人と組織が共に成長する人財マネジメント

事業戦略に資する「人財ポートフォリオ」の実現に向けて

現時点の人財やスキルを前提とするのではなく、将来的な目標からバックキャストする形で、必要となる人財の要件を定義し、人財の採用・配置・育成を戦略的に進めます。

事業戦略に資する「人財ポートフォリオ」の実現に向けて

多様・多才な人財獲得に向けた採用競争力強化

三菱電機は、応募者に広く門戸を開き、本人の持つ適性・能力に基づく公正な採用選考を実施しています。また、応募者のキャリアニーズや専門性とのマッチングをより意識した採用活動を積極的に展開し、多様・多才な人財獲得に向けた採用競争力強化を図ります。

新卒採用におけるジョブマッチングの強化

事務系においては、採用内定後に適性や本人希望を踏まえて配属を調整する従来型の「オープンコース」に加え、スタッフ職種を対象に、応募者のニーズや専門性に応じて入社時の配属先職種をあらかじめ定める「職種確約コース」を2023年度から導入し、継続的に採用しています。

技術系においては、事業領域・職種・勤務地等が異なるスペックの中から入社時の配属先をあらかじめ定める「配属先指定リクルート制度」に加え、より希少かつ高度な技術領域などにおいて通常の新卒入社者よりも高い水準の処遇条件(給与・賞与)を提示可能とする「配属先指定リクルート制度PLUS」を2023年度から導入し、継続的に採用しています。

経験者採用の更なる拡大

多様な経験を活かして即戦力として活躍する人財の獲得に向け、様々な採用手法の活用により一定規模の経験者採用を継続的に実施しています。

2021年度に導入したリファラル採用(従業員紹介)では、通常の転職市場ではアプローチできない潜在層の応募・採用につながっており、今後も拡大を目指していきます。カムバック採用(退職者の再雇用)においては、実効性を高めるため、三菱電機とアルムナイ(退職者)との継続的なつながりを構築する「Re-MELCO~アルムナイネットワーク~」を2023年度に新設し、再雇用機会を拡大しています。ダイレクトリクルーティングにおいては、労働市場が激化するエンジニア領域を中心に、優秀な人財の獲得拡大を図るべく、求職者個人への直接アプローチを強化しています。

また、第2新卒採用の応募基準から「最終学歴卒業後3年以内」を廃止し、就労経験がある場合は、就労期間の長短を問わず、求職者が自身のキャリア志向に合わせて第2新卒採用か経験者採用のいずれかを自由に選択できるよう応募基準を拡大しました。

グローバルな人財獲得に向けた取組み

三菱電機の新卒採用活動では、海外の大学に在学する日本人留学生を主な対象とした人財プールへのアプローチや、国内の大学に在学する外国人留学生を対象とした三菱電機の採用セミナーを開催し、国籍や人種を問わず多様・多才な人財の獲得に取り組んでいます。また、就業体験や業界・職種の理解を深める機会として実施しているインターンシップにおいて、外国人留学生を積極的に受け入れ、仕事のやりがいを感じてもらうことなどを通じて、外国人留学生のキャリア形成支援も行っています。

グループ・グローバルでの適正配置

グローバルな戦略的人財配置・活用

三菱電機グループでは、グローバル・ジョブグレーディングを導入し、海外拠点を含むグループ内の重要ポジションの見える化を進めています。グループ内で経営幹部候補の人財プールを形成・人財把握し、重要ポジションへの配置やタフアサインメントを通じて、事業強化と人財育成を図っています。海外関係会社の人財を三菱電機の上席執行役員をはじめとした幹部ポジションに登用しており、今後も継続して戦略的な配置を推進していきます。

また、国籍や人種を問わず優秀な人財を適所に配置すべく、国をまたがった人財の活用に取り組んでいます。日本を介さずに第三国間の人事異動を促進する目的でグローバル・モビリティ・ガイドラインを制定しており、また、本国にいながら他国のグループ関係会社の業務に従事するバーチャル・アサインメントの仕組みを段階的に適用しながら、オンラインコミュニケーションを最大限活用したボーダーレスな組織運営に取り組んでいます。

人財マネジメント体制強化

三菱電機グループでは、グループ・グローバルでの戦略的な人財マネジメントへの変革を進めています。三菱電機グループ人財戦略をもとに各地域(リージョン)の特性に応じた人財戦略や施策を担うRegional HR Officeを新設しました。

三菱電機コーポレートHR、事業部門HR、グループ会社HR、Regional HRが連携し、15万人の三菱電機グループの人財をグループ・グローバルで適正配置し、経営リーダーの育成、採用、風土改革等の様々な人事施策をグローバル最適で実現します。

多様・多才な人財の育成

一人ひとりの能力開発を支援する人財育成施策・活動

三菱電機グループでは、「自ら考え、主体的に行動し、挑戦し続ける」人財を目指し、従業員が自律的に自らの能力開発活動を継続していけるよう、様々な育成施策の企画・実施や環境整備・学びの場作りを行っています。OJTをベースに日常的な業務ノウハウとマインドを伝承していくとともに、OJTでは身につきにくい知識やスキルの習得、キャリア開発を、オンライン研修も積極的に活用しながら、Off-JTで補完するとともに、従業員同士のネットワーク活動を支援し、学びあい・教えあい・繋がりあう風土作りを図っています。Off-JTでは、「社内外の優れた講師による知識やスキル研修及び動機付け研修」「スキルアップのための検定や競技」「海外拠点や国内外の大学での実習や留学」等を実施しており、これらを通して関係会社従業員を含め、グループ従業員全体のレベルアップを図っています。2025年度は、幅広い職種の従業員を対象に、レベル別に短期集中でDX人財を育成する仕組みを新設しました。

また、全従業員を対象に「倫理・遵法など社会人として身につけるべき知識の付与」を行うとともに、新卒者や経験者採用者に対しては、全員に研修を実施し、社会人としての意識付けを図り、基礎知識の付与や、経営理念、コンプライアンスなどの初期教育を実施しています。

さらに、三菱電機では、従業員一人ひとりのキャリアオーナーシップの発揮及び自律的な成長実現に向けて、「会社も人財も成長できること」を基本的な考え方として会社の持続的な成長と従業員の自己実現の両方を追求しています。これまでに実施してきた一律的な階層別研修だけでなく、それぞれの状況等に応じて必要となる能力やスキルの獲得に資するコンテンツの整備も並行して実施していく予定です。これらによって、これまでに重視してきた若手層に対するコミュニケーション力強化、中堅層や管理職層に対するリーダーシップや後進(部下・後輩)の育成を含むマネジメント力強化等ともうまく融合を図り、これからの三菱電機の成長をけん引できる人財の育成と、一人ひとりがいきいきと働き、Well-beingとエンゲージメントの向上にも寄与できる環境整備を実現していきます。

人財育成体系図(三菱電機)

人財育成体系図(三菱電機)

従業員一人当たりの

年間人財育成・研修投資額(三菱電機)

約172,000円/人

変革に向けた技術・ビジネス力の強化・伝承

三菱電機では、技術・ビジネス力強化を目的として、一人ひとりのニーズに応じて選択受講できるグループ共通の講座を「MELCOゼミナール」として展開しています。450種類以上の講座があり、年間延べ31,000名以上が受講しています。各事業所から参加しやすいようにオンラインでの講座も取り入れています。加えて、三菱電機の重要技術強化のため、最上位講座として「技術系アドバンスコース」を設定しており、当該分野を担うキーパーソンの育成にも注力しています。

併せて、従業員一人ひとりが、自らがなりたい姿を描いて能力開発を行うとともに、上司が一人ひとりに合わせてそれをサポートできるよう支援する、学び環境の充実化を行っています。三菱電機では2025年度から、MELCOゼミナール等の多くの全社研修・育成施策の中から、自身に適したものを従業員が選択・活用できるようにするため、入社〜退職までの様々なライフイベントにおいて活用できる研修・育成施策を紹介するデジタルパンフレット「人開セ トリセツ*」の全社提供をスタートしました。また、分野ごとの「能力開発ガイドライン」を三菱電機グループ内に展開しており、職務レベル別に必要な能力・要件を大まかに提示し、それを備えるための能力開発手段として対応するMELCOゼミナール講座等を紹介しています。これらの取組み等により、従業員による自律的学びの促進を図っています。

  • MELCOゼミナール主催部門である「人財開発センター」の略称をネーミングに使用

「人開セ トリセツ」ポスター 及び デジタルパンフレット

学びあい・教えあい・繋がりあうコミュニティの活性化

三菱電機グループ内で各種「知の共有」ネットワークを構築しており、その最大組織である「技術部会」では計10部会に約20,000名が参加し、社外講演者による講演会やグループ内での発表会、研究会、各種情報発信などの相互研鑽活動を行っています。イントラネットを通じて若手技術者がベテラン技術者に質問できる、「全社技術相談窓口」も設置しています。

また、自身の今と将来に望む姿について、企業人として、また個人としてその理解を深め、気づきを得る学びのプラットフォームとして「Melcollege(メルカレッジ)」を設定しています。コンセプトは「~学びあう・教えあう・繋がりあう~コミュニティ」の創造とし、特定の事業や技術領域に縛られることなく、誰もが学んでみたくなるようなセミナー等の企画を通して、三菱電機グループの幅広い事業環境の下、異なる専門性や職掌、年代を超えて、今まで出会うことがなかった従業員同士がフラットに繋がれる活動を推進しています。さらに、一人ひとりのこれまでの学習成果を活かせる相互研鑽の機会を提供することで、学びの場を自ら継続的に活性化していこうとするマインドセットの醸成を目指しています。

Melcollegeセミナー風景 及び Melcollegeロゴ

変革を支える技能の強化・伝承

三菱電機グループ技能競技大会

三菱電機グループ技能競技大会

「技能の伝承と技能水準の一層の向上」「技能尊重風土の更なる醸成」「トップレベルの技能者育成」を目的とし、三菱電機グループの技能力強化施策の一環として、技能競技大会を毎年開催しています。製作所の代表が集まる全社大会には約120名が参加し、開会式・表彰式は社長も出席して開催しています。
また、監督者の能力向上策として全社監督者大会や監督者訓練プログラムなどを展開し、各ものづくり現場における技能の伝承を図っています。

日本国内従業員のグローバル化

日本国内の従業員を海外関係会社や海外ビジネススクール・大学・語学学校等に派遣し、語学力向上に加えて現地の事業運営や異文化での業務遂行・生活を体感・理解できるプログラムを実施しています。

特に、海外関係会社へ1年間派遣する海外OJT制度は、年間約100名の従業員を海外関係会社へ派遣し、グローバル事業をけん引する人財育成に取り組んでいます。

海外OJT制度の派遣者数推移 海外OJT制度の派遣者数推移

海外関係会社従業員の幹部登用・育成の推進

海外関係会社では、地域に根付いたオペレーション強化及び従業員エンゲージメント向上を目的として、育成を通じたキャリア形成やサクセッションプランの策定など、育成・配置を有機的につなげることで、優秀な海外関係会社従業員の幹部登用を推進しています。

また、各社、各地域における育成施策に加え、三菱電機が主体となり日本国内での研修も実施しています。具体的には、海外関係会社の従業員が日本の事業所で技術・技能を身に付けてもらうための研修・OJTや、海外関係会社から選抜された役員・管理職層が三菱電機本社に集まり、三菱電機グループの経営方針や事業戦略の理解に加え、グローバルリーダーとして必要な知識やマインドセットを習得してもらうための研修(MGEP*1、GMW*2)等を実施しています。

海外から研修に参加する中で、参加者自身の成長だけではなく、他の経営幹部候補者との交流を通して三菱電機グループとしての一体感の醸成や人的ネットワークの構築ができ、そのネットワークは国境を越えてグローバルでつながっています。過去の幹部候補研修参加者から海外関係会社の幹部ポジションに登用した事例もでており、今後も継続して海外関係会社従業員の育成・配置を有機的につなげ、更なるグローバル人財の育成・活用を図っていきます。

MGEP

海外からの日本国内研修参加者数の推移

  2020 2021 2022 2023 2024 累計(開始以降)
MGEP 新型コロナウイルス感染症の影響により中止 18名 15名 実施なし 15名 68名
GMW 中止 30名 27名 30名 295名
  • 1 Mitsubishi Electric Global Executive Program
  • 2 Global Management Workshop

(年度によっては日本国内の選抜人財も1〜2名参加)

経営リーダーの選抜・育成・評価

三菱電機では、次世代を担う経営幹部をグローバルスケールで育成・輩出するために、2023年度より「L.E.A.D*制度(経営幹部候補者育成制度)」を開始。多様な経験・バックグラウンドを有する経営幹部候補者をグループ内外から選抜・育成・評価し、グローバルで三菱電機グループをリードできる人財を育成・輩出しています。

選抜・育成・評価については、CEOを委員長とした全社トップタレントレビュー委員会で議論を行い、決定・実行することで、「オープンな人選」・「適切な機会(配置・研修)付与」・「アセスメント・モニタリング」のサイクルを確実に回しています。

社内での研修は特定の事業本部や事業所にとらわれず様々な交流を企図しているほか、グローバルの観点からこのような研修機会において日本国内の従業員と海外関係会社従業員とが交流して、ネットワーク構築ができるようにしています。さらに、国内外のビジネススクールや社外研修への積極的な派遣等も含めて様々な経営幹部候補育成プログラムを展開しています。

  • Leadership Enhancement And Development

DX人財の強化

三菱電機では、Serendie事業推進のためのDX人財を2030年までにグループ全体で2万人確保することを目指し、人財の獲得やM&Aによる拡充に併せ、事業戦略に基づく着実な人財育成の強化を図っています。2025年4月1日、三菱電機グループ内の従業員を対象とした体系的な育成機関「DXイノベーションアカデミー」を設立しました。

「DXイノベーションアカデミー」では、三菱電機グループにおけるDX人財のスキルセット*に基づき、それぞれに必要な技術・知識・マインドセットを集中的に習得し、実践に活かすことができる学びの場を三菱電機グループ内へ提供します。社内外講座を組み合わせた段階的な学習体系を整備するとともに、スキル・能力の社内認定制度などにより、既存のDX関連技術保有者及びDX関連業務従事者だけでなく、他業務からの職務転換者や新規入社者など、個々人の保有するスキルや知識レベルに応じた幅広い層の人財育成を推進します。三菱電機グループの全従業員を対象とした講座も設け、グループ一体となってDXを推進する風土を醸成します。

加えて、最新技術の集中的な獲得・実践、新たな人財交流などの確立を狙いとして、大学・教育機関との産学連携も進めており、3月27日には早稲田大学との間で、DX人財育成における産学連携に関する協定を締結しました。「DXイノベーションアカデミー」における講座として早稲田大学の教育プログラムを活用するとともに、その成果を早稲田大学における社会人及び学生向けデータ科学教育プログラムにフィードバックして発展させていくことで、共に価値の向上を図る産学共創スキームの構築を目指します。

  • 職務ごとの特性や要件を明確にする「ジョブ」の概念
三菱電機グループ向け「DXイノベーションアカデミー」の概要 三菱電機グループ向け「DXイノベーションアカデミー」の概要

キャリアオーナーシップの強化

三菱電機では、自律的なキャリア開発による従業員の成長実感・やりがいの実現が会社の持続的な成長につながるとの考えのもと、多様・多才な人財が自律的にキャリアを構築しながら能力を存分に発揮して活躍できる環境を整備し、従業員一人ひとりのキャリアオーナーシップ強化を推進しています。

2023年4月には、従業員一人ひとりのキャリアオーナーシップ強化に向けた会社方針の明確化を目的に、三菱電機における「キャリア開発」のコンセプト「自分を育てる、を育てる」を策定しました。このコンセプトには従業員一人ひとりが自身のキャリアと向き合い、主体的な行動を促すメッセージを込めるとともに、会社・管理職として従業員のキャリアを伴走・支援する姿勢を示しています。

また、コンセプトの考え方や三菱電機キャリア開発支援施策など従業員向けの情報をまとめたキャリア開発デジタルパンフレットを発行し従業員一人ひとりへの浸透を図るとともに、コンセプトを軸とした研修施策や自律的なキャリア開発に資する異動機会の提供を行っています。さらに、新しい人事制度において、キャリア面談と目標管理面談の一元化によるキャリアプラン策定・上司との対話機会を導入するとともに、部下のキャリア伴走者である管理職向け研修の展開や、従業員の自発的な能力開発支援施策などキャリア開発支援強化に向けた人への投資を積極的に進めています。

自律的なキャリアデザインの挑戦への後押し

三菱電機では従業員の自律的なキャリア開発を支援するために、社内求人制度(Job-Net)と社内求職制度(Career Challenge制度)を導入しています。

社内求職制度は、従業員が自らのキャリア志向・経験・スキル等を社内システムに登録し、求人部門がオファーする制度です。

社内求人制度・社内求職制度共に、従業員と求人部門の相互マッチングにより異動が実現できる制度となっており、2024年度は約250名の従業員が本制度を利用して異動を実現しています。

また、本業以外の職場及び社外での経験・学びを新たな価値創出に活かすことを目的とした社内外副業制度「EGG(Expand your work for Growth & to Gain fulfillment)」を2024年度より導入し、従業員の自律的なキャリアデザインへの挑戦を後押ししています。

「いつでも」「どこでも」学べるスキルアップ機会の提供

従業員自らの主体的・積極的な能力開発に向けたチャレンジを促進・支援することを目的とした各種制度を導入しています。セルフディベロップメント制度(SD制度)は、会社が有益・有用と認めた研修の受講に対する時間的・費用的補助や、三菱電機従業員として保有することを推奨する資格の取得に対して報奨金の支給を行う制度であり、従業員個々人の努力に向けた動機付けを図っています。また、福利厚生施策の一環として用意しているカフェテリアプラン方式のセレクトプラン制度においても、自己啓発の通信教育・スクール通学への補助として一人当たり年間8.3万円分のポイントを利用することができます。

さらに、従業員一人ひとりの自律的なスキルアップニーズに応えるグループ共通の研修プログラムを「MELCOゼミナール」として展開しています。各事業所から参加しやすいオンラインでの講座や、eラーニングで期間中、都合のよい時間に自席で何度でも学習できるオンデマンド講座を取り入れており、場所や時間によらないスキルアップの機会を提供しています。

一人ひとりに向けたキャリア開発支援

毎年1回、30歳、40歳、及び50歳、53歳を迎える従業員を対象に、以降の人生設計、生活設計に対する関心を深めてもらうため、各事業所で「ライフデザイン30研修」「ライフデザイン40研修」「キャリアアクション50・53研修」を実施し、キャリアデザインや退職金・健康など中長期的なライフプランについて講義するとともに、グループディスカッションを行っています。

特に、2023年度より早期からのキャリアデザイン、人生・生活設計に対する関心を高めてもらうため、30歳でのライフデザイン30研修を新設するとともに、2024年度からはシニア層(50代)のキャリア自律の支援、特に自らキャリアを選択し、そのキャリアの実現に向けた準備や行動を起こすきっかけとすることを目的としたシニア向けキャリア研修(キャリアアクション50・53研修)を導入しています。

また、従業員の十人十色のキャリアに関する悩みに対する支援を行うべく、社内外のキャリアコンサルタントの有資格者を相談員とするキャリア相談窓口を設置しています。年間延べ約300件の面談を実施し、従業員一人ひとりに寄り添った支援を実現しています。

公正な評価・処遇

人事制度の刷新

三菱電機は人的資本価値の最大化に向けて、2024年度に新しい人事制度を導入しました。

「成長につながる適正評価の実現」と「自律的キャリア開発支援」をコンセプトに、等級・評価・報酬制度を20年ぶりに刷新し、従業員のキャリアオーナーシップに基づく自律的な成長を促すとともに、マネジメント層にはグローバル基準でのジョブグレード制度を新たに適用し、ジョブ型人財マネジメントへと転換しました。

2023年4月に策定した「キャリア開発コンセプト」では、従業員一人ひとりが自分のキャリアについてより主体的・積極的に考え、行動することを促すとともに、会社が個々人の成長実現に伴走・支援していく姿勢を改めて明確化しました。導入した人事制度によって、これまで以上に従業員のキャリアオーナーシップを尊重した自律的な挑戦・成長を支援するとともに、年功的要素を廃し、実際に発揮されたパフォーマンスに直結した透明性・納得性の高い人事評価を徹底することで、従業員のエンゲージメントを高め、人と組織が共に成長する最適な人財マネジメントを実現します。

グレード・等級制度

グローバルでの最適な人財マネジメントをかなえるジョブグレード(職務起点)とミッショングレード(人起点)のハイブリット型等級制度の構築と、複線的キャリアパスの拡充を図っています。

管理職を対象とした「マネジメントコース」では、5,000を超えるポジションを職務価値・職責等を基準として6段階で評価し、それにかなう人財を配置する職務起点のジョブグレード制を導入しました。経営幹部候補者育成プログラムや海外関係会社従業員のサクセッションマネジメントとの連動により、グローバルでの人的資源の戦略的育成・適財配置を実現します。

一般従業員を対象とした「プロフェッショナルコース」では、人(能力を踏まえた役割の価値)を起点として、それに応じた役割・職務を付与する従来の考え方を踏襲しながら、役割の価値(ミッショングレード)を再定義して今日的な等級体系を整備しました。早期抜てきの阻害要因となっていた試験制度を完全撤廃し、年功的要素を払拭した優秀人財の早期抜てきを志向しています。

加えて、高度専門性(知識・スキル・経験)を活かして経営に貢献するための複線的キャリアパスである「エキスパートコース」「匠コース」を設置し、キャリア選択機会を充実させました。「エキスパートコース」は「マネジメントコース」と同一のジョブグレード制を導入しており、同一の報酬体系で処遇しています。

評価制度

評価基準をより明確化することで評価の透明性・納得性を向上させ、従業員一人ひとりの成長・挑戦につなげる評価運営を強化しています。

「成果評価」と「行動評価」の2軸による評価基準

目標達成度に応じた成果評価に加え、変革や挑戦、連携、支援など三菱電機として大切にするコアバリュー(「かえる」「つながる」「ささえる」)を明確化し、その実践度を行動評価として導入しています。さらに、マネジメントコース・エキスパートコースには、人財育成やチームビルディング等への取組みも行動評価要素に加えています。評価軸を成果評価、行動評価の2軸へ明確化し、評価の透明性・納得性を向上させることで、協働性の高い、オープンな組織風土醸成を促進します。

行動評価(コアバリュー評価)項目 行動評価(コアバリュー評価)項目

自律的なキャリア開発・挑戦を後押しする「ME Time」

キャリア面談と目標管理面談を一元化し、「ME Time」(ミータイム、わたしが成長するための時間)として運用しています。従業員のキャリアプランや目標の実現・成長に向けて、会社と上司が伴走し、自律的キャリア開発を支援するとともに、やる気と納得性を向上させるための育成的フィードバックを重視した仕組みとしています。

報酬・インセンティブ(経営幹部への株式付与)制度

評価を報酬へダイレクトに連動させることで、わかりやすく、脱年功のメリハリ運営をかなえる報酬体系を整備しています。前年度の成果・行動評価によって決定した総合評価がそのまま賃金・賞与に連動します。個人の総合評価をダイレクトに反映することにより、個人業績に応じたメリハリある処遇を実現します。

また、役員に準ずる幹部層等への経営参画意識向上を目的とした株式交付制度の導入を2025年度中に予定しています。当該制度の導入により、グループ全体の中長期的な業績と企業価値向上に対する貢献意欲の促進ならびにロイヤリティ(帰属意識等)の向上を図ります。

マスターキャリア制度導入(再雇用制度刷新)

定年退職後の再雇用者(以下、「再雇用者」)が、年齢にかかわらず豊富な経験や能力を活かして、今まで以上にいきいきと活躍できる環境の実現を目指し、従来の再雇用制度を刷新した「マスターキャリア制度」(以下、新制度)を新設し、2026年度から適用します。

2024年度に刷新した人事制度のコンセプト・理念を再雇用者にも適用し、定年退職後も一貫した人財マネジメントを行うため、等級・評価・報酬制度について定年退職前と同様の仕組みを導入します。また、この新制度には、従来の61歳から65歳までの1年ごとの再雇用契約を廃止し、再雇用期間を再雇用者本人が選択できる仕組みも導入します。これにより、再雇用者が発揮するパフォーマンスを適正に評価・フィードバックしてメリハリのある処遇を実現することで、再雇用者の自律的な挑戦や成長を一層促進するとともに、それぞれのキャリアプランやライフプランに合わせて、働き続けられる環境を整備します。