TNFDに基づく開示
一般要件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| マテリアリティの適用 | 三菱電機グループは、2050年に向けたあるべき姿を「環境ビジョン2050」にて明確に示し、組織における環境貢献への考え方を「環境方針」として定め、持続可能な地球環境の実現に向けた取組みを推進しています。 本レポートでは、インパクトと財務の観点から重要性を評価するダブルマテリアリティの考え方のもと、自然資本において重要な課題を特定し、関連する依存・インパクト・リスク・機会を開示、報告しています。 |
| 開示範囲 | 三菱電機グループ国内外の事業活動を対象に、各セグメントにおける自然との関連性を俯瞰的に説明しています。 さらに、評価分析の結果により重要性があると判断された地域については、詳細な自然関連課題を分析しています。 今後はバリューチェーンにおける自然との関わりについての分析を検討していく予定です。 |
| 自然関連課題がある地域 | 三菱電機グループ国内外の製造拠点を対象に所在地の自然関連の各指標を踏まえ、TNFDの評価分析方法における要注意地域に該当するかを評価した結果を説明しています。さらに、重要性があると判断された地域については、自然関連課題を詳細に検討しています。 三菱電機グループは資材調達等のバリューチェーンにおいても重要な自然への依存・インパクトがあることを認識しています。既にサステナブル調達に関する取組みを進めていますが、今後もバリューチェーンにおける自然との関わりについての分析を検討していく予定です。 |
| 他のサステナビリティ情報開示との統合 | 三菱電機グループが関わる自然資本についてTNFDの提言に沿った情報開示をしています。 また、開示フレームに沿った環境情報の開示に加え、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)に代表されるような国際的に統一された開示基準への対応を視野に、ESGの統合的な情報開示の拡充を進めています。また、今後はTCFD提言に基づく気候関連の開示との統合についても検討を進めていく予定です。 |
| 考慮する期間* | 短期:当期から2~3年までの期間(環境計画や中期経営計画の期間) 中期:2030年度までの期間 長期:2050年度までの期間(「環境ビジョン2050」最終年) |
| 先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント | 三菱電機グループのビジネスモデルは、バリューチェーンの上流から下流にわたり、自然由来の資源がなくては成立しないものと認識しています。 また、ステークホルダーの人権の重要性を認識し、サプライチェーンを含めた人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築しているほか「三菱電機グループサプライチェーン行動規範」、「グリーン調達基準書」を策定し、お取引先様の取組み状況を評価、是正を図るなど、サプライヤーに対するエンゲージメントを行っています。その一環として、自然資本に関わる資材の調達にあたり影響を及ぼしうる先住民族と地域コミュニティの人々の人権が毀損されることがないように配慮しリスクを低減しています。 |
- 2025年12月時点
自然関連の依存及びインパクト(Evaluate)
評価プロセス
TNFDが推奨するツールENCOREを用いて、三菱電機グループの事業における自然との依存・インパクト関係を評価しました。実際に、三菱電機グループの各事業セグメントについて国際標準産業分類ISIC(International Standard Industrial Classification)に該当する経済活動区分(Classレベル)に分類し、ENCOREにて5段階(VL, L, M, H, VH)に評価した結果を自社の状況を踏まえて精査し、ヒートマップに整理しました。
ヒートマップ(依存)
- レクリエーションや観光など、人間が自然に触れることで得られるサービス
ヒートマップ(インパクト)
重大な依存とインパクトの特定結果
自然への依存
- 全ての製品製造において水資源を利用しており、特に空調・家電、セミコンダクター・デバイスセグメントは取水量が多く水資源(淡水供給)に依存する可能性があります。
自然へのインパクト
- 空調・家電、セミコンダクタ―・デバイスセグメントは取水量が多く水使用量のインパクトが大きい可能性があります。
- 全ての製品製造において温室効果ガス排出のインパクトがあり、特にエネルギーシステム、自動車機器、空調・家電、セミコンダクター・デバイスセグメントは当該インパクトが大きい可能性があります。
- セミコンダクター・デバイスセグメントは有害汚染物質排出のインパクトが大きい可能性があります。
依存とインパクトの相互関係
- 三菱電機グループの製造プロセスにおいては、取水活動によって自然の状態にインパクトを及ぼす可能性があり、地域の自然の状態が劣化した場合、淡水供給を含む生態系サービスが享受できなくなる可能性が大きくなると認識しています。
自然関連の優先地域(Locate)
評価概要
優先地域の特定プロセス
三菱電機グループ連結の製造拠点(166拠点、2023年時点)を対象に、位置情報を利用して優先地域を特定しました。
活動場所の評価項目は、依存項目と関連する「生態系の十全性(依存全般)、水ストレス(淡水供給)」、インパクト項目と関連する「生物多様性の重要性(インパクト全般)、水ストレス(水使用量)、水質汚濁(水や土壌への有害汚染物質の排出)」としました。なお、評価対象は各事業分野で項目が異なり、Evaluateフェーズで重大と評価された依存項目・インパクト項目に関連したものに限定しました。次いで、活動場所の評価結果を基に優先地域を特定しました。「水使用量」の観点については、SBTs for Natureの方法論を踏襲し自社由来の自然への圧力(取水量)の大きさを考慮しました。
以上の結果を自社の状況を踏まえて評価指標ごとに5段階(VH, H, M, L, VL)で評価し、「H」又は「VH」に該当する地域を重大な環境リスクが発生する可能性があると判断し、優先地域として特定しました。
使用した評価ツールと指標
| 項目 | 評価ツール | 評価指標 | Evaluateフェーズとの関連性 |
|---|---|---|---|
| 生物多様性の十全性 | WWF Biodiversity Risk Filter v2.0 | Ecosystem Condition:自然環境がそのままの状態でつながっているかどうかを示す、陸域、淡水域、海域ごとに個別に算出されたスコア | 依存 |
| 生物多様性の重要性 | IBAT | START(種への脅威の軽減の指標):IUCN絶滅危惧種レッドリストによって重み付けされた各生物種の生息域の割合の合計点 | インパクト |
| 水利用可能性 | ① WRI Aqueduct 4.0 ②, ③ WWF Water Risk Filter v2.0 |
SBTs for Nature においても使用するツールにも組み込まれている、以下の3指標のスコアの最大値で評価 ① Baseline Water Stress:利用可能な再生可能水に対する地表水及び地下水の総取水量の割合 ② Water Depletion:利用可能な再生可能水に対する地表水及び地下水の消費量の割合 ③Blue Water Scarcity:利用可能なブルーウォーター*総量に対するブルーウォーターフットプリントの割合 |
依存/インパクト |
| 水質汚濁 | WWF Water Risk Filter v2.0 | Surface Water Quality Index BOD(一部地域は実測値に基づく補正を実施):地表水のBODをもとにしたスコア | インパクト |
- 表層水と地下水、すなわち、湖沼、河川、及び地下水層に含まれる淡水
優先地域の特定結果
三菱電機グループが操業する地域のうち、複数の拠点で淡水供給を享受できなくなる可能性があり、また水系資源や温室効果ガスの排出にインパクトを与えている可能性が高い結果が得られました。さらに、有害汚染物質の排出については日本や中国でインパクトを与えている可能性があるという結果が得られました。本評価では、三菱電機グループが操業する地域のうち一部に注意を要する結果が示されましたが、環境リスクへの対策・取組みを通じて、自然への影響を低減・回避しています。
今回は三菱電機グループの製造拠点を対象としましたが今後は順次、非製造拠点を含むバリューチェーン全体へ評価範囲の拡大と、現地調査も含めた結果の精査を実施していく予定です。
短期・中期・長期の自然関連のリスク及び機会(Assess)
評価概要
Assessフェーズでは、EvaluateやLocateのフェーズの検討結果を踏まえ、重大な依存・インパクトが特定されたセグメントを対象に、自然関連のリスクと機会のリスト化及びこれらの定性的な重要度評価、並びに重要なリスクの低減あるいは重要な機会の実現に寄与する取組みの整理を行いました。リスクと機会のカテゴリーはTNFDフレームワークv1.0に基づき、分類して整理し、時間軸はTCFD開示の内容を踏襲しています。
リスクの発生経路
物理リスクは、三菱電機グループの事業セグメントが依存している生態系サービスが衰退することで生じるため、重大な依存項目に関連したリスクを特定しました。一方、移行リスクは、三菱電機グループの事業セグメントによる自然へのインパクトを回避・低減する社会的な変化により生じるため、重大なインパクト項目に関連したリスクを特定しました。
機会の発生経路
リスクを回避・低減・管理することにより創出される機会は、三菱電機グループや社会が依存している自然や生態系サービスの衰退に関連するリスクを回避・軽減・管理することで生じるため、重大な依存・インパクト項目に関連した機会を特定しました。一方、製品・サービス等の戦略的変革による自然関連課題の解決により創出される機会は、自然の喪失を抑制したり、自然に基づく解決策を実施したりすることで生じるため、重大な依存・インパクト項目にかかわらず特定しました。
自然関連のリスクと機会
事業活動によって生じる当社グループの自然関連のリスクと機会についてはEvaluateフェーズにおいて「H」又は「VH」と判断された依存・インパクト項目ごとに特定し、整理しました。また、依存・インパクト項目に関わらない、自然・生物多様性に影響を与える、又は寄与する事業活動に関連する取組みによって生じるリスクと機会についても整理しました。
当該リストはTNFDが公開しているTNFD nature-related risk and opportunity registers(2024年12月版*)の内容を参照しています。
シナリオ分析に基づく自然関連のリスクと機会へのレジリエンス(Assess)
評価概要とシナリオ分析の結果
TNFDフレームワークでは、2つの重要な不確実性である「生態系サービスの劣化」及び「市場と市場以外の力の整合」の組み合わせより構成される4象限のシナリオを検討するアプローチを採用することが推奨されており、当該アプロ―チをベースに重要度を評価しました。
シナリオの分類は、横軸を「生態系サービスの劣化」とし、右が深刻な状態、左がある程度抑制/回復された状態としました。縦軸は「市場と市場以外の力の整合」とし、上に移行すると規制が厳しく消費者・投資家の意識も高く、下に移行すると規制が緩く消費者・投資家の関心も低いとしました。さらに、各シナリオの分類は、企業あるいは事業の外部環境分析で用いられるPEST分析に環境(E)の要素を追加したパラメーターを加味して設定しました。
各シナリオの詳細は下図のとおりです。
4象限のシナリオ(TNFDガイダンス*を参考に当社作成)
各シナリオにおける自然関連リスク/機会の重要度は「発生可能性」とリスクによる「影響の大きさ」の2つの指標をベースに評価しました。リスクの評価は(1) 活動場所由来のリスクと(2) グローバルな社会動向由来のリスクの2つに分類し、発生可能性と影響の大きさをそれぞれ設定して実施しました。機会の評価は(1) リスクを回避・低減・管理することにより創出される機会と(2) 製品・サービス等の戦略的変革による自然関連課題の解決により創出される機会の2つに分類して実施しました。これら「発生可能性」と「影響の大きさ」の評価結果を踏まえて総合的な重要度を評価することで、重要なリスクと機会を特定しました。
その結果、三菱電機グループの事業は様々な自然関連のリスクにさらされている一方で、事業所周辺の生物多様性保全活動を含む環境管理活動や、自然関連課題を解決する事業の開発はネイチャーポジティブ領域において機会の獲得につながることが分かりました。依存・インパクトとシナリオ分析の要素を加味して特定した、特に重大なリスク・機会は表のとおりです。当該シナリオ分析の結果で明らかになった潜在的なリスクや機会は、三菱電機グループのマテリアリティや次期環境計画等の検討材料としています。三菱電機グループでは特定された重大なリスク・機会に対して、依存・インパクトごとに多種多様な取組みを実施しています。
詳細は各取組みのページをご参照ください。
自然関連のリスクと機会
自然関連の施策(Prepare)
依存・インパクト、リスク・機会への対応
三菱電機グループでは事業を通じて発生するおそれのあるマイナスのインパクトやリスクをLEAPアプローチに基づく評価分析や、既存のサステナビリティマネジメントの手法で認識・管理し、回避・低減するとともに、プラスのインパクトをもたらす機会を創出することで、持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。
指標とターゲット
TNFDのグローバル中核開示指標に対応した三菱電機グループの測定指標は下表のとおりです。
| 指標 | 自然要因 | 指標 | 測定指標と内容 |
|---|---|---|---|
| TCFD | 気候変動 | GHG排出量 | バリューチェーンでの温室効果ガス排出量 |
| C1.0 | 陸/淡水/海洋利用の変化 | 総空間フットプリント | 土地の改変前後で面積を測定 |
| C1.1 | 陸/淡水/海洋の利用変化の範囲 | 三菱電機グループが保有する自然共生サイトの面積 | |
| C2.0 | 汚染/汚染除去 | 土壌に放出された汚染物質の種類別総量 | 日本の土壌汚染対策法、又はそれに準ずる法令の遵守 |
| C2.1 | 排水排出 | 排水先と排水処理条件ごとの排水量 | |
| C2.2 | 廃棄物の発生と処理 | 有害/非有害廃棄物、再資源化、最終処分量 | |
| C2.3 | プラスチック汚染 | 製品包装材の総重量(使い捨て包装材とリターナブル梱包材の合計) | |
| C2.4 | GHG以外の大気汚染物質 | VOC, NOx, SOxの排出量 | |
| C3.0 | 資源利用/資源補充 | 水不足の地域からの取水量と消費量 | 水リスクの特定、高リスク拠点別の取排水量と原単位の管理 |
| C3.1 | 陸/海洋/淡水から調達する高リスク天然一次産品の量 | 該当なし | |
| C4.0 | 侵略的外来種対策 | 事業所内の植生に影響を及ぼす侵略的な外来植物の特定、駆除/防除の実施 | |
| C5.0 | 自然の状態 | 生態系の状態 | LEAPアプローチに沿った分析の実施 |
| 種の絶滅リスク | LEAPアプローチに沿った分析の実施 | ||
| C7.0 | リスク | 自然関連の移行リスクに対して脆弱であると評価される資産、負債、収益及び費用の金額(合計及び合計に占める割合) | 試算中 |
| C7.1 | 自然関連の物理的リスクに対して脆弱であると評価される資産、負債、収益及び費用の金額(合計及び合計に占める割合) | 試算中 | |
| C7.2 | 自然関連のマイナスのインパクトにより当該年度に発生した多額の罰金、科料、訴訟の内容と金額 | 該当なし | |
| C7.3 | 機会 | 関連する場合には、政府又は規制当局のグリーン投資タクソノミー、あるいは第三者機関である産業界又はNGOのタクソノミーを参照し、機会の種類別に、自然関連の機会に向けて展開された資本支出、資金調達又は投資額 | 試算中 |
| C7.4 | 自然に対して実証可能なプラスのインパクトをもたらす製品及びサービスからの収益の増加とその割合、並びにそのインパクトについての説明 | 試算中 |