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DSPACE 星空の散歩道 Vol.150 星空を見上げよう、宇宙を楽しもう 渡部潤一 武田双雲 対談&ファンミーティングDSPACE 星空の散歩道 Vol.150 星空を見上げよう、宇宙を楽しもう 渡部潤一 武田双雲 対談&ファンミーティング

 Vol.150

星空を見上げよう、宇宙を楽しもう

2005年12月の連載スタートから約14年間。星空の中をぶらぶら散歩するかのように、様々な切り口で星空の楽しみ方を教えてくれた国立天文台副台長・渡部潤一先生の人気連載「星空の散歩道」が最終回を迎えることになりました。

ちょうど150回の節目を記念して12月2日(月)、公開対談&ファンミーティングが行われました。対談のお相手は書道家の武田双雲さん。和やかで笑いが絶えず、盛り上がった対談の様子をどうぞ。(進行役:林公代)

「渡部望遠鏡」によって作品がどんどん生まれる!

お二人が知り合われたきっかけから教えて頂けますか?
渡部潤一先生(以下、渡部):

最初はNHKの生放送か何かだったかな。

武田双雲さん(以下、武田):

そうそう、NHKの宇宙番組でご一緒して。その後、国立天文台を家族で訪問させてもらって感動して。ちょうどそのころ、僕は科学のプロフェッショナルチームを作りたかったんですよ。

科学チームですか?
武田:

天文学者の渡部先生、物理学者や脳科学者、科学雑誌ニュートンの編集長とか。まぁ、ただみんなで情報交換をしようっていうLINEグループなんですけど。

それが武田さんの作品作りに活かされるわけですか?
武田:

ものっすごく。僕は宇宙とか原子核以下の世界がずーっと大好きで、人間社会にいないんですよ(笑)。自分が感動したこととか表現したいことが、アートを通すといい意味で消化される。2年ぐらい前から(書道だけでなく)色を使い始めて、はまっています。

アーティストって感動したいという欲求が異常に強くて、感動した分、爆発して出すものがアートになる。でも一人で感動するのって限界があるんですよ。自分の感覚と記憶と情報だけでは狭い世界だから。そこでプロフェッショナルである「渡部望遠鏡」を僕がつけることで、すごい作品が生まれる。

「渡部望遠鏡」ですか(笑)
武田:

そう。何十年も僕たちが全く知らない世界を追いかけてきて、僕よりはるかにすごいメガネというか知識・知性・好奇心をもった「宇宙変態」みたいなもんじゃないですか(笑)

渡部先生から見た武田さんの印象はどうですか?
渡部:

うん、ものすごく迫力のある人でね。刺激を受けっぱなしですよ。表現するものもすごいし。芸術家の方々はみんな個性的で、みんな変態じゃないですかね(笑)

記憶に残るコラムは?太陽系外からの宇宙船!?

さて、渡部先生は約14年間にわたってコラムを執筆されてこられました。その間、天文学も随分進展したと思います。最近、印象に残るコラムや天文学の話題はありますか?
渡部:

やっぱり、オウムアムアとボリソフですね。オウムアムアは見つかったのが2017年。初めて太陽系の外からやってきた天体です。

武田:

見た目がすごいんですよね?誰が見ても宇宙船だと思う形で。

渡部:

葉巻型っていうのかな。長さが300mもあって幅が30mという細長い天体は太陽系で見つかったことがない。せいぜい長さと幅の比は3対1なんです。

武田:

興奮しますよね!

渡部:

絶対、宇宙船だって思ったもんね(笑)。なぜ細長くするかっていえば、断面積を小さくして宇宙空間の塵との衝突を避けるため。宇宙航行に適した形と言われます。

武田:

ぶつかる確率が少ない!

渡部:

でもオウムアムアを観測するとぐるぐる回っていたので、宇宙船ではないのかなって。あるいは打ち捨てられた宇宙船か・・。

何かストーリーがありそうですね。
渡部:

太陽系の外からの天体が見つかるのは、一生に一回だなと僕らは想っていた。発見したハワイ大学の先生も「私が生きている間、二度と見つけることはないでしょう」と。

武田:

そんなにすごいことなんですね。

渡部:

でも2年後に見つかったんです。ボリソフ彗星が(笑)

武田:

意外に早いですね。

渡部:

めちゃくちゃ早い

それは観測技術が上がったってことですか?
渡部:

観測技術が上がらないと、見えない天体ではあるんですね。

じゃあ、今までも太陽系の外からの天体は来ていたかもしれない?
渡部:

来ていたかもしれない。

武田:

ボリソフ彗星はどんな天体ですか?

渡部:

ほうき星なんですよ。彗星なので、中心の核の形はわからないんです。この12月(注:対談は12月2日。ポリソフ彗星が再接近したのが12月8日)に太陽に一番近づくので、太陽系内の彗星の成分とどんなふうに違うかが、すごく知りたいと思っています。

武田:

楽しみですね。成分はわかりそうですか?

渡部:

今のところは太陽系内の天体とそんなに変わらないです。不思議なんだけど。

武田:

すごく寂しそうにしょんぼり話しますね(笑)

まだ望遠鏡ができて400年。経験値が足りない!

では14年間全体で想い出深いコラムは?
渡部:

やはり2013年のアイソン彗星かな。絶対の自信をもって(明るくなると)予測したのに、予測するもんじゃないなと思いましたね。

発見当初は、満月ぐらいに明るくなるかもしれないって予想されてましたよね?
渡部:

明るさもそうですが、北半球から長い尾っぽをなびかせて見えるようなほうき星はここ20年出てないんですよ。1997年のヘール・ボップ彗星が最後だったと思いますね。アイソン彗星は世界中の彗星研究者がありとあらゆる天文台の望遠鏡や人工衛星の時間を抑えて、NASAは惑星探査機の観測時間まで変更して観測しようとしていたんです。ところが太陽に近づいた時に蒸発しちゃった。

武田:

勝手に期待されて勝手に失望されただけで、彗星は別に悪気はないんですけどね(笑)

確か、国際宇宙ステーションでも若田さんが撮影の準備をされてましたよね?
渡部:

そうです。忘れもしない12月3日水曜日、19時半から20時43分。

すごい!克明に記憶されてますね。
渡部:

NHKが特別番組を組んでISSから生中継しようとしていた。そこまでやって見えない(笑)。「大彗星あらわる」みたいな番組タイトルだったのに、いつの間にか「彗星爆発・宇宙の謎」になってる(笑)

その時のコラムには先生の短歌「のぞきこむ 画面に光る筋雲に 思い至らぬ 未知の振る舞い」が書かれてましたね。どういう思いでしたか?
渡部:

我々は彗星のことを全然わかってないんだなと。まだ望遠鏡を発明して400年ぐらいしか経ってないからね。

武田:

謙虚になるような事件だったんですね。400年ではデータが足りないと。
ところで望遠鏡と言えば、日本はダントツですごいんですって?

渡部:

望遠鏡って大きくなればなるほど、大きな構造物を作って、なおかつ星の日周運動に合わせて精度高く、ぴたっと向けないといけないから難しくなる。精密機械の技術と造船みたいな大きな構造物の技術の両方が必要で、その両方とも日本が得意なんです。

武田:

そっか、そっか!

渡部:

1970年代にオーストラリアに口径3.89mアングロ・オーストラリアン・テレスコープができましたが、これは初めて三菱電機さんが主契約者となって作った望遠鏡です。世界中の天文学者がこんなにぴたっと動く望遠鏡は初めてだと驚いたわけです。

武田:

こういうのをもっとニュースにしてほしいよね。

渡部:

その技術はすばる望遠鏡に引き継がれています。「すばる」の実績を見てTMTという口径30mの望遠鏡を国際協力で作る際に、「望遠鏡本体はアメリカや中国でなく日本に作ってもらおう!」ってことになったんですよ。日本は最近、自信を失っているように思えますが、強みはいっぱいあるんです。

武田さんの興味は「ダークマター」「宇宙の果て」

武田さんが渡部先生のコラムで面白いなと思ったのはなんでしょう?
武田:

ぼくは物理学が好きで、ビッグバンとか宇宙の加速膨張とかに興味があるんです。だからダークマターが三次元にビジュアル化されたというコラムが面白かったですね。

渡部:

今はカメラが新しくなって、もっと大規模にやっていますね。あれができるのはね、すばる望遠鏡しかないんです、今。

世界中で?
渡部:

はい。大きな望遠鏡はふつうにつくると望遠レンズになってしまいますが、すばる望遠鏡は広角レンズモードを残したものだから、非常に広い視野で、しかも宇宙の奥深くまで見ることができる。

武田:

奥深さと広さを両方持っている。だから(ダークマターの)分布図も得意なのか。

渡部:

そうなんです。

武田さんはいつ頃、宇宙に興味を持ち始めたんですか?
武田:

中学生からですね。小中高と友達と全然うまくいかなくて。頭の中でビッグバンのこととかがぐるぐる回っていて、質問ばっかりしていましたが、誰も答えてくれない。

熊本県のご出身でしたよね?宇宙の難しいことを、質問していたんですか?
武田:

そう。宇宙の果てとか、重力って何?とか。でも「今、国語の授業だろ。その質問をするのは今じゃない」って怒られて廊下に立たされるだけで。俺があまりにも可哀そうだと思ったのか、母親がアインシュタインやホーキング博士の本を買ってきてくれたんです。はまりましたね。「人間ってそんなにわかってるんだ」っていうのと、「そんなにわかってないんだ」って両方わかるじゃないですか。

確かに!
武田:

「自分がずっと想像してたことをちゃんと研究してくれてる人がいる」っていう仲間意識。俺だけ浮いているのかと思ってたけど、やっぱりこういう変態みたいな人がいるんだ!と(笑)。やっぱりみんな「宇宙の果て」を知りたいよねと思って。それから次々本を買って。
一つ渡部先生に質問していいですか? 宇宙の果てはどうなってますか?

渡部:

まず、「果て」には2種類あってね。「見えるところが果てだ」という定義と、「物理学的に本当の果て」というものですね。

武田:

そうか。見えるというのは僕らが感知できる、光が届く範囲ってことね?

渡部:

前者に関してはもう確実にあるわけで、約138憶年前に宇宙ができて、その勢いで膨張しているんだけど、138億年前の光は光速を超えない限りは届いてくる。その先はあったとしても、光速を超えて膨張しているから、情報はやって来ない。そうすると、あるところに見える限界=地平線みたいなものがあって、それが138億年の球を作っていると考えると、我々を中心に138憶光年の球の表面が「果て」っていうことになる。

武田:

うんうん

渡部:

でも皆さん、それで満足しないんですよね(笑)。その先があるはずだと。例えば地球という球の表面を考えると、東へ東へ進むと西から戻ってくる。

武田:

そうか、地球は丸いから、真っすぐ歩くと後ろから戻ってくる。

渡部:

そう。有限な体積を持っているけど、果てがない世界なんですよ。

武田:

なるほど!

渡部:

つまり2次元から一次元高めた3次元空間で有限な体積なんだけど、果てがない世界に我々は住んでいるってことが言えるんです。メビウスの輪みたいに。

武田:

わかっても騙されたような(笑)うちの子に聞かれたんだけど「加速膨張って何の中が膨張してるの?」と。膨張できる空間があるってことは、その空間の外側はなに?と。

渡部:

宇宙っていう言葉自体が「時間」と「空間」を示していて、宇宙ができたってことは時間と空間が生まれたことを示す。やっぱり僕らは3次元空間で風船を膨らませたイメージしか持てなくて、その外側は定義できないんですよね。

武田:

そうですよね。時間と空間が宇宙なんだから、その先はいわゆる無にしかならない。

人類史における天文学の役割とは?

実は今回の対談のテーマが「人類史における天文学の役割」なんですが・・
武田:

最後にすごい重いやつが来た!(笑)それを一言で締めろと?

すみません(笑)。是非よろしくお願いします。
渡部:

僕ね、実は去年書いた論文があってね。タイトルが「宇宙生命が見つかったら、人類はどんなインパクトを受けるか」っていう。

武田:

おお!自分たち以外の生命体?

渡部:

やっぱりね、天文学ってその時々で大きな概念変革を促してきたと思うんです。コペルニクス然り、ガリレオ然り。ニュートンやケプラーもそうだったしね。その意味で天文学によって、巨視的に人類そのものを考えることができる。地球環境も変わりつつある今、天文学を学ぶことによって、もう少し長い時間スケールで、マクロな視点を得ることが、我々人類を永続させるための一つの手段かなと思いました。

武田:

超感動しました。俺が言いたかったことですよ(笑)人間は視野が狭くなって自分たちのことばかり考えると、平和が崩れて争いごとが起こりますよね。サイエンスを学んだり宇宙に行ったりすることで、それまでの人間の常識や、ある意味宗教まで壊すぐらいの革命をたまに起こしてしまうんですよね。

アーティストがやりたいことも、まさに人間の常識を打ち破ることでみんなを平和にしたい。楽にしたい。僕の次の個展のテーマは「楽園」です。人類の楽園は何かといえば、宇宙飛行士の山崎直子さんと対談したときに「宇宙は楽園みたいだった」っていうんですよ。「怖くないんですか?」と聞いたら「宇宙に放り出された瞬間に安ど感しかない。自分が溶けて自分と自分以外の区別がつかなくなる瞬間がある」と。宇宙の視点をもつことによって、地上の狭い争いや環境問題について客観視させてくれると思うんですよね。

ありがとうございます。素晴らしいお話でした。最後に、DSPACE読者、また宇宙や星に興味がある方たちへのメッセージをお願いできますか?
渡部:

天文学ってすごくいい学問だなって思うときがあります。アイソン彗星の例だけでなく、まだまだ僕らは未熟だから色々な予測ができないのですが、その予測が本当かどうかを一般の人と共有できる部分があるんです。例えば月食や日食もそうです。我々はちょっと特殊な機械を使って観測したりするけれども、見ている現象は同じです。

そうですね。
渡部:

共有する楽しみを是非皆さんにも知って頂きたい。場合によっては、これから一般の方々が学問に寄与できる時代になってきている。ビッグデータを使って、皆さんが何かを発見するかもしれない時代です。ちょっと突っ込んだ楽しみ方ができればと思いますし、単に星を見て楽しむのもいい。それぞれに天文学や宇宙を楽しんで頂ければと思います。

渡部先生、武田双雲さん、本日は本当にありがとうございました!

約1時間の対談はあっという間に終了。この後、会場の皆さんから次々と質問が寄せられました。渡部先生は12月末に出版された新刊「第二の地球が見つかる日」(朝日新聞出版)で小説家になる夢を叶え、武田双雲さんは東京・代官山ヒルサイドフォーラムで2月5日から「ピカソ、ごめん展。」と題して宇宙の感動を表現したアート作品を数百点展示されるそう。「星空の散歩道」には様々な星の楽しみ方が紹介されています。ぜひバックナンバーをじっくりお読みくださいね。