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2026年10月6日

令和8年度診療報酬改定を経て、いま薬局が取り組むべきこと

調剤・介護・福祉 調剤薬局 薬局DX 診療報酬改定 診療報酬改定では、医療行為などの技術料にあたる「診療報酬本体」と、医薬品の価格に関わる「薬価等」が見直されます。令和8年度診療報酬改定では、このうち診療報酬本体の改定率が+3.09%となりました。

これは高水準のプラス改定であり、一見すると医療機関や薬局にとって追い風のようにも見えます。しかし、改定内容を読み解くと、調剤領域にとってプラスばかりとはいえません。

改定では、賃上げ対応の新設点数が設けられた一方で、特定の医療機関からの処方箋を多く受け付ける、いわゆる門前薬局への評価見直しも行われました。また、加算の統廃合も相次いでおり、従来と同じやり方を続けていると、気づかないうちに収益機会を取りこぼすおそれがあります。

ご自身の薬局では、今回の改定内容を十分に活用できているでしょうか。今回の改定は、薬局経営の方向性そのものを見つめ直す機会です。本記事では、改定の主要ポイントを整理したうえで、いま、薬局が取り組むべき実践的な対応策を考えます。

目次

令和8年度診療報酬改定の概要

令和8年度診療報酬改定における改定率は、本体+3.09%となりました。約30年ぶりとなる高水準のプラス改定であり、一見すると薬局経営にとって追い風のようにも見える内容です。

しかし、本体改定率+3.09%の内訳を見ると、賃上げ対応分+1.70%、物価対応分+0.76%が大きな割合を占めています。つまり、改定財源の多くは、医療従事者の処遇改善や物価高騰による運営コストの上昇を補うことに充てられています。また、これらは令和8年度と令和9年度にかけて段階的に引き上げられる設定です。

令和8年度診療報酬改定を経て、いま薬局が取り組むべきこと

こうした改定の背景には、他産業との人材獲得競争が激しくなるなかで医療従事者の処遇改善が急務になっていることや、物価高騰により医療機関や薬局の運営コストが増大していることがあります。

さらに、少子高齢化に伴い、在宅医療をはじめとする地域医療・介護のニーズが拡大していることも、今回の改定に影響していると考えられます。

医科・歯科領域と比べて調剤領域は実質的には微増に

また、令和8年度の診療報酬改定における「その他改定分」(賃上げや物価高騰対応などを除いた評価部分)の各科改定率を比較すると、以下のような差があります。

  • 医科:+0.28%
  • 歯科:+0.31%
  • 調剤:+0.08%

今回の改定では、入院機能を持つ医療機関に重点的に配分されていることが特徴です。調剤領域については、物価高騰による経営への影響が相対的に低いと見なされた可能性があります。

つまり、今回の改定は「利益を押し上げるための原資」と捉えるのではなく、賃上げや物価高騰への対応、在宅医療への対応と対人業務への転換を進めるための制度変更として受け止める必要があります。

今後は、主に以下3つのポイントを意識した薬局経営が求められるでしょう。

ポイント

具体的な取り組み・対策

調剤管理料の最適化

長期処方と短期処方の割合を見直し、算定への影響を確認する

新規加算の算定

地域支援・医薬品供給対応体制加算、薬学的有害事象等防止加算、医療DX関連の加算(電子的調剤情報連携体制整備加算など)を確実に算定できる体制を整える

業務効率化の推進

電子薬歴や調剤機器を最大限に活用し、DX推進によって対人業務に充てる時間を確保する

注目すべきは、今回の改定が単なる点数の増減にとどまっていない点です。特定の医療機関からの処方箋に依存しやすい薬局では、人件費や物価などのコスト上昇が重なり、収益性が低下するおそれがあります。

これからは、地域に向けて広くサービスを届け、医薬品供給の責任を担う薬局への機能転換が欠かせません。

調剤領域における主要な改定ポイント

調剤領域の改定ポイントを、以下4つのトピックに分けて解説します。

【1】「調剤ベースアップ評価料」「調剤物価対応料」の新設

スタッフの賃金改善を目的とした「調剤ベースアップ評価料」と、物価高騰に対応する「調剤物価対応料」が新たに設けられました。人件費や運営コストの上昇を、報酬で下支えする趣旨です。

ただし、これらは算定すれば自動的に利益が増える類の点数ではありません。

ベースアップ評価料は、実際に賃金改善を行い、その実績を届け出ることが前提になります。あくまで処遇改善の原資と位置づけるのが、実態に近いでしょう。

経営層にとっては、採用難と人材定着という課題に向き合うための一手として活用したい仕組みです。賃上げの原資が制度として用意された以上、それを活用して働きやすい職場をつくれるかどうかが、中長期的な経営における競争力を左右します。

【2】「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の新設

従来の「地域支援体制加算」と「後発医薬品調剤体制加算」は、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」に再編・統合されました。後発医薬品調剤体制加算は廃止され、後発品の使用割合(85%以上)は新加算の基礎的な要件に組み込まれています。

仕組みを整理すると、まず加算1が、医薬品の安定供給に資する体制を評価する入口として新設されました。そのうえで、従来の地域支援体制加算が担っていた地域医療への貢献要件を重ねて満たすことで、上位の加算区分である加算2から加算5を算定できる仕組みになっています。

ここで気をつけたいのは、再編により点数が下がるケースがある点です。旧制度では後発医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算をそれぞれ算定できましたが、新制度ではこれらが1本の加算に統合されました。

そのため、同じ体制を維持していても、合計点数が目減りする可能性があります。減収を避けるには、新たな加算が求める後発品の使用割合や地域医療への貢献といった要件を満たす必要があります。

後発品対応と地域支援機能の両方を高い水準で満たす体制づくりが、これまで以上に求められます。

【3】かかりつけ薬剤師指導料の廃止と服薬管理指導料への一本化

「かかりつけ薬剤師指導料」が廃止され、その評価は服薬管理指導料に含まれる形に再編されました。あわせて、調剤管理料の日数区分も簡素化されています。

従来は、処方日数に応じて段階的に点数が設定されていましたが、改定後は28日分以上の長期処方が60点、27日分以下は一律10点の2区分に整理され、調剤管理加算も廃止されました。8日分以上27日分以下の処方が多い薬局では、調剤管理料の減算による影響が出やすい変更です。

注目したいポイントは、「かかりつけ薬剤師であること」よりも「かかりつけ薬剤師として何を行うか」が評価される仕組みへ転換したことです。継続的な服薬フォローや残薬への対応、処方医への文書提案といった実質的な薬学的介入が、以前にも増して重視されるようになりました。

経営的に見れば、同意取得後の継続的な関わりや薬学的介入の内容が、これまで以上に評価される仕組みに変わったということです。従来は算定できていた加算が取りづらくなる薬局も出てくると考えられるため、対人業務の内容そのものを見直す必要があります。

【4】「門前薬局等立地依存減算」の新設

特定の医療機関への依存度が高い薬局に対し、所定点数から15点を減算する「門前薬局等立地依存減算」が新設されました。あわせて、都市部における調剤基本料の取り扱いも厳格化され、医療モール内に複数の医療機関がある場合の集中率の計算方法も見直されています。

経過措置が設けられているため、既存の薬局に直ちに大きな影響が及ぶわけではありませんが、新規出店の判断や店舗展開の戦略には、立地条件と処方箋構成をこれまで以上に慎重に織り込む必要があります。

立地依存型で経営してきた薬局にとって、この減算は、地域に開かれた薬局への転換を促すメッセージと受け止めるべきでしょう。

対人業務の強化と在宅医療への対応

令和8年度の改定では、「対物中心の業務から、患者への継続的な関わりを重視する対人業務へ」という厚生労働省の方針が、これまで以上に明確になったといえます。

高齢化が進むなか、薬局には地域医療・介護連携を支える役割が、これまで以上に期待されています。その期待は、かかりつけ薬剤師の評価見直しと在宅医療に関する点数拡充という、2つの面に表れています。

「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」の廃止に伴い、新設された「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算」「かかりつけ薬剤師訪問加算」は、継続的な服薬指導や患者宅を訪問して残薬対策などを行った場合に算定可能です。

また、対人業務強化のもう1つの柱が在宅医療です。在宅医療に関する点数も、評価の引き上げや新設が行われました。

ここでは、今回の改定が一貫して打ち出している「対人業務の強化」のなかで、在宅医療への対応に注目して考えてみましょう。

【1】在宅薬学総合体制加算(要件強化と評価の引き上げ)

在宅医療への継続的な対応体制を評価する「在宅薬学総合体制加算」は、今回の改定で算定要件が強化され、評価点数も引き上げられました。単発的な訪問対応ではなく、24時間対応や多職種連携を含む、組織的で継続的な在宅支援体制を整えることを強く促す内容です。

特に上位区分では、在宅訪問の実績だけでなく、患者宅への対応割合、医療用麻薬の備蓄・交付体制、無菌製剤処理への対応といった、専門性の高い在宅医療への対応力が問われます。同一施設への訪問に偏った対応では、上位区分の要件を満たしにくくなる可能性があります。

背景にあるのは、在宅医療のニーズが今後も増え続けるという見通しです。高齢者人口の増加が続くなか、入院治療を中心に医療を完結させる病院完結型から、退院後の在宅医療まで地域の医療機関、薬局、訪問看護、介護事業者などが連携して支える地域完結型の医療へと、医療提供体制はシフトしています。

だからこそ、要件を満たす体制づくりは、目先のコストではなく中長期の経営投資と捉えるべきでしょう。

とはいえ、24時間対応や無菌調剤までを含む体制を一足飛びに整えるのは容易ではありません。だからこそ、早めに着手し、段階的に積み上げていくことが現実的な対応になります。

【2】複数名薬剤管理指導訪問料

新たに設けられた「複数名薬剤管理指導訪問料」は、薬剤師の単独訪問が難しい患者宅に複数名で訪問し、薬学的管理指導を行った場合に評価する点数です。

対象として想定されているのは、認知症などに伴って興奮や攻撃性がみられ、薬剤師1人では安全に指導を実施できないおそれのあるケースです。

同行相手は薬剤師に限られず、薬局や在宅協力薬局のスタッフ(薬剤師以外を含む)も対象です。

処方医が複数名訪問の必要性を認めていることや、対象が単一建物に1人の患者であることなど、いくつかの条件はありますが、これまで評価の根拠が曖昧だった複数名での訪問に、正式な評価軸が設けられた意味は小さくありません。

スタッフの安全を確保しながら、在宅業務を広げていく後押しとなる点数です。

【3】訪問薬剤管理医師同時指導料

「訪問薬剤管理医師同時指導料」は、訪問診療を行う医師と薬剤師が同じタイミングで患者宅を訪問し、協働して指導を実施した際に算定できる新設点数です。

算定点数は150点で、算定回数の上限は半年に1回です。医師と薬剤師が同じ場で患者と向き合い、処方を根本から見直す機会を制度として後押しする狙いがうかがえます。

その狙いの中心は、在宅医療において長年の課題であるポリファーマシー(多剤併用)と残薬の問題です。薬局の薬剤師がチーム医療の担い手として医師と連携する役割を点数として明文化した意味は大きいといえます。

薬剤師の専門性を十分に発揮できる業務が評価されたことは、在宅医療に積極的に取り組む薬局にとって確かな追い風です。

業務効率化とDX推進が薬局経営の鍵となる

在宅業務を含む対人業務の強化は、評価される薬局になるために欠かせないポイントです。一方で、現場の視点に立つと、向き合うべき現実があります。

それは業務量の増加です。対人業務を強化するほど、記録や情報共有の負担は重くなります。この負担をどう抑えるかが、改定対応の成否を分けます。

在宅業務拡大がもたらす実務負担と記録管理の課題

在宅業務を拡大すると、相応に業務量が増加します。訪問前後の記録作成、医師やケアマネジャーなど多職種との情報共有、患者ごとの薬歴や介入記録の管理。これらを紙や旧来のシステムで対応しようとすると、薬剤師の負担は一気に膨らみます。

いざ在宅業務を増やそうとしたとき、記録業務の重さに二の足を踏むことは珍しくありません。せっかく評価される業務に力を入れ始めても、事務作業に追われ、本来の薬学的ケアに時間を割けないのでは本末転倒です。

特に、在宅薬学総合体制加算の要件強化に対応するには、訪問記録を適切に残し、多職種や複数拠点の間でスムーズに情報共有できる体制が欠かせません。記録の不備は、算定の根拠を失うことにも直結します。

ここで気をつけたいのは、対人業務の強化と業務効率化は対立するものではないという点です。むしろ、対物業務をDXで効率化して時間を生み出し、その時間を対人業務に振り向けることこそ、改定が求める薬局の姿といえるでしょう。

診療報酬改定を医療DXのスタートラインに

この2つのポイントを制度面から後押ししているのが、医療DXに関する評価の見直しです。令和8年度改定では、従来の医療DX推進体制整備加算が「電子的調剤情報連携体制整備加算」へと再編され、点数も引き上げられました。

電子処方箋への対応やマイナ保険証によるオンライン資格確認、電子薬歴の運用などが要件として求められ、取得した薬剤情報を活用して重複投薬をチェックする体制も新たに加わっています。

ここで押さえておきたいのは、電子処方箋などへの対応は、あくまでDX推進のスタートラインだということです。記録や情報共有の仕組みそのものをいかに効率化していくかが、現場の業務負担を左右します。

制度が求める最低限の対応をクリアしたうえで、さらにDX推進へ踏み込めるかどうかが重要です。

「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴」が薬局の変革を支える

記録管理と情報共有の課題に対する有効な選択肢が、「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴」の導入です。在宅業務の拡大を前進させる基盤になります。

AIアシスタント機能

1つ目の強みは、訪問先でリアルタイムに薬歴を入力・参照できることです。クラウド版のため、タブレット端末から薬歴や訪問記録をその場で入力・確認できます。薬局に戻ってから記録を起こし直す手間を減らせるため、記録の鮮度と精度を高めやすくなります。

また、AIアシスタント機能を活用することで、会話内容や患者情報、過去の処方内容をもとに状況を整理し、服薬指導に役立つ参考情報を得ることができます。

訪問先では、薬局内のように、疑問点をすぐ近くに確認できる状況にない場合もあります。そうした場面でも、AIアシスタント機能を用いて、音声入力や会話内容を踏まえた支援機能により、薬剤師が説明内容を整理したり、確認すべきポイントに気づいたりしやすくなる点は強みです。

記録の一元管理

2つ目の強みは、複数名訪問や医師同時指導といった、今回の改定で新設・強化された場面の記録を一元的に管理できることです。算定の根拠となる記録を確実に残せることは、加算を着実に算定するうえで欠かせません。

在宅対応が増えるほど、訪問内容、指導内容、医師や多職種との連携内容を正確に記録し、後から確認できる体制が重要になります。

患者タイムライン

3つ目の強みは、患者タイムラインによって、患者ごとの経過や対応履歴を把握しやすくなることです。在宅医療では、薬剤師だけでなく、医師、訪問看護師、ケアマネジャーなど複数の関係者が患者を支えます。

患者タイムラインを活用することで、服薬状況や訪問時の気づき、指導内容、連携の経緯を時系列で整理でき、在宅医療でのチーム医療において薬剤師が果たした役割も可視化しやすくなります。

改定への対応、在宅業務の拡大、記録管理の効率化、服薬指導の質向上といった課題を同時に支える仕組みとして、「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴」は実践的な土台となるでしょう。

まとめ:改定を追い風に変えるために

令和8年度診療報酬改定は、「賃上げ・物価対応」「加算の再編」「門前依存への評価見直し」「在宅医療への対応と対人業務の強化」という4つの方向性を示しています。いずれも、立地や対物中心の経営から、患者への継続的な関わりと地域貢献を重視する薬局経営への転換を促すものです。

対物業務をDXにより効率化し、生み出した時間を在宅業務を含む対人業務へ再配分する。この仕組みは、これからの薬局経営の標準形になると考えられます。

その実現には、現場の努力だけに頼るのではなく、記録管理や情報共有、服薬指導を支援する仕組みの活用も重要です。

例えば、「AnyCOMPASS クラウド版電子薬歴」のように、在宅訪問時の記録や患者情報の整理、服薬指導支援を支えるサービスを活用することで、薬剤師が本来注力すべき対人業務に時間を充てやすくなります。

この変化を減収への不安として受け止めるのか、それとも地域で選ばれる薬局へ機能転換する好機と捉えて動くのか。

改定の方向性を正確に読み取り、いかに早く行動するかによって、中長期的な経営成果に差が生まれる可能性があります。


著者プロフィール

杉山 義明

アアル株式会社(認定支援機関・経営革新等支援機関・経営コンサルティング)代表取締役
中小企業診断士・薬剤師・MBA

杉山 義明 杉山 義明

ものづくり補助金、省力化投資補助金、事業承継・引継ぎ補助金等を活用した新規事業支援やM&A支援を得意とする。経営戦略・事業計画の策定から、業務へのAI導入・DX化支援まで、経営と現場の両面を同時に支えることで、戦略レベルから生産性向上を実現するコンサルティングを実践している。


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