ニュースリリース

最新ニュース一覧ページへ戻る

掲載のデータは発表当時のものです。価格・仕様について変更する場合もございます。

RD No.2535

少量の学習データで機器の劣化を高精度に推定する物理モデル組み込みAIを開発

製造現場における保守コストの削減、生産性・品質の維持に貢献
altを入力する

従来の劣化推定と物理モデル組み込みAIの比較

 

 三菱電機株式会社は、少量の学習データで機器の劣化を高精度に推定する物理モデル組み込みAI※1を開発しました。本技術は当社AI技術「Maisart®(マイサート)※2」のうち、物理空間での信頼性・安全性を重視した「Neuro-Physical AI®※3」の開発成果で、当社が機器開発などを通じてこれまで培ってきたノウハウを活かして、製造現場におけるアセット運用の最適化に貢献します。

 

 近年、日本の製造業においては、生産設備の高度化が進む一方で、少子高齢化などを背景に、設備保全を担う熟練技術者の数が減少しています。劣化した機器を使い続けた場合、設備自体の故障や製品不具合を引き起こす恐れがあるため、事前に劣化を推定し、適切な対応につなげる「予防保全」のニーズが高まっています。従来の予防保全は、機器の挙動を数式やシミュレーションで再現し、その結果を基に劣化を推定する方法が一般的でしたが、物理知識を持つ専門家が劣化判定の仕組みを一から設計する必要があるため、多大な時間と労力を要する点が大きな課題でした。この課題を解決する手段として、事前に運転データなどを用いて学習したAIを劣化推定に活用する動きが進んでいます。しかし、従来の技術で、運転パターンや個体差、設置環境などの条件の組み合わせを考慮した網羅的な学習を行うためには、膨大なデータが必要となる上、条件が変わるたびに再学習を要するため、実用化には依然として課題が残っています。

 

 今回、当社と米国の現地法人であるMitsubishi Electric Research Laboratories(米国 マサチューセッツ州)は、機器の物理モデルの理論式を用いて、あらかじめ対象機器の挙動や特性について学習したAIを構築し、個体差や環境条件などの少量の学習データのみで機器の劣化を高精度に推定する技術を開発しました。AIに物理モデルを組み込む場合、従来は物理モデルと実測データのパラメータの重みづけ※4が固定的で、対象機器や使用環境に応じた最適化が難しいという課題がありましたが、本技術ではAIによるパラメータの動的調整を可能とし、推定の高精度化と利便性向上の両立を実現しました。

 本技術により、部品交換の低減、機器重大故障の抑制などを実現し、製造現場における設備保守コストの削減、生産性・品質の維持に貢献します。


  • ※1

    機械の挙動や特性を物理法則や数式を使って再現した理論上の仕組みである「物理モデル」を基盤とし、その知識や理論をAIシステムに組み込むことで、より高精度かつ物理的整合性のある予測・制御を実現するアプローチ

  • ※2

    Mitsubishi Electric's AI creates the State-of-the-ART in technologyの略。
    全ての機器をより賢くすることを目指した当社のAI技術ブランド。
    https://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/maisart/index.html

  • ※3

    当社が長年培ってきた事業領域や現場での知見・ノウハウと物理法則を融合し、機器やシステム全体をより賢くする、安全で信頼性の高い当社独自のフィジカルAI

  • ※4

    物理モデルと実測データを組み合わせる際に、それぞれの情報をどれくらい重視するかを数値で表す重み

お客様からのお問い合わせ先

カテゴリーや発表年別で探す