人権

人権尊重に関する考え方

人権尊重に関する方針

三菱電機グループは、国際的に合意されている人権の保護を支持・尊重することを企業活動の前提として、自らが人権侵害に加担しないことを果たすべき責任と捉えています。

2024年8月には、人権に関わる社会環境の変化を捉え、人権方針を改定しました。

自社グループ従業員の人権、サプライチェーン従業員の人権、テクノロジーの倫理的な活用、プライバシーと情報セキュリティといった個別課題については、以下の関連方針に基づく具体的な対応を進め、人権尊重の取組みをより実効性のあるものとしています。

人権尊重に関するマネジメント体制

人権尊重の取組みを進めるため、サステナビリティ委員会の下部組織である人権部会において、方針・計画の検討・承認や取組み実績の確認などを行い、サステナビリティ委員会で議論の上、執行役​会議に付議・報告し、取締役会から監督​を受ける体制としています。人権にまつわる​課題は多岐に及ぶた​め、部門横断的な課題については人権部会で方向性を決定の上、担当部門を明確にして取り組んでいます。​

また、人権部会構成部門の課長級メンバーによる人権ワーキンググループ(人権WG)では、人権に関する様々な取組みの実務推進に関する検討を行っています。

2024年度は人権部会を3回、人権WGを10回開催しました。

人権の尊重に関するマネジメント体制

人権尊重の取組み

人権尊重の取組みの中長期目標・ロードマップ

人権尊重の取組みについては、中長期目標・ロードマップを定め、計画的に活動を推進しています。短期(単年度)では、具体的な取組み項目・KPIを設定し、人権部会やサステナビリティ​委員会で実績をフォローしています。​

人権尊重の取組みの中長期目標とロードマップ(概略) 人権尊重の取組みの中長期目標とロードマップ(概略)

人権デュー・ディリジェンス

人権デュー・ディリジェンス

三菱電機グループでは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める人権デュー・ディリジェンスを実施しています。
定期的な人権インパクト・アセスメントの実施により三菱電機グループの企業活動における人権への影響を評価し、特定したリスクに対する改善活動を進めています。

人権への負の影響の特定と評価(人権インパクト・アセスメント)

2023年度から、米国のサステナビリティ推進団体であるBSR(Business for Social Responsibility)と協働し、グローバル基準に基づいた人権インパクト・アセスメントを実施しています。同インパクト・アセスメントでは、デスクトップリサーチの上、各コーポレート部門へのインタビューなどで三菱電機グループのバリューチェーンにおける潜在的なリスクを抽出し、重要度、発生可能性、事業の関連性という観点から人権課題の優先順位づけを行いました。その結果、ステークホルダーに影響を及ぼす可能性がある潜在的な人権課題のうち、特に優先的に取り組むべき顕著な人権課題を下図のとおり特定しました。

さらに、拠点レベルでの人権リスクを把握するために自社製造拠点においてRBA-SAQ*によるアセスメントを開始しています。

  • RBA Self-Assessment Questionnaire

三菱電機グループの事業活動が影響を及ぼす可能性のある人権課題

三菱電機グループの事業活動が影響を及ぼす可能性のある人権課題

人権への負の影響の是正、防止、軽減

前項で特定した人権課題に対し、その発生を未然に防止するための推奨事項がBSRから提示されました。三菱電機グループは、これらの推奨事項に対する改善策を策定し、2024年度から取組みを開始しています。2024年度の主な活動実績については以下のとおりです。

顕著な人権課題に対する2024年度の取組み実績と2025年度の取組み

  BSRから提示された推奨事項
(主要項目を抜粋)
2024年度取組み状況 今後の課題(2025年度重点取組み事項)
横断的な課題
  • 2017年度に策定した人権方針について社会環境の変化を捉えた見直しを行うこと
  • 社外人権専門家(BSR)の知見を得て人権方針を見直し2024年8月に社長名で公開
  • 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める8要件を参考に、苦情窓口での苦情受付~救済までのプロセス見直し、ルール化を検討
  • 苦情処理メカニズムの改善を進めること
従業員の人権
  • グローバルでの労働・人権課題の把握、対応を強化すること
  • 人事部門が海外関係会社の安全衛生に関する取組み情報を収集し、安全衛生教育コンテンツの共有に向けて整理・準備を検討
  • 海外含むグループ内拠点における人権リスクを把握し、改善活動を進めるため、人権推進体制の整備を検討
  • 自社製造拠点においてRBA-SAQを実施し、リスク把握の取組みを開始
サプライチェーンの人権
  • RBAツールを活用したサプライチェーン管理を強化すること
  • 2024年度は国内取引先を対象にRBA-SAQを展開
  • 2024年度に実施したRBA-SAQにおける高リスクの取引先に対する是正アクションの100%実施
  • 中国、タイの取引先へRBA-SAQを展開
消費者・コミュニティの人権
  • AI倫理に関するチェックリストの項目やプロセスのレビューを行い、人権の観点で十分にリスクが確認する体制を構築すること
  • AI戦略プロジェクトグループにて「AIマネジメントシステム」「AIリスクマネジメント」「AI規制・標準化」などの取組みを展開
  • 左記取組みの充実

人権の取組みに対する追跡評価

BSRの推奨事項に対する改善活動状況については人権部会にて定期的な確認を行っています。三菱電機グループの製造拠点やサプライヤーにおける労働環境については、RBA-SAQを活用し、リスク状況の確認を行います。

従業員の人権に関する取組み

基本的な考え方

三菱電機グループは、「三菱電機グループ 行動規範」において、世界人権宣言や国連グローバル・コンパクトの原則として示されている、従業員の基本的な権利を尊重することを定めています。

また、企業として「結社の自由」を尊重するとともに、三菱電機と三菱電機労働組合の間で締結される労働協約において、三菱電機労働組合が労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保有することを保障しています。

労働組合との関係

労働協約に基づき以下のことを行っています。

  • 定期的な経営協議会・労働協議会を設け、積極的なコミュニケーションを図っています。
  • ユニオン・ショップ制に基づき、社員は原則、試用期間を経たのち、全員組合員となります(管理職層を除く)。
  • 労働協約の対象ではない従業員の労働条件は、各従業員の雇用形態や同一労働同一賃金関連法を踏まえて設定しています。
  • 国内外関係会社においても、各国・地域の雇用・人事・勤務・賃金・労働時間・入国管理などに関する労働関連法令及び社内規則・手続きを遵守し、健全な労働条件や職場環境の維持・向上に努めます。
  • 事業上の影響により従業員の配転・出向・転籍を行うときは速やかに労働組合へ通知することを定め、配転・出向・転籍となる従業員が大量になる場合は、その基本事項について労働組合と協議することを規定しています。

サプライチェーンにおける人権の取組み、RBA への加盟

RBA

2024年には、三菱電機グループのサステナブル調達において、グローバル基準であるRBA行動規範と自社の取組みを整合させることにより、人権尊重の取組みの客観性・透明性が向上しました。2025年2月にRBAレギュラー会員へ移行したことを機に、サステナブル調達の取組みの継続的な改善を一層進めていきます。

人権に関する法規制対応

三菱電機グループでは、各国で進んでいる企業の人権デュー・ディリジェンス実施に関する法制化に対し、関連部門で連携し、適時適切に対応することとしています。

英国現代奴隷法、豪州現代奴隷法、ノルウェー透明性法、カナダ現代奴隷法に関するステートメントは対外的に公開しています。

人権教育

三菱電機グループでは、様々な機会を捉え、従業員に対して人権に対する教育を実施しています。

研修 内容
人権週間 社内の人権意識啓発を目的として、ビジネスと人権の社会動向や三菱電機の取組み目的を説明したメッセージを人権週間(12月4~10日)の期間に三菱電機及び国内外関係会社の従業員に配布しています。2024年度は人権啓発動画を4カ国語で作成し、グループ内に展開しました。
全社教育
(eラーニング)
三菱電機及び国内関係会社の全従業員を対象とするeラーニング「三菱電機グループのサステナビリティ」の中で、人権問題や三菱電機グループの人権取組みについて取り上げ、「ビジネスと人権」について従業員が理解を深める機会を提供しています。

階層別研修

新入社員や新任の管理職に対して、人権に関する研修を継続的に実施しています。管理職向けの研修では、受講後、自分の職場において問題が発生していないか管理職の立場から確認することで、従業員が働きやすい職場環境づくりを進めています。
ハラスメント防止教育 三菱電機及び国内関係会社の全従業員を対象として、ハラスメント行為に関する正しい理解及び適切なコミュニケーションスキルについて実践を促しハラスメントを予防するためのハラスメント防止教育を実施しています。

苦情処理メカニズム

人権に関する苦情窓口

三菱電機グループは、社外窓口「JaCER*」を含む複数の人権苦情窓口を設置し、従業員・取引先・顧客・消費者・地域住民など三菱電機グループの事業活動に関わるすべてのステークホルダーからのお問い合わせを受け付けています。窓口は365日アクセス可能であり、匿名通報にも対応しています。

  • 一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した非司法的な苦情処理プラットフォーム

社外との対話

三菱電機グループの人権課題への取組みを実効性のあるものとするため、有識者や人権NGO等と対話し、人権の取組みに関してのアドバイスをいただいています。

2025年6月、BSR マネジング・ディレクターの永井朝子氏に、三菱電機グループの人権尊重の取組みの説明を行い、概括的な評価と今後の期待について、以下コメントをいただきました。

BSR マネジング・ディレクター 永井朝子氏

BSR マネジング・ディレクター 永井朝子氏

三菱電機グループは、「三菱電機グループ 人権方針」にて、グループ従業員、サプライチェーン従業員、顧客、消費者、地域コミュニティとバリューチェーンにわたる人権へのコミットメントを掲げています。2023年には「三菱電機グループ サプライチェーン行動規範」を制定、2024年には業界基準である、「レスポンシブル・ビジネス・アライアンス(RBA)」のレギュラー会員に移行しました。また、人権に関する苦情窓口には、社外窓口であるJaCER(ビジネスと人権対話救済機構)を含めて複数設置するなど、人権の取組みを確実に進めています。


今後は
1)中長期計画・ロードマップをより具体化するKPIや指標を含む目標設定と管理
2)セルフアセスメントや、オンサイトも含めた確実なリスク低減
3)経営層から一般従業員も含め教育・研修の拡充による理解の深化
などに取組み、活動を強化されることを期待します。

頂戴したコメントについては、人権部会で議論の上、今後の三菱電機グループの人権尊重の取組みに反映し、継続的な改善を図ります。