三菱電機デジタルイノベーション株式会社
金融事業本部
サービス企画部
サービス開発課
平田 智一 氏
2026年9月
3次元計測アプリ「Rulerless」
3次元計測アプリ「Rulerless(ルーラレス)」は、iPhone/iPadで空間を3Dモデル化し、距離や高さを手軽に計測できるサービスです。2024年5月の提供開始以降、お客様の声を反映しながら機能強化を重ね、設備搬入時の現地調査や設備点検、工場への大型機器搬入シミュレーションなど、活用領域を広げてきました。そして2026年10月には、その空間計測技術を活用した新サービス「Rulerless Truck」をリリース。トラック荷台の積載率をスマートフォンで手軽に計測・共有できるサービスとして、物流業界へも活用の幅を広げています。
「Rulerless」は、一部のiPhoneやiPad※に搭載されたLiDAR(ライダー)スキャナーを利用して空間を3Dモデル化し、距離や高さを計測できるアプリです。動画を撮影するように対象をスキャンするだけで3Dモデルを生成し、その場で測定したい2点をタップすれば、数cm程度の誤差で距離を計測できます。生成した3Dモデルはクラウド上で共有でき、現場へ再訪することなくスマートフォンやPCから確認・計測できる点も特長です。
開発の経緯について、金融事業本部 金融営業部 第一課の甲斐博将氏は次のように語ります。
「当時、損害保険会社のシステム営業を担当していた際、浸水被害の現地被害調査で、調査員がメジャーを使って1軒ずつ計測し、記録していることを知りました。そこから、iPhone/iPadに搭載されているLiDARスキャナーを使えば、低コストかつ手軽に計測できるのではないかと考えました」
これをきっかけに開発に着手し、2023年10月に試用版を公開、2024年5月から本格的な提供を開始しました。同年には、世界最大級のテクノロジー見本市「CES」で「CES 2024 イノベーション・アワード」を受賞しました。その後も現場の声を取り入れながら継続的に機能を強化し、活用領域を広げています。
※対応機種はiPhone 12 Pro/Pro Max、13 Pro/Pro Max、14 Pro/Pro Max、15 Pro/Pro Max、16 Pro/Pro Max、17 Pro/Pro Max、iPad Pro 11インチ(M5、M4、第4/3/2世代)、iPad Pro 12.9インチ(第6/5/4世代)、iPad Pro 13インチ(M5、M4)(2026年8月時点)
三菱電機デジタルイノベーション株式会社
金融事業本部
サービス企画部
サービス開発課
平田 智一 氏
三菱電機デジタルイノベーション株式会社
金融事業本部
金融営業部 第一課
兼 サービス企画部 マーケティング課
甲斐 博将 氏
三菱電機デジタルイノベーション株式会社
金融事業本部
金融営業部 第一課
岡崎 愛 氏
リリース当初は、2点間計測や高さ計測、3Dモデルのクラウド共有などの基本機能を提供していました。その後も継続的に機能強化を進め、OBJファイル形式での3Dデータ書き出し、3Dモデル部分抽出(特許取得済み)、複数3Dモデル合成、写真データ添付、コメント付与などを順次追加してきました。
「営業担当者がお客様の声を直接開発チームにフィードバックする体制を整えています。例えば、空間レイアウトを検討する際に一部の設備だけを移動させたいという要望を受け、3Dモデル部分抽出機能を実装しました。さらに、3Dモデルを共有する際に情報を分かりやすく伝えたいという声を受け、写真データ添付機能やコメント付与機能も追加しています」(甲斐氏)
こうした機能強化を継続するため、本格提供から2年間で8回のバージョンアップを実施してきました。金融事業本部 サービス企画部 サービス開発課の平田智一氏は、その開発方針について次のように語ります。
「バージョンアップの内容は、新機能の追加などの規模の大きなものから、画面上のボタンのUI改善といった細かなものまで様々です。緊急性やお客様からの要望の大きさなどを踏まえ、優先順位を付けて開発しています。営業担当者との定例ミーティングで意見交換を重ね、年4回のバージョンアップを通じて継続的な改善に取り組んでいます」
こうした継続的な機能強化により、Rulerlessは現地調査だけでなく、様々な業界・業務で活用されるサービスへと進化しています。
Rulerlessの特長
浸水被害調査をきっかけに誕生したRulerlessは、現在では設備点検や設備設置の現地調査、工場やプラントへの設備搬入シミュレーション、建築物・土木構造物の点検、不動産管理、店舗レイアウトの検討など、幅広い業務で活用されています。空間を手軽に3Dデータ化できる特長が評価され、導入実績も着実に増えています。
「商業施設やオフィスなどの電気工事を手掛ける三菱電機プラントエンジニアリング様には、受変電設備が設置されている電気室の工事において、設備搬入前の現地調査にRulerlessを採用いただきました。図面や写真に加え3Dモデルを用いて現場を立体的に共有することで、現場責任者やメンバーの理解が深まり、業務効率化につながったと伺っています」(甲斐氏)
また、ある製造業の事業者は、工場に大型機器を搬入する際の経路確認としてRulerlessを活用しています。金融事業本部 金融営業部 第一課の岡崎愛氏は次のように語ります。
「お客様からは、手軽に計測でき、情報共有もしやすいという評価を多くいただいています。これまでは現地で計測した内容を持ち帰って図面化していましたが、Rulerlessならスマートフォン1台で計測から共有まで完結できるため、大幅な効率化につながったという声をいただいています。一度計測したデータは後からスマートフォンやPCで確認できるため、現地へ再訪する必要がなくなり、移動時間や出張費の削減にもつながっています」
こうした顧客の課題起点でサービス機能拡張を進めてきた設計思想が、物流現場の課題解決につながる新サービス「Rulerless Truck」の開発へと発展していきました。
物流業界では、改正物流効率化法への対応などを背景に、輸送効率の向上に向けた取り組みが進んでいます。その中で、積載率を把握・可視化し、荷主と物流事業者が共有できるデータとして活用することの重要性が高まっています。
こうした課題を受け、三菱電機デジタルイノベーションは、Rulerlessの空間計測技術を物流分野へ展開した新サービス「Rulerless Truck」を2026年10月にリリースしました。LiDARスキャナー搭載のiPhoneで荷台を数秒スキャンするだけで、荷室と積荷を3Dモデル化し、積載率を算出できます。計測結果はクラウドへ保存され、荷主と物流事業者が同じデータを共有しながら輸送効率化に向けた検討に活用できます。
「物流業界では、積載率はドライバーの目視や経験に頼ることが多く、荷主も実際の積載状況を把握しにくいという課題があります。そうした中、ある製造業のお客様から物流改善についてご相談をいただきました。現場を確認する中で、Rulerlessの空間計測技術を活用すれば、積載率を手軽に可視化できるのではないかと考え、開発に着手しました。開発時にはメンバーも物流拠点へ足を運び、現場の運用や課題を理解しながら機能やUIを改善していきました」(甲斐氏)
開発チームでは、今後もお客様との共創を通じてRulerlessの活用領域を広げ、「3D計測ならRulerless」と認知されるサービスを目指しています。Rulerless Truckについても、積載率データの集計・分析機能を強化し、共同輸配送や配車計画の見直しなど、物流改善に役立つサービスへ発展させていく考えです。
「搬入ルートAIシミュレーション機能や、生成した3Dモデルを図面化する機能などの実現を検討しています。今後も様々な業界との共創を通じて、業界ごとの課題解決に貢献するサービスを生み出していきたいと考えています」(甲斐氏)
iPhoneで動画を撮るように空間をスキャンするだけで、取得した点群データから3Dモデルを生成し計測できるサービスです。
計測した3Dモデルをクラウド共有することで、遠隔地からでも現場の状況をリアルタイムに把握できます。