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くらしのエコテクノロジー
暮らしの中で気づいた課題を 技術の力で解決、「エネルギーを賢く使う未来」を作りたい
先端技術総合研究所 映像情報プラットフォーム技術部 三木智子
くらしのエコテクノロジー
暮らしの中で気づいた課題を 技術の力で解決、「エネルギーを賢く使う未来」を作りたい
先端技術総合研究所 映像情報プラットフォーム技術部 三木智子

未来の家は、家電たちが省エネで安全な住環境をサポートしてくれる仲間のようになります

2018.12.05

三菱電機ではエネルギーを無駄なく有効に活用できるスマートハウスソリューション「ENEDIA」を提供しています。これは、地球温暖化を促進するCO2を削減、もちろん光熱費も減らし、我慢しないでも快適で環境に配慮した理想的な暮らしができる、そして停電時も安心というその名の通り「賢い家=スマートハウス」を実現するためのソリューションシステムなのです。さて、それは具体的にはどんなものなのでしょうか。

スマートハウス関連技術の開発拠点である京都製作所には、実際にスマートハウスのさまざまな仕組みを見て体験できる「三菱ENEDIAハウス京都」が建てられています。今回はこのスマートハウスの環境技術を開発している三菱電機リビングシステム制御グループの三木智子グループマネージャーに、これから実現するシステムやサービスについて「三菱ENEDIAハウス京都」でお話をお聞きしました。

三木智子の写真

家電同士が相談しあって自動的に一番快適で省エネな状態をつくっていく

前回は、三木さんがどんな想いで研究開発に携わっているかを伺いました。今回は実際に開発された技術について少し詳しくお聞きしたいと思っています。この三菱電機のスマートハウスソリューション「ENEDIA」はスマート家電や太陽光発電などがHEMS(ホーム エネルギー マネジメント システム)によってネットワークにつながり動いていると伺いました。まずスマート家電というのはどういうものなのでしょうか?

三木さん:スマート家電とはインターネットでつながりスマートフォンやパソコンでも操作できる機能をもっていて、前回お話したようにHEMSと連携し、自動的にエネルギー消費を最適化する仕組みを持った家電製品のことを言います。

タブレット端末の写真
家電が連携して動いている様子もタブレットでしっかり確認できるようになる

なるほど、HEMSと連携していろいろなことができるのですね。三木さんはそのスマート家電を連携させた新しい技術についても開発されたとお聞きしました。そのスマート家電の連携技術について少し詳しく教えてください。

三木さん:この技術はわかりやすく言うと「家電同士があたかも話しながら動く」というサービスです。たとえば、比喩になりますが、朝お母さんが起きてやかんやフライパンをIHクッキングヒーターに乗せるとします。そうするとIHが「僕がついたよ」と知らせます。そうすると換気扇が「わかった、じゃあ換気扇回すね」と換気扇が動きます。テレビは「換気扇が回ったから少し音量をあげるね」と自動的に音が大きくなり、そろそろ子供を起こす時間になると自動的に子供部屋の窓が開いて音楽が流れたりします。つまり、家電同士があたかも話し合っているように、朝の準備を自律的に行うというものです。

この技術を使うことによってどんな未来が待っているのでしょうか。

三木さん:そうですね、これからは家電と一緒に家をつくっていくという感じでしょうか。住まい手がすべてを調整しなくても家電が快適な住環境をサポートしてくれる、つまり家電が一緒に働く仲間になるというイメージです。開発の目途はたっていて2020年以降には実用化を目指しています。

この家電連携の技術を開発するにあたってこだわったポイントはどこでしょうか。

三木さん:家電はいつかは壊れるものですが、もしテレビが壊れてしまっても、今まで連携してきたコミュニティは残ります。そして新たに買い換えたテレビも仲間を探してまたコミュニティに参加することができます。このように家電の廃棄や買い増しに対応し、家電としてきちんと動くことを担保しながらもシステムとして動くということにはこだわりました。もちろん、人間の要望を優先して、使う人によってカスタマイズできますよ。また、他社の家電でも「ECHONET(エコネット)」という標準規格があれば基本的な操作はできます。

電気をつくって貯めたり、暑さ寒さを上手にコントロールしたりと働き者の家

ENEDIAはさまざまな環境の配慮がありますが、中でも太陽光発電で電気をつくり、電気自動車のバッテリーに電気を貯めて、家の中でも自動車にも使えるシステム(V2Hシステム)はとても魅力的です。これだと地震などの大きな災害で停電したとしても安心です。

三木さん:確かに自分の家で電気を作り、それを大きな車の蓄電池に貯めておける、これは今まではなかった画期的なことですね。すべてが大きな電池で動く家だということです。その中でもEV(電気自動車)と太陽光発電、そして電力会社からの電気を自動的にシームレスに制御できることは弊社ならではの技術です。太陽が降り注ぐ時は電気自動車の大きな蓄電池に電気を充電し、夕方帰ってきてから使う家電はその電気を使うといったエネルギーの自給生活ができるので、災害時も生活の質を落とさずに生活できるのではと思います。

三菱のV2Hシステムのエコノミーモードとグリーンモードを説明する図 三菱のV2Hシステムのエコノミーモードとグリーンモードを説明する図
三菱のV2Hシステムは太陽光でつくった電気を積極的に売電する「エコノミーモード」となるべく自家消費する「グリーンモード」の2つの自動運転モードを選べる
電気自動車が充電している写真
太陽光発電でつくった電気を電気自動車に貯めて車を蓄電池として使用し、夜はその電気を家の中で使うという電力の自給生活も可能に

ENEDIAは家電だけでなく、給湯や室温など温熱環境もHEMSでコントロールできる部分がとても魅力的だと思いました。家で使うエネルギーは電気だけでなく、熱需要も大きいですから。

三木さん:ありがとうございます。給湯は高効率の給湯器「エコキュート」を使いますが、これは「空気の熱をお湯に変える」というシステムです。そもそも電気を使ってヒートポンプを動かして屋外の空気から熱を集めて、その熱でお湯を沸かしますが、その電気も太陽光で発電した電気を使えます。

部屋の温熱環境もHEMSでコントロールできるのですよね。夏の暑い日に外から帰ってくると部屋がムッとしているので、まず窓を開けますが、そういうこともできるのでしょうか。

三木さん:はい。そういう場合はまず換気システムを動かして部屋の換気をしてからエアコンをつけるというのが自動的にできます。冬の場合は、暖かい空気が部屋の上部にたまりますから、それを寒い洗面所にアローファン(送風ファン)で動かすなど、「暖まった空気を使う、または逃がす」ことも部屋の環境に応じてできます。

それは本当にありがたいです。節電にもつながりますし、寒い冬のヒートショックも予防しますね。

夏期の排熱運転の説明図 夏期の排熱運転の説明図
リビングの暖気や冷気を必要な場所におすそ分けして快適&節電の図 リビングの暖気や冷気を必要な場所におすそ分けして快適&節電の図
リビングの暖気や冷気を必要な場所におすそ分けして快適&節電

未来の家は子供たちや高齢の両親を見守り、明日の天気を予測してお湯を沸かす

ほんとうにたくさんの環境技術がつまった御社のスマートハウスですが、今後さらに進んでいく技術はありますか?

三木さん:はい、現在2つの機能を開発中ですが、そのひとつが「見守り」機能です。これまでも電気の使用状況はわかりましたが、これからは、こんなに室温が下がっているよ、とか、上がっているよ、ということを通知してくれます。また電気の使用状況が変わると通知もしてくれるので、たとえば子供が帰ってきたことなどもわかります。

スマートフォンでの操作画面のイメージ スマートフォンでの操作画面のイメージ
外出先のスマートフォンに電気の使用状況の変化を通知してくれる機能もプラスされる
端末の写真
将来は離れて住む両親の家の家電や換気システムの遠隔操作も可能に

電気の使用状況によって何が起きているかわかるので、HEMSがあれば離れて住んでいる高齢の両親の状況なども見守ることができますし、その場にいなくても室温が上がりすぎたら遠隔でエアコンを操作することもできるようになります。

なるほど、電気の使用状況を通知してもらうことで見守りにもつながるのですね。もうひとつは何ですか?

三木さん:2つめは「お天気リンク」というもので、まさにCO2削減を担う機能です。これは、ネットワークに天気予報を組み入れて、明日どれくらい太陽光発電するかを予想してAIで最も省エネになるようにHEMSにつながる機器を動かす仕組みです。

たとえば、明日お天気で順調な発電が見込めるとしたら、今夜、深夜電力でエコキュートを使ってお湯を沸かさなくていいということがわかります。深夜電力は単価は安いですが、化石燃料を使った電気を使っていますので、それを昼間の太陽光発電で作った余剰電力でお湯を沸かせば、CO2削減になります。光熱費もお得になりますよ。

この「お天気リンク」は最も電気を使う時間帯を避けて電力を使うようにする「ピークシフト」にも有効ですか?

三木さん:役に立つと思います。電力需要を予想して、いつどれくらい使ったらいいのかを考えて蓄電したり、電気を使ったりできます。

すごいですね。ピークシフトがしっかりできれば、電力需要の平準化にもつながりますね。

それぞれの家同士や地域で電気を融通することもできるの?

三木さんは仮想発電所と言われるVPP(バーチャルパワープラント)における太陽光発電とEV(電気自動車)をつなぐシステムなどの開発にも関わっているとお聞きしました。VPPとはどんなもので、どんなことができるのでしょうか。

三木さん:電力を作り、貯めて、使うことができるスマートハウスが増えていくと、そういう家が何軒かあるコミュニティでは電力を融通して、電気が余っている家から不足している家に供給したりというように、トータルで制御できるようになります。VPPとは少し難しいですが、マンション1棟、あるいは街全体というように、何軒かの住宅や商業施設などのまとまりを、あたかも1つの発電所のようにまとめて機能させるというものです。

低炭素な暮らしが当たり前になるように

未来の家は、地域でもつながって統合的なエネルギーの使い方ができるようになるのですね。これらの三木さんが開発にかかわるシステムやサービスが今後どのように使われていくといいと思いますか?

三木さん:電気をつくる、貯める、使うというシステムや省エネにつながる家電の連携技術など、これらのことが当たり前になるというのがひとつのゴールだと思います。最初は「家電がちょっと気の利いたことをやってくれる」というところから始まることでいいと思います。それが積み重なると全体が良くなっていく、そして気がつくと大きな省エネにつながり、エネルギーをたくさん使わなくても快適な暮らしが実現し、災害時も安心、そういった未来を実現していきたいと思います。

三木智子の写真
「技術で未来を変えていきたい」と話す三木智子さん

2人の息子さんを育てつつ研究開発職を続けている三木智子さん。物腰は柔らかですが、開発している技術は最先端。家電の連携技術から再生可能エネルギーの需給予測、そしてVPPまでとCO2削減に大きく役立つ技術が目白押しです。三木さんのお話によると、未来の家では自動的に快適に省エネで暮らせるように家電たちが相談して動いてくれるらしいです。また、高齢者や子供の見守りに使えるなど技術の進化が安心や安全につながることにも希望を感じました。何より化石燃料を使わずに暮らせて、エネルギーを自給できる家は環境にとっても、防災面でもありがたい存在になっていきそうです。