントフックで四輪駆動のレンタカーを借り、パンクした時の修理グッズやテント、6日間の食料を積み込み、目指したのはナミブ砂漠のナミブランド自然保護区。ナミブ砂漠まで行く観光客は多いが(首都から少し近い)セスリエムで満足する人が多く、ナミブランドまで行く人は少ない。出会った人たちに一緒に行こうと声をかけたものの、結局、イワシロさんは一人でハンドルを握ることに。ナビで5時間の予定が、途中で道に迷って7時間かけて迷いつつ、たどり着いた目的地の星空は?
「ナミブ砂漠の星空は本当にすごい。白い車のボンネットに手のひらをかざすと星の光で影ができるほど明るいんです」。
「星と砂漠と自分しかいない。砂は雪のように音を吸収するから、シーンとした静寂の空間がどこまでも広がっている。動物の物音もしない。砂漠に寝転ぶと星しか見えない。『違う星にきちゃった』みたいな感じです」。
イワシロさんは、たった一人で星と対峙したが、怖さはまったく感じなかった(運転で道に迷ったときだけは死ぬかと思ったそう)。むしろ楽しくてテンションが上がりまくって「うわぁーい」と自分を解放していった。砂漠に寝転ぶと、地球が自転で動いていく方向に、自分が引っ張られていくように感じたそうだ。
ビクトリアの滝で月夜のダブルレインボウ
新月期のナミブ砂漠で満天の星を堪能したイワシロさん。その後、南アフリカで天文台やプラネタリウムを見て、満月前後の3日間、ザンビアとジンバブエの国境にあるビクトリアフォールズ(滝)でナイトレインボウ(夜の虹、ムーンボウとも呼ばれる)を見ることも旅のハイライトとして組み込んでいた。
ナイトレインボウを見るには、いくつかの条件がある。滝から水しぶきが大量に上がっていること(雨季)、かつ月が雲に隠れていないこと(乾季)。つまり相反する条件がそろう必要がある。雨季と乾季の狭間である4~7月がベストともされる。イワシロさんが訪れた3月は雨季が明けるか明けないかの時期でドキドキしていたというが、なんとダブルレインボウを見ることができた!
「うわぁ、本当に見えるんだ! って嬉しかったですね。3日間通いましたが、月が上る方角とか時刻がだんだん遅くなっていくから、虹の出る場所が変わって毎日見え方が違う。1日目よりも2日目の方が虹が下の方まで下りていくのが見られました」(イワシロさん)
ザンビア側とジンバブエ側の両側から夜の虹を見た。ザンビアから見るとジンバブエの街明かりが見えるので、ジンバブエ側から見る方が自然の風景だけを楽しめてお勧めとのこと。ただしジンバブエはザンビアより物価は高いそうだ。
イワシロさんの口癖は「老後のためにお金を貯めている場合じゃない」。老後に旅をしようとお金を貯めてもいざ旅をする頃には体力は衰え、バックパッカー旅は難しくなる。「私の場合は貧乏旅行なので、結構体力を使うんです。アフリカの旅の前にはジムを契約して、走ったり筋トレしたりして準備しました。荷物の重さは10kgはあるし、トレッキングのツアーに参加する予定だったので、体力がないとキツイ」。
いくら映像がリアルになってもAIが発達しても、音がない静寂なナミブ砂漠でたった一人で星と対峙する宇宙体験は、現地に行かないと決して味わえない。本物の星空体験で感じるワクワクが「生きる力になる」ことを実感したからこそ、イワシロさんはみんなにも体感してほしいと心底思うのだろう。世界は、星空はこんなにオモシロイ。私たちはまだまだそのオモシロさを味わい尽くしていない。大人こそ行動して、面白がる姿を見せていくべきではないか。
イワシロさんや「星や宇宙を仕事に!」で出会った皆さんから、パワーをもらった。私もナミブ砂漠やビクトリアフォールズを体感してみたい。イワシロさん、ぜひお仕事として企画して下さいね~!!(笑)
- ※
本文中における会社名、商品名は、各社の商標または登録商標です。

