グループ内主要製造拠点において、RBA-SAQを用いたリスク評価を実施しています。
2028年度までにグループ内87拠点においてRBA-SAQを実施する予定で、2025年度は当年度目標としていた全19拠点においてアセスメントを完了しました。
RBA-SAQの結果、「高リスク」と判定された拠点はありませんでした。
一方、項目別に見ると「健康と安全」および「強制労働」に関連する項目で一部課題が確認されました。特に、移民労働者などの脆弱な立場に置かれやすいライツホルダーのリスクを重点項目として継続的に注視し、課題が判明した場合はリスク低減に取り組みます。
人権
人権尊重に関する考え方
人権尊重に関する方針
三菱電機グループは、国際的に合意されている人権の保護を支持・尊重することを企業活動の前提として、自らが人権侵害に加担しないことを果たすべき責任と捉えています。
2024年8月には、人権に関わる社会環境の変化を捉え、人権方針を改定しました。
グループ従業員の人権、サプライチェーン従業員の人権、テクノロジーの倫理的な活用、プライバシーと情報セキュリティといった個別課題については、以下の関連方針に基づく具体的な対応を進め、人権尊重の取組みをより実効性のあるものとしています。
人権尊重に関するマネジメント体制
人権尊重の取組みを進めるため、サステナビリティ委員会の下部組織である人権部会において、方針・計画の検討・承認や取組み実績の確認などを行い、サステナビリティ委員会で議論の上、執行役会議に付議・報告し、取締役会から監督を受ける体制としています。人権にまつわる課題は多岐に及ぶため、部門横断的な課題については人権部会で方向性を決定の上、担当部門を明確にして取り組んでいます。
また、人権部会構成部門の課長級メンバーによる人権ワーキンググループ(人権WG)では、人権に関する様々な取組みの実務推進に関する検討を行っています。
2025年度は人権部会を3回、人権WGを10回開催しました。
さらにグループ内従業員の人権に関する理解促進や、各国で進む人権関連法規制への対応を目的として、グループ内拠点に人権推進委員を任命し、人権推進委員を対象とした「人権推進者連絡会」を各地域で開催しています。
人権尊重のマネジメント体制
人権尊重の取組み
人権尊重の取組みの中長期目標・ロードマップ
人権尊重の取組みについては、中長期目標・ロードマップを定め、計画的に活動を推進しています。短期(単年度)では、具体的な取組み項目・KPIを設定し、人権部会やサステナビリティ委員会で実績をフォローしています。
人権尊重の取組みの中長期目標とロードマップ
人権デュー・ディリジェンス
三菱電機グループでは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、①三菱電機グループ内及び②サプライチェーンの2つの軸で人権デュー・ディリジェンスを定期的に実施し、人権リスク(人権への負の影響)の低減活動を進めています。
三菱電機グループは2025年2月にRBAレギュラー会員へ移行し、RBAツールを活用した客観性・透明性の高い人権デュー・ディリジェンスの取組みを強化しています。
①三菱電機グループ内人権デュー・ディリジェンス: 全社的なリスクを把握する「コーポレートレベル」と、各製造拠点・関係会社単位の人権リスクを把握する「拠点レベル」の両輪で推進しています。
②サプライチェーン人権デュー・ディリジェンス: グローバル基準であるRBA*の行動規範に準拠したサステナブル調達を実施しています。詳細はサプライチェーンマネジメント(調達)をご確認ください。
- Responsible Business Alliance:グローバルサプライチェーンにおける責任ある事業活動を推進する国際的な企業同盟。サプライチェーンのサステナビリティを推進するための様々なツールを提供している。
人権リスク評価(人権インパクト・アセスメント)の実施と特定された人権課題
コーポレートレベル
三菱電機グループは2023年度に、外部専門機関であるBSR(Business for Social Responsibility)と協働し、グローバル基準に基づいた人権インパクト・アセスメントを実施しました。同インパクト・アセスメントでは、バリューチェーン全体における潜在的な人権リスクについて「重要度」「発生可能性」「事業の関連性」の観点から優先順位づけを行い、特に優先的に取り組むべき「顕著な人権課題」を特定しました。
優先的に取り組むべき顕著な人権課題
| 課題区分 | 人権課題 | |||
|---|---|---|---|---|
| 従業員に関する人権課題 | 職場環境 | 労働安全衛生 | ||
| サプライチェーンに関する人権課題 | 労働基準 | 強制・奴隷・債務労働 | 児童労働 | |
| 製品とサービスに関する人権課題 | プライバシーと情報セキュリティ | |||
拠点レベル
人権デュー・ディリジェンスのサイクル
人権リスクの是正、防止、軽減
特定された顕著な人権課題に対しコーポレート部門で構成される人権部会が全社共通の目標を策定して人権リスクの低減活動に取り組んでいます。また、拠点ごとの個別リスクについては、各拠点が主体となって自主的な改善活動を推進しています。
人権リスク低減に向けた重点施策と目標・実績
| 重点施策 | 2026年度目標 | 実績 |
|---|---|---|
| 人権方針の国連指導原則への準拠 | 人権方針の定期見直し |
2024年度: 社外人権専門家の知見を得て人権方針の見直し 2025年度: 主な内容について見直しなし |
| 苦情処理メカニズムの国連「ビジネスと人権に関する指導原則」への準拠 | 指導原則が求める8要件に留意した苦情処理プロセスの改善 |
2025年度: 人権苦情対応マニュアル検討 |
| グループ・グローバルでの労働・人権課題の把握・対応の強化 | 児童労働、強制労働などの人権リスク把握に向けた、グループ内主要製造拠点44拠点へのRBA-SAQ展開率100% |
2024年度: 100%(目標16拠点/実績16拠点) 2025年度: 100%(目標19拠点/実績19拠点) |
グループ会社におけるRBA-SAQの高リスク拠点に対する是正アクションを100%実施 |
2024年度: 高リスク拠点ゼロ(対象拠点:16拠点) 2025年度: 高リスク拠点ゼロ(対象拠点:19拠点) |
|
グループ会社との人権推進に関する協力体制の構築 |
2025年度: グループ会社への人権推進体制の構築 |
|
| サプライチェーンマネジメントの強化 | 児童労働・強制労働などの人権リスク把握に向けた主要サプライヤーへのサステナブル調達調査実施率100% |
社会データ (サステナブル調達サプライヤー調査実績) |
サステナブル調達調査結果が高リスクのサプライヤーへの是正アクション実施率100% |
社会データ (サステナブル調達サプライヤー調査実績) |
人権の取組みに対する追跡評価
人権インパクト・アセスメント結果に基づく全社共通のリスク低減活動については人権部会にて定期的な進捗状況の確認を行い、次年度の活動に反映しています。また、三菱電機グループの主要製造拠点における人権リスクについては、RBA-SAQにより定期的に状況をモニタリングします。
従業員の人権に関する取組み
基本的な考え方
三菱電機グループは、「三菱電機グループ 行動規範」において、世界人権宣言や国連グローバル・コンパクトの原則として示されている、従業員の基本的な権利を尊重することを定めています。
また、企業として「結社の自由」を尊重するとともに、三菱電機と三菱電機労働組合の間で締結される労働協約において、三菱電機労働組合が労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保有することを保障しています。
労働組合との関係
労働協約に基づき以下のことを行っています。
- 定期的な経営協議会・労働協議会を設け、積極的なコミュニケーションを図っています。
- ユニオン・ショップ制に基づき、社員は原則、試用期間を経たのち、全員組合員となります(管理職層を除く)。
- 労働協約の対象ではない従業員の労働条件は、各従業員の雇用形態や同一労働同一賃金関連法を踏まえて設定しています。
- 国内外関係会社においても、各国・地域の雇用・人事・勤務・賃金・労働時間・入国管理などに関する労働関連法令及び社内規則・手続きを遵守し、健全な労働条件や職場環境の維持・向上に努めています。
- 事業上の影響により従業員の配転・出向・転籍を行うときは速やかに労働組合へ通知することを定め、配転・出向・転籍となる従業員が大量になる場合は、その基本事項について労働組合と協議することを規定しています。
責任あるAIの推進
三菱電機グループは、AI倫理ポリシーの考えに基づく「高リスク」なAI事業の基準類型を定め、当該類型に該当する事業については、リスクマネジメント部門において第三者視点でのリスク評価を行い、必要に応じて社外有識者の意見を取り入れた上で経営判断を行う体制を整備、運用しています。
人権に関する法規制対応
三菱電機グループでは、各国で進んでいる企業の人権デュー・ディリジェンス実施に関する法制化に対し、関連部門で連携し、適時適切に対応しています。
英国現代奴隷法、豪州現代奴隷法、ノルウェー透明性法、カナダ現代奴隷法に関するステートメントは対外的に公開しています。
人権教育
三菱電機グループでは、様々な機会を捉え、従業員に対して人権に対する教育を実施しています。
| 研修 | 内容 |
|---|---|
| 人権週間 | 人権週間(12月4~10日)の期間に、サステナビリティ担当役員による人権啓発メッセージ(日・英)の発信や人権啓発動画(日・英・西・中)の展開等を通じて、グループ従業員の人権意識啓発を図っています。 |
| 全社教育 (eラーニング) |
三菱電機及び国内関係会社の全従業員を対象とするeラーニング「三菱電機グループのサステナビリティ」の中で、ビジネスと人権に関する問題や三菱電機グループの人権取組みについて取り上げ、従業員が理解を深める機会を提供しています。 |
階層別研修 |
新入社員や新任の管理職に対して、「ビジネスと人権」に関する研修を継続的に実施しています。管理職向けの研修では、受講後、自分の職場において問題が発生していないかを管理職の立場から確認することで、従業員が働きやすい職場環境づくりを進めています。 |
| 職種別研修 | 人事総務や調達など、三菱電機グループの重要なステークホルダー(自社従業員およびサプライヤー従業員)に関わりの深い業務に従事する従業員向けに、業務と関連する人権リスク(強制労働・児童労働および差別ハラスメントを含む)に関する理解を深めるための教育機会を提供しています。 |
| ハラスメント防止教育 | 三菱電機及び国内関係会社の全従業員を対象として、ハラスメント行為に関する正しい理解及び適切なコミュニケーションスキルについて実践を促し、ハラスメントを予防するためのハラスメント防止教育を実施しています。 |
苦情処理メカニズム
人権に関する苦情窓口
三菱電機グループの事業活動に関わる全てのステークホルダー(従業員・取引先・顧客・消費者・地域住民など)を対象に、負の影響(強制労働や児童労働、差別およびハラスメントを含む)に関する通報を受け付けています。
・自社窓口: オフィシャルサイト「人権に関する苦情窓口」
・社外窓口: JaCER(一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構)
- いずれも24時間365日アクセス可能で、匿名での通報も受け付けています。
人権苦情窓口の対応プロセス
人権に関する苦情窓口での対応プロセス
サステナビリティ部門が窓口として通報を受領し、内容を確認の上、事案に応じて適切な担当部門(当該会社・部門)へ対応を依頼します。依頼を受けた担当部門は速やかに事実関係を調査し、通報内容が妥当と判断された場合には、通報者との対話を通じて、負の影響の是正および被害者の救済を検討・実行します。
また状況によっては、JaCERが指定する第三者専門家を助言仲介委員として解決策を検討する場合があります。
救済施策の完了後、通報者、被害者又はその代理人に対応結果を報告し、合意が得られた段階で案件を終了(クローズ)します。なお、是正措置や救済が不十分な場合、あるいは通報者に対する報復行為が認められた場合には、厳正な是正措置を講じます。
通報対応の流れ
関係者間の情報共有および報復の禁止
通報内容は、問題解決のために当事者会社・拠点の担当部門と共有します。その際、関係者との共有は必要最小限となるよう努めます。
なお、通報を理由とした不利益な扱い(報復)は厳格に禁止しています。
苦情件数実績
2025年度の苦情受付件数は以下のとおりです。
- 人権に関する苦情窓口: 18件
- JaCER: 3件
そのうち、強制労働・児童労働に関する通報はありませんでした。
社外との対話
三菱電機グループの人権課題への取組みを実効性のあるものとするため、有識者や人権NGO等と対話し、人権の取組みに関してのアドバイスをいただいています。
2025年6月、BSR マネジング・ディレクターの永井朝子氏に、三菱電機グループの人権尊重の取組みの説明を行い、概括的な評価と今後の期待について、以下コメントをいただきました。
BSR マネジング・ディレクター 永井朝子氏
三菱電機グループは、「三菱電機グループ 人権方針」にて、グループ従業員、サプライチェーン従業員、顧客、消費者、地域コミュニティとバリューチェーンにわたる人権へのコミットメントを掲げています。2024年には「三菱電機グループ サプライチェーン行動規範」を制定、2025年には業界基準である、「レスポンシブル・ビジネス・アライアンス(RBA)」のレギュラー会員に移行しました。また、人権に関する苦情窓口には、社外窓口であるJaCER(一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構)を含めて複数設置するなど、人権の取組みを確実に進めています。
今後は
1)中長期計画・ロードマップをより具体化するKPIや指標を含む目標設定と管理
2)セルフアセスメントや、オンサイトも含めた確実なリスク低減
3)経営層から一般従業員も含め教育・研修の拡充による理解の深化
などに取組み、活動を強化されることを期待します。
頂戴したコメントについては、人権部会で議論の上、今後の三菱電機グループの人権尊重の取組みに反映し、継続的な改善を図ります。