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2026年6月2日

調剤薬局の現場に広がるAI活用‐現状の整理と具体例を解説

調剤・介護・福祉 調剤薬局 生成AI 薬局DX 日本国内の調剤薬局は、大きな転換期を迎えています。

高齢化に伴い慢性疾患の患者が増加し、調剤薬局や薬剤師が担う役割は拡大の一途をたどっています。在宅医療への参画や服薬期間中の患者フォローの義務化など、薬局に求められる機能は年々複雑化し、現場では業務効率化の推進が求められている状況です。

目まぐるしく変化する環境の中で、注目を集めているのがAI活用による業務変革です。本記事では、医療・調剤領域に求められるAI利用の要件や今後の活用可能性について解説します。

薬局の中核業務である薬歴業務を強力に支援する専用ツールも紹介し、AI活用による薬局DXの可能性を探ります。

目次

AIツールを活用した業務効率化が進むビジネスシーン

生成AIが普及し、AIは企画・営業・総務・人事・マーケティングなど幅広い職種で活用され始めました。

日常業務の中で頻繁に発生する「文章作成」「情報整理」「資料作成」といった業務は、時間を取られやすい一方で定型化されていることが多く、AIによる業務効率化を図りやすい領域といえるでしょう。

例えば、「議事録の要点をまとめる」「複数の資料を読み込んで一つの説明文にする」「読み手に合わせて文章を言い換える」など、人が担っていた業務を短時間で進められます。

また、AIはデザイン・画像・音声などをスピーディに制作でき、クリエイティブ領域でも活用が広がっています。

AIツールを活用した業務効率化が進むビジネスシーン

生成AIの活用シーン【1】自然言語処理に優れる

生成AIは、ビジネス文書の作成や要約にて活用されています。具体的な活用シーンは、ビジネス文書(メール・案内文・社内通知など)や提案書、FAQ、議事録の要約などです。文章を作成するだけでなく、文のトーンを「丁寧に」「簡潔に」など調整できる点も強みです。

文章をゼロから考える負担を減らすとともに、生成AIによるアウトプットを人が確認・修正するフローとすることで、スピードと品質の両立を目指す動きが広がっています。

生成AIの活用シーン【2】デザインやイラストをスピーディに作成

クリエイティブにも力を発揮する生成AIは、チラシやバナー、プレゼン資料の見出し画像や説明用の図解などを作成できます。作成スピードが速く、アイデアを考える際に複数案を比較・検討できるため、「たたき台」としても役立つ点が強みです。

企画・営業資料や告知物の作成を支援するツールとして、ビジネスシーンに定着しつつあります。

生成AIの活用シーン【3】文字起こし・翻訳・要約にも力を発揮

「会議や商談などで録音・録画した音声の文字起こし」「外国語の文章を自然な日本語に翻訳」「表や箇条書きなどのデータを整理して要約」など、生成AIはビジネスシーンにおけるさまざまな場面で力を発揮しています。

議事録作成、海外資料の翻訳、多種多様な情報の整理など、時間を要する日常業務の効率化を強力に支援する生成AIは、ビジネスシーンにおいて業務全体の生産性を底上げする存在といえるでしょう。

医療・調剤領域は安全性・正確性が最優先

ビジネスシーンでの活用が進むAIツールですが、医療・調剤領域での本格的活用には至っていません。

一般的なビジネスシーンでは「多少の誤りは人が確認すればよい」という前提でAIを使う場合が少なからずあります。

しかし、一つの誤りが患者の健康や生命に直結しかねない医療・調剤などのヘルスケア領域では、その前提が通用しません。AIが持つ利便性よりも「安全性」と「正確性」が最も重要視されます。

医療・調剤領域でAI活用が難しい理由【1】正確性の保証が難しい

一般的なAIツールは、医薬品データベースと連携していません。そのため、

  • 薬剤名の誤記
  • 相互作用の誤答
  • 用法用量の不正確な説明

といった医療事故につながるリスクがあります。

生成AIは文章の生成を得意としていますが、学習する情報の質によっては生成された文章が必ずしも正しいとは限りません。

仮に誤った情報をそのまま薬歴への記載や服薬指導に利用してしまうと、誤情報を含んだ説明となり、調剤過誤につながる危険性があります。

そのため、一般的なAIツールを医療・調剤領域の中核業務に用いることは適切ではありません。

医療・調剤領域でAI活用が難しい理由【2】個人情報を入力できない

患者の氏名・年齢・住所・病歴・服薬状況は、いずれも厳重に管理すべき要配慮個人情報です。要配慮個人情報を安易に外部サービスに入力することは、情報漏洩や意図しない二次利用につながる危険性が高い行為といえます。

要配慮個人情報を扱う組織として大きなリスクを伴うため、現時点では一般的なAIツールを医療・調剤領域の中核業務に利用することは許容されません。

医療・調剤領域でAI活用が難しい理由【3】法令・ガイドライン対応が不十分

医療情報システムは、「薬機法」や「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」など、多くの法令・制度に準拠する必要があります。

しかし、一般的なAIツールは現時点で医療・調剤領域における運用要件を満たしていない場合がほとんどです。

「作業効率が上がるから使いたい」「便利だから使おう」という理由でAIツールを使用してしまうと、ガイドライン違反に該当するリスクがあります。

AIを利用するにはルールの整備と遵守が不可欠

AIの活用が進む中で、医療・調剤領域では新たなルールの整備が求められています。そして、従業員全体でルールを遵守する体制の構築が欠かせません。

まずは、個人情報の保護と医薬品情報の正確性の観点から、AIに対する現場の意識を確認する必要があります。

例えば、「個人情報をAIに入力してはいけない」と理解していても、「どこまでが個人情報に該当するのか」という基準が曖昧であれば、現場や従業員によって判断が異なってしまいます。

その点を踏まえ、少なくとも以下の3点を明確なルールとして定める必要があります。

  • 個人情報(患者氏名・住所・病歴など)を、一般的なAIツールに入力しない
  • 医薬品名・用法用量・副作用に関する情報を、一般的なAIツールから取得しない
  • 医療情報は一般的なAIツールから取得せず、必ず信頼できる薬学データベースなどから確認する

ただし、ルールは時間とともに形骸化しやすいものです。AIは日々進化する先進的な技術のため、ルールの定期的な見直しや再教育が欠かせません。

そのため、医療・調剤領域に配慮した設計で、セキュリティー・正確性・ガイドライン対応が担保された専用AIやクラウドサービスを活用することが、現実的かつ合理的な選択肢として注目されています。

薬局業務の中核は「専用AI+クラウド基盤」で支える時代へ

薬歴記録や服薬指導といった調剤領域の中核業務を支える新たなサービスとして、近年はAIを活用した「クラウド版電子薬歴」が注目されています。

薬局DXを支える専用プラットフォーム「AnyCOMPASS(エニーコンパス)クラウド版電子薬歴サービス」

次世代コミュニケーションサービス「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴サービス」は、レセコン・薬歴・在宅・店舗管理など薬局に必要な機能を一元化し、薬局DXを強力に推進するクラウド型のプラットフォームです。

病院における問診支援などを提供するAI技術の薬局版として、薬剤師の業務を大幅に効率化します。

薬局システムの豊富な開発実績を持つ三菱電機デジタルイノベーションのクラウド基盤

三菱電機デジタルイノベーションは、レセコン「調剤Melphin」を中心に、30年以上にわたり薬局システムを開発してきました。

豊富なノウハウをクラウド基盤上に統合し開発した「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴サービス」は、「しっかり」「スピーディ」「つながる」をコンセプトに開発。

「しっかり」質の高い服薬指導を実現

  • 薬学データベースと連携した服薬指導ガイド
  • 患者の疾患や背景に応じた共感指導
  • 薬剤師の知識差を補う支援機能

「スピーディ」入力負担の大幅軽減

  • 独自特許技術による「患者タイムライン」表示
  • 過去薬歴・処方歴を即時把握
  • 直感的な画面UIにより入力時間を短縮

「つながる」店舗・在宅・地域連携を強化

  • 複数店舗間でのデータ共有
  • 訪問先からのクラウドアクセス
  • 地域包括ケアにおける情報連携を想定

「グループ内での店舗間連携」「在宅対応」「安定稼働」「情報連携の高速化」といった、薬局が抱えるさまざまな課題を解決します。

生成AIを活用した革新的な「AIアシスタント機能」

特筆すべきは、生成AIによる薬歴作成と服薬指導支援です。病院で普及しつつある医療文書AIの薬局版ともいえる機能で、薬局業務向けに最適化しました。服薬指導支援に対応することで、現場で活躍する薬剤師の中核業務をサポートします。

具体的には、次のような革新的な支援が可能です。

《患者ごとに最適な服薬指導ポイントを自動提案》
AIが患者の過去薬歴や疾患、生活状況を踏まえて指導ポイントを自動提案します。

新人の薬剤師は一定の指導品質を担保でき、ベテランの薬剤師は指導漏れを防ぐことができます。

《会話内容を自動でSOAPに整理し薬歴へ反映》
同製品のAIアシスタントは、

▼服薬指導中の会話をテキスト化
▼SOAP形式に自動変換
▼内容を要約したサマリーを作成

といった一連の作業を自動で行います。薬歴作成の大部分をAIが担うことで、薬剤師は患者とのコミュニケーションに集中できます。

《薬学データベースによる高精度化》
同製品のAI機能は、東大発・ヘルスケアAIベンチャー「mediLab」と共同開発。

「薬学データベースをプロンプト(AIへの指示分野設定情報)に格納」「薬剤師の思考モデルを注入し、ハルシネーション(誤情報生成)の抑制」を組み合わせた高精度な仕組みを採用するなど、医療現場の品質要件を満たしています。

「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴サービス」が薬局DXを推進

調剤領域において、一般的な生成AIツールは

  • 文書作成の補助
  • 啓発資料の作成
  • 多言語対応

など、「個人情報の取り扱いが不要で、専門性や正確性がそれほど求められない周辺業務」に限り、業務効率を高める可能性があります。

一方で、薬歴作成・服薬指導・患者フォローといった調剤領域の中核業務では、

  • ガイドライン準拠
  • 医薬品データベース連携
  • 医療AIの正確性
  • セキュリティーの確保

が求められるため、「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴サービス」のような専用システムが大いに役立つでしょう。

つまり、調剤領域におけるAI活用の可能性は

◎一般的な生成AIツール ⇒ 日常業務の一部を支援
◎「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴サービス」などの専用ツール ⇒ 中核業務を安全かつ効率的に支援

といった併用により、強力に推進できると考えられます。

AIエージェントが生み出す新たな薬局体験

調剤領域におけるAI活用は、さらに次の段階へと進みつつあります。

2024年後半から2025年にかけて、生成AI分野では単なるテキスト生成から「AIエージェント」への進化が加速しています。AIエージェントとは、大規模言語モデル(LLM)を核として、外部ツールの呼び出し、複数ステップの推論、自律的なタスク実行を可能にする技術体系です。

従来の生成AIが「質問に対する回答を生成する」受動的な存在であったのに対し、AIエージェントは目標達成に向けて複数のステップを自律的に実行し、必要に応じて外部のデータベースやAPIを参照する能動的な動作が可能となります。

この違いは医療分野において特に重要であり、LLMの事前学習データのみに依存せず、最新かつ正確な医薬品情報データベースを参照することで、ハルシネーションのリスクを大幅に低減できます。

これらの技術を活用し、三菱電機デジタルイノベーションは「AIエージェントが生み出す新たな薬局体験」をコンセプトに、「保険薬局向けオールインワンプラットフォーム」の開発に着手しています。

その背景には、レセコンと電子薬歴を異なるメーカーで利用することによる

  • 画面操作の違い
  • データの二重入力が発生
  • サポート窓口が分断されている

といった、調剤領域の現場で長年指摘されてきた課題があります。

これらの課題解決を担うAIエージェントを中核に据え、薬局業務全体を横断的に最適化する取り組みが進められています。

一画面で業務を完結できるオールインワン設計

「保険薬局向けオールインワンプラットフォーム」では、従来別々に利用されることが多かったレセコンと電子薬歴をシームレスに統合。AIエージェント技術により処方箋の受付から服薬指導、薬歴作成、さらには業務提案といった一連の薬局業務の支援を目指しています。

具体的には、「処方内容の自動チェック」「業務提案」「調剤完了時間の目安提示」などを行うAIエージェントによるサポートをはじめ、薬剤師アバターが受付を担う「オートレセプション」、レセコンと電子薬歴を意識せず「一画面で業務を完結できるオールインワン」設計で開発が進められています。

また、同製品の開発は「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴サービス」で連携した「mediLab」の技術協力を受け、調剤領域に特化した高信頼のAI技術をベースに進められています。

既に、プロトタイプは薬剤師向けの学術大会や展示会で参考出展されており、現時点では2026年度中のサービス提供が予定されています。

まとめ-調剤薬局におけるAI活用の未来

調剤領域は、薬局DXの中で大きな変革の時代を迎えました。薬局の中核業務を支える「クラウド版電子薬歴」のようなシステムをはじめ、開発が進む「AIエージェントを活用したオールインワンプラットフォーム」など、薬局業務の最適化を目指して進化し続けています。

AIは薬剤師の仕事を置き換えるものではなく、人が担うコミュニケーションや判断に集中するための環境を整える存在として、着実に浸透し始めています。調剤領域に特化した専用AIの活用により、薬剤師が本来注力すべき「患者とのコミュニケーション」「安全な服薬支援」に多くの時間を割けるようになります。

AI活用を検討する調剤薬局にとって、「まずは活用できるところから始め、段階的に広げていく」ことが、薬局DXを現実的に推進するポイントといえるでしょう。

調剤領域にて専用AIの導入を検討する際には、セキュリティーやガイドライン遵守が担保された「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴サービス」や「保険薬局向けオールインワンプラットフォーム」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

薬局におけるAI活用やDX推進は「未来の話」ではなく、既に始まっている大きな潮流です。AIを安全かつ効果的に使いこなし、患者と地域を支える新しい薬局像を実現しましょう。


著者プロフィール

杉山 義明

アアル株式会社(認定支援機関・経営革新等支援機関・経営コンサルティング)代表取締役
中小企業診断士・薬剤師・MBA

ものづくり補助金、省力化投資補助金、事業承継・引継ぎ補助金等を活用した新規事業支援や、M&A支援を得意とし、経営戦略及び事業計画策定と業務のDX化の同時支援で、戦略レベルから生産性を高めることを目指したコンサルティングを実践している。


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