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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.109

エコな惑星探査機ジュノー、木星に到着

南の空は、5月末に地球に接近して話題になった火星や、土星などがさそり座の星々と共に輝いていて、ずいぶんと賑やかである。一方、宵の西空に目を向けると、そこにもひときわ落ち着いた輝きを放つ明るい星が沈みかけているのに気づくはずだ。太陽系惑星の王者、木星である。5月に地球に中接近した当時の火星とほぼ同じ明るさ、つまりマイナス2等で堂々と輝いている。

木星は土星に負けず、人気の天体である。比較的小さな天体望遠鏡で眺めても、木星の横には四つの月、ガリレオ衛星を簡単に見ることができるし、それらの位置も夜ごとに変わっているのがわかる。ちょっと大きめの天体望遠鏡なら、木星本体の表面を東西に走る明暗の縞模様や、赤い目玉のような模様である大赤斑を見ることができるはずだ。木星は自転周期が10時間弱と、図体の割には早いので、眺めている内に模様が移り変わっていくのがわかる。

そんな木星は、今年話題の天体の一つになりそうである。というのも、7月5日(アメリカ時間では7月4日の独立記念日)に、NASAの惑星探査機ジュノーが木星に到着したからだ。2011年8月に打ち上げられたジュノーは、逆噴射エンジンを35分間噴いて、木星周回軌道に乗るのに成功した。直後は周期53.5日の長楕円軌道だが、その後に軌道修正を行い、周期14日の科学観測軌道に移り、数カ月をかけて、慎重に観測装置などの試験を行った上で、秋には本格的な観測に入る予定である。運用は2018年2月までである。

ジュノー探査機と木星(イメージ)(提供:NASA/JPL-Caltech)

ジュノーは、木星の起源と進化を探ることを目的に打ち上げられた探査機で、9つの科学観測機器を搭載している。木星内部の巨大な中心核(コア)の確認、木星を取り巻く強力な磁場の観測、オーロラや大気成分の計測が行われる。特に、大気成分の測定では水の謎に挑む。大気中には水が存在するといわれているが、実際、どのくらいの量が存在するかがわかれば、木星そのものが太陽系の初期にどのように生まれたかを探る重要な手がかりになると同時に、地球の水の起源にもヒントを与えるかもしれない、と期待されている。

搭載機器でユニークなのは「ジュノーカム」である。これまでにない高画質で木星の姿を映し出してくれるカメラと期待が高いが、それだけでなく一部の観測時間を一般枠として設定し、撮影観測対象を一般の人から募るという、惑星探査機では初の試みを行っている。このカメラは木星の強い放射線などにより、数ヶ月で壊れる可能性が高いのはいささか残念である。

これまで木星に近づいた探査機では、1970年代のパイオニアやボイジャーが有名だが、いずれも通り過ぎただけだった。それでも木星のダイナミックな大気の動きをクローズアップしてくれた。木星を周回したのは1990年代のガリレオ探査機のみで、その意味ではジュノーは四半世紀ぶりの木星探査機となる。その分、期待も大きく、木星に関する新しい知見が得られるに違いない。

ジュノーカムが撮影した初画像。3つの衛星(イオ・エウロパ・ガニメデ)も捉えています。
(提供:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS)

ところで、このジュノーは今までの探査機と異なり、かなりエコである。木星よりも外側に向かった探査機は、すべて電源としては原子力電池を搭載している。太陽から遠いために、これまでは太陽電池では必要な電力を確保できなかったからだ。しかし、ジュノーは長さ20メートルにも及ぶ長い太陽電池パネルを搭載し、動力源を確保する木星以遠では初の探査機なのである。

ちなみにジュノーとは、最高神ジュピターの妻の名前である。探査機にはフィギュア3体(ジュピター、ジュノーそしてガリレオ)が収められていること、そして独立記念日に到着させたことなどは、いかにもアメリカの探査機らしい。