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保険薬局業務を支えるITシステムの現状と今後の展望、保険薬局を起点にヘルスケア全体のICT化を目指す
「保険薬局システム 調剤Melphin / DUO(メルフィン・デュオ)」

2021年4月 | EXPERT INTERVIEW

三菱電機ITソリューションズ株式会社(MDSOL)の保険薬局向けシステム調剤Melphin / DUO (以下、調剤Melphin)は、個人店から大手薬局チェーンまで全国約7000店舗の業務を支えています。
ここでは調剤Melphinの製品企画、営業、開発の各部門をリードするMDSOLのメンバーに、薬局向けシステムを担当するうえで求められる要素や、薬局向けシステムの現在と今後の展望について伺いました。

左から、三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケア営業部 プロフェッショナル 近内 誠 氏三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケア営業部 プロモーショングループ プロフェッショナル 重富 健二 氏三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケアソリューション部 部長 高野 謙司 氏三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケアソリューション部 次長 長尾 裕之 氏

左から、三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケア営業部 プロフェッショナル 近内 誠 氏
三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケア営業部 プロモーショングループ プロフェッショナル 重富 健二 氏
三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケアソリューション部 部長 高野 謙司 氏
三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケアソリューション部 次長 長尾 裕之 氏

三菱電機ITソリューションズ株式会社(MDSOL)

ITの知識に加えて独特の用語や保険などの知識が求められる

保険薬局は、医療法で定義された医療提供施設のひとつであると同時に、接客をしながら薬を販売する小売店としての側面もあります。

MDSOLの保険薬局向けシステムである調剤Melphinは、診療報酬明細書(レセプト)を作成するソフトウェア製品(レセコン)であり、薬局で働く人の業務効率を大きく左右する重要な設備です。

長年、調剤Melphinの開発と販売に携わってきた流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケア営業部の近内 誠 氏は、調剤Melphinを担当するうえで求められる資質について、次のように語ります。

「保険薬局の業務は法律による規制もあり、取っ付き難く理解に時間がかかります。薬局で使われる用語には、一般には聞き慣れないものが多くあります。例えば“Do(ドゥー)処方”という言葉がありますが、これは“前回と処方が同じ”という意味です。また“公費”に該当する病気は患者の自己負担額が少なくなるといったことも、一般の人にはあまり知られていません。調剤Melphinを担当するには、競合製品やITに加え、薬局業界の動向や薬事行政、関連法規などの知識を持ってお客様の悩み事を理解する力が必要になります」

直販部門のSEとして調剤Melphinのカスタマイズやシステムインテグレーションを担当している流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケアソリューション部次長の長尾裕之氏は、自らの経験を踏まえて語ります。

「お客様と話をするときには、最初に薬局業務の基盤となる薬事制度があって、その上に保険薬局システムが成り立っているということを理解しておく必要があります。業務とITの両方の知識を持つことで、お客様の信頼を得ることができます」

全国の販売代理店の人材育成を推進

調剤Melphinは個人経営の薬局から大手薬局チェーンまで、全国約7,000店舗で利用されています。全国に広がるお客様をサポートするため、MDSOLでは販売代理店(パートナー)の人材育成にも取り組んでいます。販売会議や勉強会などを通じて代理店の営業・エンジニア向けの教育や情報提供を長年にわたり行っています。

自身も営業として活動しながら販売代理店の教育も行っている流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケア営業部 プロモーショングループの重富健二氏は、販売代理店の人材育成について次のように語ります。

「代理店の方には薬局業務の知識に加えて、その業務と調剤Melphinがどのようにつながっているかを理解してもらう必要があります。勉強会では、薬局の方が興味を持たれる情報やよく質問される内容などの“薬局あるある”を交えながら教えることで、受講者は薬局業務に即しながら調剤Melphinの特徴をきちんとお客様に説明できるようになります。また、MDSOLでは、業界情報の収集やユーザーニーズを把握するため医療系の業界団体の活動に積極的に参画しています。ここで得られた情報は勉強会などを通じて代理店にも共有しています」

こうした代理店の人材育成を継続することで、全国のお客様に安心を提供しています。

短期間で法改正に対応できる開発力と工夫

法律が関係する業務システムは法改正へのタイムリーな対応が求められます。

開発を担当している流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケアソリューション部 部長の高野謙司氏は、短期間で新しい法律に対応するため開発現場には様々なノウハウがあるといいます。

「国の審議がなかなか終わらずに、新しい法律(改正法)が施行される数週間前になってようやく要件が固まることがあります。そこから開発を始めても間に合わないので、あらかじめ“こうなるだろう”という予測を基に作り込んでおきます。例えば、可能性のある複数の処理ルーチンを用意しておき、要件が確定次第プログラム内のフラグをセットすることで所定の処理を選べるといった作り方をしています。初めて開発に参加した時は、こうした独特の作り方の工夫に驚きました」

2020年には新型コロナウイルス感染症対策で行った法改正への対応がありました。

「外部環境の変化とともに、近年はイレギュラーな間隔での法改正が増えています。例えば2020年12月には新型コロナウイルス関連の保険点数が新たに加えられるという突然の施行がありましたが、1週間ほどでシステム改修を終えました」(高野氏)

新型コロナウイルスの感染拡大は、これまで対面に限られていた服薬指導が電話やオンラインでも認められるなど、薬局業務にも変化をもたらしました。

「今回、これらの変化に対して制度改正は一気に進みました。法改正に短期間に対応する開発体制を確立していることで、こうした前例のない変化に対しても素早く対応することができています」(近内氏)

調剤Melphinを手足のように使いこなす現場のお客様

調剤Melphinを導入した薬局によく訪れるという重富氏は、お客様から様々な意見やリクエストを受け取るそうです。

「私どもはどうしても物事をシステムの側から考えてしまうので、現場のお客様からの意見には目からウロコの部分が数多くあります。このような意見をうまくシステムに落とし込んで提案することが求められています」

一方、毎日使うツールだけにベテランのお客様の熟練さには開発者も驚かされるといいます。

「調剤Melphinはほとんどの操作をキーボードで行えるようにしているので、操作を暗記してほとんど画面を見ずに使えるお客様も珍しくありません。特に医療事務の方は本当に職人のようなスピードで使っています。そのためバージョンアップでマウス操作が必要になったり、キーを押す回数が変わるとお叱りを受けることもありますが、頂戴したご意見やご感想は製品改良に役立てています」(長尾氏)

調剤Melphinのようなレセコンは、薬局で働く人の業務効率を大きく左右します。例えばチェーン店が本部の指示で急にレセコンを変更すると、慣れないシステムを使いたくないために退職者が出る場合さえあるといいます。

「チェーン店の本部にとっては、店舗間の人員融通やデータ活用などを考えると全店でレセコンを統一することが望ましいです。一方、医療事務の方にとってレセコンの変更は死活問題です。そのため、他社のレセコンから調剤Melphinに入れ替えていただく時には、計画段階から本部とMDSOL間で綿密な打ち合わせを行い、しっかりと計画を練ったうえで各店に展開させていただきます」(重富氏)

薬局のITも現場の効率化からデータ活用へと進化

チェーン店本部からの要望として、より高度なデータ分析機能が欲しいとの声が多いといいます。

「ご要望の多い機能としては、例えば、流通業界で行われている売れ筋商品や顧客層などの分析が挙げられます。以前のIT化は薬局内の業務効率化が主で、調剤Melphinを入れて終わりというお客様が多かったのですが、今は在庫などもシステムできちんと管理することが当たり前になりました。」(長尾氏)

薬局はM&Aによるチェーン化が進んでおり、これがネットワークによるデータ活用を加速させています。さらに、国の制度も薬局のオンライン化を後押ししています。

「2021年3月下旬からは健康保険証の資格確認がマイナンバーカードを使ってオンラインで行えるようになります。さらに電子処方箋の本格的な運用も始まろうとしています。今後もネットワークを使った薬局業務のデジタル化と、介護・病院などとの多職種連携がますます発展していくと思います」(高野氏)

こうした流れの中でソリューションを提供する側にもネットワークやサーバーといったITインフラサービスの高度化が求められています。

「最近は、独自のVPN※1やデータセンターをお持ちのお客様も増えています。例えば、お客様のVPNとMDSOLのVPNを接続したうえで、お客様のデータセンター内にMDSOLのクラウドシステムを構築したことがありました。薬局業務に直接関係する部分だけでなく、ネットワーク間の接続やデータセンターの活用といったところを含めてご提案できるところがMDSOLの強みです」(重富氏)

「MDSOLには営業部門にもネットワークに精通したメンバーがいますし、調剤Melphinだけでなく利便性の高いシステムを構築する総合力がMDSOLの特長です」(近内氏)

MDSOLの総合力を示す例としては、他社のレセコンから調剤Melphinに移行する際、それまでできていなかった経営分析システムの構築や経理システムとの連携を実現したり、200店舗を有する大手チェーンに調剤Melphinを導入するのと同時に本部システムを短期間で構築した実績などがあります。

  • 1 VPN(Virtual Private Network):インターネットを利用した仮想的な専用線で通信する技術

データの活用によって未病の人を見つけて早期に対応

薬局だけでなく病院や介護施設などヘルスケアに関わる様々な分野でオンライン化が進み、薬局・病院・介護施設がシステム連携することで新しいヘルスケアサービスの実現が期待されています。

近内氏はこれからの薬局向けシステムの方向性について、次のように語ります。

「今後、ヘルスケア関連のデータは爆発的に増えていきます。薬局、病院、介護、自治体、企業のデータを統合すると『未病』、つまりまだ病気になっていないけれど病気になる恐れがある人を見つけることが期待できます。未病の人が健康を維持するための方策としてはOTC医薬品※2やサプリメントなどを活用したセルフメディケーション※3があります。これからの薬局は処方薬の服薬指導に加え、OTC医薬品などの提供も行う患者の健康相談窓口の役割を担うことが予想されます」

MDSOLには調剤Melphin以外にも様々なソリューションがあります。加えて、最近ではユニークな技術を持つ医療系ベンチャーとの連携により新たなソリューション開発にも取り組んでいます。

「将来的には、調剤Melphinを中心として様々なシステムやデータを連携させることでヘルスケア全体のICT化を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していきます」(近内氏)

  • 2 OTC:処方箋無しに購入できる医薬品
  • 3 セルフメディケーション:自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること

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