常務執行役
サステナビリティ・イノベーション本部長
小黒 誠司
サステナビリティ担当執行役メッセージ
価値創出と基盤強化の両輪で「トレード・オン」の活動を加速し、
サステナビリティを追求します
経営の根幹であるサステナビリティ
急速に変化する社会・経済の中で、サステナビリティをめぐる環境は2025年も大きく変化してきました。一部の国や地域では、関連政策に見直しがあり、取組みに逆風が吹いているとする向きもあります。しかし、現実には記録的な猛暑や大雨などの異常気象が増加しており、社会・環境課題は深刻化しています。また、AIやデータセンターの普及による電力需要の増加に加え、エネルギー価格の高騰や地政学リスクの顕在化を背景に、対環境という視点だけでなく、エネルギー安全保障や資源循環の観点からもサステナビリティの重要性が一段と高まっています。こうした中、三菱電機グループは、経営方針に「サステナビリティを経営の根幹に据える」ことを掲げ、社会・環境課題の解決と事業成長を同時に成し遂げる「トレード・オン」を追求し、本質的なサステナビリティ経営を推進しています。
不確実な時代だからこそ本質的なサステナビリティ経営を
世界の不確実性や複雑性は年々増大しており、社会情勢の変化に加え、生成AIの急速な進化によって、ビジネス環境には劇的な変化が起きています。こうした変化の全てを企業として事前に予測することは困難です。自社を取り巻く環境をしっかりと分析・評価し、中長期的な視点に立って推進するサステナビリティ経営も、企業の持続的成長に不可欠な要素であると私は考えています。
三菱電機グループでは、2025年度にサステナビリティの取組みにおける指針となるマテリアリティ(重要課題)を改めて特定しました。特定に当たっては、三菱電機グループの事業における社会・環境へのインパクト並びにリスクと機会の分析・評価を行い、社内外のステークホルダーとの対話を通じて、サステナビリティ課題の重要性を整理しました。新しいマテリアリティは5つの項目から構成され、サステナビリティの実現に向けて取り組む上で、価値創出と基盤強化の両面から達成すべき目標を定めています。
価値創出の観点では、中期経営戦略で掲げる注力領域を中心に事業を通じた社会・環境課題の解決に取り組んでいきます。また、基盤強化の観点では、目標・取組み指標の一つに2030年度工場・オフィスからの温室効果ガス排出量実質ゼロの達成を掲げ、省エネや電化、再生可能エネルギー導入等を積極的に推進します。
三菱電機グループはこれまでも、環境施策や人財戦略、人権の取組み推進などで着実に成果を上げており、CDP*1においては2025年に「気候変動」「水セキュリティ」の2分野で3年連続8回目、サプライヤー・エンゲージメント評価では6年連続9回目の最高評価を獲得するなど、グローバルな外部機関から高い評価をいただいています。バリューチェーン上の人権課題に対しては、RBA-SAQ*2を活用したリスク把握を全世界のグループ拠点に拡大し、改善活動を更に推進していきます。
情報開示の面では、世界的に拡大する非財務情報開示基準への対応を経営基盤の更なる強化につなげる機会ととらえています。まずはサステナビリティ基準委員会 (SSBJ)が2025年3月に公表したサステナビリティ開示基準への準拠、さらには欧州CSRDへの対応を見据え、データ収集の効率化も図りながら、グループ一丸となり準備を進めています。情報開示はステークホルダーとのエンゲージメントにおいて重要な役割を果たしており、企業活動の透明性や信頼性の向上につながります。株主・投資家の皆様にとって有用な開示ができるよう確実な取組みを進め、サステナビリティ先進企業を目指していきます。
注記:
- 1 企業や都市の環境への取組みを調査・評価・開示する国際NGO https://cdp.net/ja
- 2 RBA Self-Assessment Questionnaire (RBAはResponsible Business Allianceの略)
サステナビリティを事業成長の機会とする「トレード・オン」事業の創出・拡大
三菱電機グループとして、よりグローバルかつサステナビリティの視点で、事業を通じた社会課題解決を加速させるために何ができるのかという発想のもと、進めている取組みの一つがGIST(Global Initiative for Sustainable Technology)プロジェクトです。バックキャスティングの手法で、これまでの三菱電機グループにない新たなビジネスを生み出すべく、試行錯誤を重ねています。
取組みを進める新事業の一つ、海水を介して大気中からCO2を除去・回収し、カーボンニュートラル実現に貢献するDOC (Direct Ocean Capture)については、VTTフィンランド技術研究センターと共同で開発を進めており、これまでにDOCシステムの基礎技術開発を完了しました。引き続き、海水淡水化プラントや発電所などの海水取水工程を持つ大規模インフラへの統合を検討しながら、早期の社会実装に向けて商業化を加速していきます。
三菱電機とVTTフィンランド技術 研究センターが目指すDOCによるビジネスモデルのイメージ
他にも、CO2の回収から利用までを一貫して実現するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)システムの社会実装に向けて、産学連携で開発を進めるなど、業界の垣根を越えたパートナーシップを構築しながら新事業創出に向けて取り組んでいます。
一方、既存事業を通じた社会・環境課題の解決も進めています。この領域で鍵となるのは、循環型デジタル・エンジニアリングによるイノベーションです。Serendieによる多様なデータの利活用を通じて、お客様と継続的につながる新しいソリューションを提供することで、社会・環境課題の解決に貢献するとともに、事業の持続的な成長につなげていきます。一例である鉄道エネルギーマネジメントソリューションは、多様な鉄道運行データの分析によりエネルギーフローを見える化し、最適なエネルギー利用や鉄道アセットの配置・運用に貢献します。さらに、沿線地域の電力システムとの連携による地域全体のエネルギー最適化や、駅などの公共性の高い場所への非常用電源設備の確保による災害レジリエンスの強化を目指します。カーボンニュートラルや安心・安全な社会の実現に貢献するソリューションとして、海外での技術協力や実証も開始しており、グローバルにおける成長機会の獲得に向けて着実に歩みを進めています。
未来の価値を創造していく
社会動向や事業環境が急速に変化する中、三菱電機グループに必要なことは、社会・環境課題への対応をコストや制約として捉えるのではなく、新たな価値創出や競争力強化につながる成長の機会として挑戦し続けていくことです。そして、社会・環境課題を解決し持続可能な未来を実現するためには、新たなイノベーションが不可欠です。そうした考えから、今般改訂したマテリアリティでは「サステナビリティ実現に向けたイノベーションの促進」を新たな項目として加えています。
私はともに働く仲間たち一人ひとりの行動が、持続可能な未来に向けたイノベーションをつくる原動力だと考えています。三菱電機グループには、長年にわたり培ってきた幅広い事業領域とそれを支える確かな技術力があります。「飽くなき探求心と驚きの技術で、未来の価値を創造する」というパーパスを体現し、その可能性を最大限に引き出し、新たなイノベーションを創出するためには、既存事業の枠組みにとらわれず、多様な人財やパートナーとの共創を通じて新たな価値を生み出していくことが重要です。これからも価値創出と基盤強化の両輪でサステナビリティを推進し、「トレード・オン」の考え方のもと、社会・環境課題の解決と事業成長の好循環を生み出していきます。そして、ステークホルダーの皆様とともに、次世代へ安心・安全で持続可能な社会をつなぐべく、未来の価値創造に挑戦し続けていきます。
2026年 8月