介護職員が夜間ひとりでご利用者の対応をすることを指して、『ワンオペ夜勤』と呼ばれています。
人材不足が常態化する介護業界では、多くの施設でワンオペ夜勤での対応が求められていますが、法律的には問題ないのでしょうか。
2024年7月10日
介護職員が夜間ひとりでご利用者の対応をすることを指して、『ワンオペ夜勤』と呼ばれています。
人材不足が常態化する介護業界では、多くの施設でワンオペ夜勤での対応が求められていますが、法律的には問題ないのでしょうか。
厚生労働省が定めた人員基準を守り、適切に休憩を取れる環境であれば、ワンオペ夜勤は違法ではありません。対応するご利用者が20名以下、かつ休憩を1時間以上取れることが条件です。
ただ、たとえ基準を満たしていても、介護施設の状況次第では大きな負担を強いられるおそれもあり、ワンオペ夜勤の解消を求める労働組合が厚生労働省に対して要望書を提出した事例もあります。
では、実際に問題提起もされている、介護のワンオペ夜勤の現状について考察していきましょう。本コラムでは、介護職員で構成された労働組合『日本介護クラフトユニオン(NCUU)』が行なった「グループホームでのワンオペ夜勤」に関するアンケートをもとに解説します。
同アンケートでは、グループホームにおいて1ユニット10名程度のご利用者を対応する夜勤の場合、介護事業所の98%がワンオペ夜勤で対応していると回答しました。
また、夜勤中の介護の実状として、就業規則または労働契約書に休憩時間の取得が明記されているにもかかわらず、「あまり取れていない(45.4%)」「まったく取れていない(32.3%)」と回答しています。
夜勤中の休憩時間に関しては、以下のような意見がありました。
さらに、休憩が取れなかった場合でも60.5%が「別途休憩時間は取れていない」と回答するなど、ワンオペ夜勤の過酷さが浮き彫りになっています。
続いて、介護のワンオペ夜勤について介護実務者としての筆者の経験から3つの問題点を考察します。
介護のワンオペ夜勤において休憩がとれない構造は、下記の3点が考えられます。
たとえば、夜勤での勤務時間が夕方17時から翌朝10時までとします。早番の職員Aが7時から16時、遅番の職員Bが10時から19時の場合、夜勤者の職員Cは19時から翌朝7時までの12時間はワンオペでの対応となります。
また、ご利用者様は日によって体調が変化したり、夜中に施設内を歩き回ったり、ナースコールを頻回に押されたりと、休憩が取れない場合があります。
夜勤者が休憩をとれるようにするには、勤務時間の変更や業務の見直しなどを通じて、夜勤者の業務負担を少しでも軽減する必要があるでしょう。
もし、緊急時の対応マニュアルがしっかりと周知されていなければ、ご利用者の転倒など万が一アクシデントが起きた際の対応に不安が募り、夜勤を担う職員にとって精神的ストレスとなります。
緊急時の対応マニュアルが所内で徹底されていなければ、職員とのミーティングを設けるなど、組織全体で業務を見直すことが大切です。
介護のワンオペ夜勤は、長時間1人で対応するため、不安を抱えやすい状況です。複数のフロアがある施設であれば他の職員もいるため、何かあった際に助けを求められます。しかし、グループホームのような施設の場合は、建物内に1人になる状況は珍しくありません。
夜勤者の負担軽減のためにも、緊急時の対応マニュアルの共有はもちろん、業務で困った際に相談できる連絡先を定めておくことも大切です。
ワンオペ夜勤をする際の注意点について、こちらも筆者の経験を踏まえてご紹介します。
ワンオペ夜勤の場合、必ず仮眠時間がとれるとは限りません。そのため、夜勤の前に適度な仮眠をとるなど休息の時間を設けることが大切です。
適切な仮眠時間は人によりそれぞれですが、少なくとも30分から1時間程度は休む時間を作ったほうがいいでしょう。もし、なかなか仮眠がとれないという方は、少しの間横になるだけで体を休められます。
ポイントは、夜勤日でも普段どおりに起床し、夜勤前に少し体を休めることです。生活リズムを極力崩さないようにしましょう。
ワンオペ夜勤は、その場でほかの職員と情報共有はできません。夜勤前には必ず、昼勤の職員からご利用者の状態を詳しく聞き、夜勤中に適切な対応をとれるように準備しましょう。
たとえば、以下のような情報が参考になります。
ささいな情報でも、夜勤中にご利用者が急変するリスクを予想できるかもしれません。ちょっとした変化を見落とさないことが、夜勤中の対応をスムーズに進めるポイントです。
夜勤中の連絡体制は、必ず確認してから現場に入りましょう。たとえば、以下のような状況が発生した際に、どこに連絡するのか把握しておくことが求められます。
施設によっては曜日ごとに担当する医師や看護師が決められています。また、業務上の相談は管理職に連絡する仕組みをとられている施設もあるでしょう。
いずれにせよ、緊急時にすぐ対応できるよう、連絡体制を事前確認しておくことが大切です。
ワンオペ夜勤は、日勤の職員が不在の時間帯以外は、すべての業務を一人で進めなければいけません。そのため、以下のような業務の事前準備が大切です。
オムツやパット類の補充や薬のセットなどは、可能なら日勤の職員がいる夕方に済ませておくといいでしょう。
また、夜勤中はご利用者の転倒や急変など、一人では対応が難しいさまざまな事態が想定されます。早めに対応できる業務は事前に済ませ、少しでも余裕のある状態にしておきましょう。
夜勤明け当日に帰宅後、寝すぎてしまうとその日の夜に眠れなくなり、昼夜が逆転するおそれがあります。
その日の疲労感や体調、体質による個人差があるため、最適な睡眠時間は人それぞれです。
夜勤だけでなく早番や遅番などの日勤を担当する場合もあるでしょう。ご自身にとって最適な生活リズムを把握し、留意して体調を整えることが大切です。
ワンオペ夜勤の負担を減らすために、筆者が心がけていた“疲れにくい夜勤中の過ごし方”を紹介します。
具体的な方法をご紹介するので、ぜひ自分にあった方法があれば活かしてみてください。
ワンオペ夜勤時は、ご利用者の状況により休憩時間が左右されます。休めない場合も想定されるため、状況をみてこまめに休憩をとることが大切です。
とくにご利用者が落ち着いて眠っているときは、職員もなるべく休んだほうがいいでしょう。寝静まった時間に物音を立てると、ご利用者が目を覚ましてしまい不眠につながるおそれもあります。
夜勤中は食事の量にも気をつけましょう。満腹になると眠気や怠さを助長することが考えられます。
脂っこいものは胃もたれにつながるかもしれないため、野菜やスープなども含めたバランスのいい食事を心がけましょう。
カフェインを摂取する場合は、摂取してから30分〜2時間程度で効果が最大になるため、コーヒーやエナジードリンクを飲む際は、休憩後や朝の業務開始前などがおすすめです。
夜勤中は、以下のようなタイミングで軽いストレッチを行うことで、疲労感がやわらぎます。
ストレッチをはじめ、身体を動かすことで交感神経を優位にして眠気が覚めやすくなります。
排泄介助や起床介助は重労働です。ストレッチで身体を動かして温めておくことで、腰痛予防や疲労の蓄積を軽減する効果も期待できます。
また、ストレッチと深呼吸を組み合わせればリラックス効果も期待でき、ワンオペ夜勤時のストレス軽減にもつながるでしょう。
ここからは、より効果的にワンオペ夜勤の負担を軽減する方法をご紹介します。
本日から実践できるものもあるため、ぜひワンオペ夜勤の際にお役立てください。
以下のような業務は、夜勤中に行うことが多い仕事ですが、ワンオペ夜勤の際は職員の負担が大きくなります。
朝の起床介助や朝食の準備は、日勤の職員が出勤してから行なっても決して遅くありません。翌日の入浴準備も同様です。
レクリエーションの準備については、夜勤者に余裕がある場合のみ行う形にして、ワンオペ夜勤の職員の負担を増やさないように配慮しましょう。
早めに準備できる業務は、予め行なっておくと時間に余裕が生まれます。
とくに夜間の記録業務は、排泄や睡眠状況、バイタル測定など範囲が広いため、最後にまとめて行うのは大変です。対応した際にその都度記録することを心がけましょう。
可能であれば、ワンオペ夜勤の時間をできるかぎり短くすることが、もっとも負担を軽減できます。
たとえば、以下のような変更案が考えられます。
長時間夜勤から準夜勤のような形にシフトを組み、22時に出勤し翌7時に退勤できれば、ワンオペ夜勤の時間は8時間で済みます。
また、16時間夜勤のままでも、早番と遅番の勤務時間を調整すれば、ワンオペ夜勤の時間を短くできます。
ワンオペ夜勤者が休憩を確実にとれるように、フリーの夜勤者を1名配置することも効果的です。フリー夜勤者は、ワンオペ夜勤の職員が休憩中に介護業務を行なう場合があるため、『介護職員初任者研修』以上の資格を持っていることが条件となります。
フリー夜勤者を配置することで、休憩だけでなく緊急時のサポート要因としての役割も期待できるため、非常に心強い存在と言えます。人件費や新たな人員の採用も関係するため、すぐには実践できない場合も考えられますが、可能ならば施設内で検討してみると良いでしょう。
ワンオペ夜勤の業務負担軽減策として、注目されているのが介護ロボットの活用です。たとえば『見守りロボット』や『センサーマット』などを効果的に使えば、巡視や体調確認などの業務の負担が軽減できます。
ワンオペ夜勤の負担軽減に効果的な介護ロボットの例として『次世代予測型見守りシステム Neos+Care(ネオスケア)』が挙げられます。
『Neos+Care』の特徴は、以下のとおりです。
進化を続ける介護ロボットは、介護現場の負担軽減のために需要が広がっていくことが予想されます。
介護における夜勤は長時間で、職員の心身への負担が大きいことが懸念されています。とくに夜間職員ひとりで対応するワンオペ夜勤は、休憩を満足にとれない施設が多く、職員が疲弊している施設もあります。
長年、介護現場の課題である人手不足の解消は、今後も求められるでしょう。しかし、人手を増やすことは容易ではありません。
勤務時間や業務内容の変更や介護ロボットの積極的な活用など、今の人員で実現可能な対策の検討が重要になるでしょう。
津島 武志
介護系WEBライター
介護業界16年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。現役の介護職以外に、介護系のWebメディアにおいてのライター活動をはじめ、介護士さんを応援するメディア「介護士の転職コンパス」や「介護士の副業アンテナ」などの運営にも取り組んでいます。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士。